その19
のんびり不定期連載です。
「ぐぅ…」
なにやら変な声をあげながら、またしてもストロー様は失神してしまったようです。とりあえず束縛を解きましょうか、意外と魔力を使いますねこの魔法… 使いどころは考えないといけません。
「気を失ったか、今のうちに縛り上げろ!」
辺境伯様の指示により、控えていた護衛の者達がテキパキとストロー様を縛っていきます。 すいませんね、私が水責めしたばっかりに、兵の方達も一緒になって濡れてしまっています。
「まぁ大体の話は聞いている、いくら伯爵家の嫡男だからと言って許される行為ではない事は確かだ。それに俺の部下に対する行為でもあるから、俺から抗議をしておくから戦争だけは止めてくれ」
「わかりました、ここは辺境伯様の顔を立てて保留としましょう。ただし、タルト伯爵家の出方によっては…」
「もちろんわかっている、陛下にも連絡を取ってすぐに謝罪をさせるよう要請しよう」
「別に謝罪などいらないのですが」
「そういう訳にもいかんのだ、使徒殿も貴族であるならわかるだろう? こういった事は即座に対応しないと模倣犯が湧いて出てくるからな」
「確かにそうですが… 面倒ですね」
おおっと、辺境伯様がまたしても額に手をやって、あちゃー顔になっています。でもそれは私のせいじゃないですよね?
まぁ、なんとなくですが話がまとまったような気がするので、この件はとりあえずこのままでいいでしょう。
的が没収されてしまいましたが、ミルフィ様に魔法を教えるという話になっていましたので、教える事にしましょうか。
やはり子爵家次男の令嬢とはいえ、貴族籍がある方ですから、狼藉者への対応は出来た方が良いですからね。 ただ、殺傷力の高い魔法は止めておきましょう。 物理的に近接戦闘が強い少女というのも良い物ですが、さすがに令嬢がそれをやると周囲は普通に引きますからね。
ちょっとした護身用に身体強化の魔法と、先ほどチラっと考えた空気砲の魔法で十分身を守れるでしょうから、魔力に対する基本鍛錬をしましょうか。 魔法が使えても魔力が足りなければ意味無いですからね。
「それでは、せっかくなので訓練でもしましょうか?」
「はいっ!よろしくお願いいたします!」
魔力を高めるための基本訓練、これはガーナ王国の貴族であれば、各家庭で普通にやっている訓練なのですが、なんというか非常に無駄が多くて効率が悪かったんですよね。せっかくなので、この世界での訓練方法を先に聞いておきましょうか。
「この国ではどのような方法で鍛錬をしているのですか?」
「この国では13歳になると、王都にある学園に入学してそこで授業を受ける事になります。なので私は来年から王都に行かなければいけないのです」
ほえ? という事は今12歳ですか? はぁぁ若いですねぇ。 私が12歳の時と言えば… ああ、レーザービームの特訓をしてたくらいですかね、懐かしいです。
「という事は、現状まだ習っていないので分からない…という事でしょうかね?」
「そうですね」
なるほど、これはどうしましょうかね… 一応辺境伯様に確認を取った方が良いかもしれませんね。ガーナ王国の訓練方法が優れているとは思いませんし、私独自の訓練方法は魔力が多くないと危険ですし…
「では、一応この国での訓練方法を確認しますね。私の国での訓練方法が、この国ではダメだと言われる可能性もありますから」
「わかりました、父上をお呼びしましょうか?」
「そうですね、もしくは辺境伯様を」
そんな訳で、ミルフィ様と共にお屋敷を移動中です。先ほどのタルトなストロー様の案件で、辺境伯様と代官様が仕事をしているとの事で、反省部屋という名の独房に向かっております。
「お父様、少しお話があるのですが」
「おやミルフィ、ここに来てはいけないよ?外に出ようか」
奥の方でうめき声が聞こえています、きっとストロー様がお仕置きされているのでしょう… 確かにそんな汚物をミルフィ様に見せる訳にはいきませんね。
「魔法の基礎訓練ですか…」
「はい、私の世界のやり方と差異があったり、この国では禁止されていたりする事だと危ないかと思いまして」
「確かにそうですね、ちなみに使徒殿が知っている訓練方法とはどのような?」
「まずは自分の中にある魔力をしっかりと確認する事から始まります、確認できるようになったら体内での循環になりますね」
「ふむ、それであれば我が国のやり方と大差ないですね」
「そうですか?それなら教えてあげても?」
「はい、是非お願いします」
代官様の許可が出ました。それにやり方も大差ないとの事で、やはり無駄が多いと思いますがこれでいきましょう。
「それにしても、私の国では早ければ5歳くらいから始める訓練なんですが、この国では遅いんですね」
「魔法は危ないですからね、まずはしっかりと教養を与えてから…という方針なんですよ」
「そうでしたか、それでは失礼しますね」
ミルフィ様のお部屋に移動しようと振り返り、今来た道を戻っていきます。
「それではミルフィ様、少しずるいやり方ですが、お手をどうぞ」
「は、はい!」
ミルフィ様の手を取り、そこからじんわりと魔力を流していきます。
「あ、何か暖かい物を感じます!」
「はい、これが魔力です。普通であれば、自身の魔力を感じる事から始めるのですが、これはとても時間がかかってしまうんです。 遅ければ数年単位で」
「数年…ですか」
「では、今流した魔力を手の平に維持する感じで集中してください。そうしていれば、自分の魔力といつの間にか混ざり合って、自然に自分の魔力を扱えるようになります」
これははっきり言ってずるいやり方なんです、私のように魔力が多い者にしか出来ない事ですし、なにより魔力を感じるという事が、通常であればとても難しいのです。
しかし、一度魔力というものを感じてしまえば後は魔力量をあげて行けばいいのです。 まぁ魔力量をあげる訓練というのが単純作業になってしまうので、飽きずに続けられるかどうかが、優秀と普通の分かれ目なんですがね。
「もう大丈夫です、安定して維持できています」
ほぅ、いくらズルをしたとはいえ覚えるのが早いですね。 それでは次の段階に行きましょう。




