その24
のんびり不定期連載です。
夕食も終わり、旅のお供である公爵令嬢時代から使っているベッドを出して転がります。
「さて、休む時はゆっくり休まないと美容に悪いですからね。睡眠時間は少なくても平気ですが、余り肌荒れとかしていると、帰った時にエミリアに小言を言われてしまいます」
強固にかけた魔法障壁は白っぽい壁となり、中を見通すことは出来ない為、そのまま眠りについた。
翌朝、迷宮内の為、朝日を見ることは出来ないけれど、時計を見るとちょうど夜明け頃だった。
「やはり身に染みた習慣は当てになりますね、寝るのが早かったというのもあるのでしょうが… さて、コカトリスが待っています、たくさん収穫しましょう」
洗顔や着替えなどの朝の準備を済ませ、魔法障壁を解いて先を進みだした。
それから猛然と攻略していき、お昼時には20階層までやって来ていた。魔法探知を駆使して最短距離を突き進んだためだ。
「やっと20階層ですか… この調子では30階層に着くのは夕方になりそうですね。コカトリスを乱獲するのは明日までお預けになりそうです」
とはいえ、わずか2日で30階層に到達できるのは、この迷宮を知り尽くしている上級冒険者くらいしかいないだろう。
魔法障壁を展開し、いそいそと昼食の支度を始める。準備をすると言っても、パンとスープと野菜サラダなんですけどね。
「さて、一休みしたら一気に行きましょうか。現状の流れを考えると、30階層以降でコカトリスが出るという事は、奥に進めばコカトリスの上位種がいるかもしれませんね」
そうなのだ、出現する魔物はフロアごとに決まっているようで、進めば進むほど、出現していた魔物の上位種が現れていた。ならば… コカトリスのフロアでも同様の事があるのではないか、上位種というくらいなので、きっと美味しいのでしょう。期待が高まりますね、卵もあればいいのですが、さすがに期待はしないでおきましょう。
その後ももりもりと進み、30階層に到着したのは午後4時を過ぎたくらいだった。探知魔法を使って、ここまでなるべく戦闘を避けてきていたので、ここからが本番という所でしょう。
「野営をするにはさすがにまだ早いですよね、様子見がてら少し狩りましょうか」
探知魔法で反応のある方に向かって行き、いつでもビームライフルを放てるように魔力を高めておきます。近接?しませんよ。これは鍛錬ではなく狩りなのです。
最小の労力で最大の結果を出す事に意味があるのです、さぁさぁ行きますよ!
30階層で遭遇したコカトリスは、以前出会った野生のコカトリスとは違い、少々小さいですね。これでは取れるお肉の量が少ないじゃないですか! しかたありません、数をこなすとしましょう。
「とやー!」
高めた魔力を放出し、魔力の光線がコカトリスを貫いていく。迷宮の不思議パワーで倒された魔物は霧のように消えていき、なぜかお肉が残ります。
「うーん、まぁ解体する手間が省けるのは楽でいいのですが、せっかくお金を払ってまで覚えた解体技術が使えないというのもなんだか寂しいですね」
きゅるるる~
「はわっ! そういえば今は何時ですか? ついつい夢中になってしまいましたね」
自分のお腹が空腹を主張してきて、初めて夕食の時間を過ぎている事に気づいたのだった。
「もう8時になってましたか、今日はこの辺で勘弁してあげましょう。隅っこに行って夕食にしましょうか」
30階層の階段近くまで来ていたので、他の冒険者が来ないように離れてキャンプします。全身にクリーンをかけ、いつものように魔法障壁で安全を確保。調理用の魔導具を取り出して準備を始めます。
「せっかくなので、コカトリスのお肉を頂きましょうかね。から揚げを作るには漬け込む時間がないので、普通に塩胡椒で焼き鳥にしましょう!」
買い溜めてある野菜の中からネギに似た野菜を出して切り分けます、コカトリスのお肉も一口サイズでカットし、自作の鉄串にさしていき準備は完了。
「やはり焼くなら炭火ですよね! 焼き上がるまで待ちながらスープを温めましょう」
温めたスープを飲みながら、串をひっくり返しながら焼き上がりを待ちます。良い匂いですよ、さすがは高級食材のコカトリスですね!
迷宮内で焼き鳥… 普通であればありえない食事風景だけど、見てる者は誰もいないのでセーフとしておきましょう。
食事と後片付けを済ませると、愛用のベッドを出して潜り込む。
「明日はもっと奥に進んで上位種を狙いましょうか、帰るのは明後日で良いですね」
今後の予定を考えながら、今日も眠りに着いたのだった。
─ロゼ王国第3王子ボジョレー─
「それでは、面倒だがこのまま北上する事が出来ないので一度ショコラ王国の王都まで戻る」
代官邸でレクタングル辺境伯との会談の後、旅の疲れを癒すという理由で1日休養日を取っていたボジョレー殿下一行は、帰路に就くために王都へと戻る事になった。さすがにこのまま北上するには乗ってきている馬車じゃ無理なのだ。
馬車に乗り込み城塞都市ビターを出て進む事3日、王都へと辿り着き宿を取る。
「一応使徒が立ち寄っているかもしれんから、ギルドなんかを様子だけ見に行ってくれ」
「はっ、承知しました」
配下の内2名が外に出て行き、ギルドまで足を伸ばす。
「アリシアさんですか?4日ほど前に訪れて冒険者登録していきました。迷宮都市ボンボンに向かったと思いますよ」
受付嬢から重要な話を聞く事が出来た。本来であれば、冒険者の個人情報は外部に漏れないようにするのがギルドでは一般的だが、ボジョレーの配下は嘘をついて聞きだしたのだ。
ロゼ王国の王家の紋章を提示し、『貴族の娘が家出をしてしまっていて急ぎ保護しなくてはいけない』と。 それを聞いた受付嬢が、ちょうどアリシアの事を覚えていて、確かに『高位貴族の令嬢』という雰囲気があったので、真に受けて情報を漏らしてしまったのだ。
「これは良い話が聞けたな」
「しかし、西へ馬車で10日というのは遠いよな」
「仕方ないだろう、これが上手くいかなかったら俺達の立場も危うくなるからな」
「急ぎ殿下にお知らせせねばな」
2人が話しながらギルドを出て、宿に向かおうとした所で話しかけられた。
「今の話は本当なのか?」
「え? えええ? いやあの…」
そこにいたのは、第1王女の親衛隊長だった。




