その18
のんびり不定期連載です。
「何を言っているのですか? 伯爵家の嫡男だからといって、令嬢の私室に押し入る理由になどなっていませんよ。 退出してください」
ミルフィ様が毅然と立ち向かっています、これは守ってあげなくてはいけませんね! 鉄扇… やはり欲しいですね。
「とやー!」
スカートの裾を少しめくり、邪魔にならないようにしてからの前蹴りを発動!
「がふっ!」
ミルフィ様に詰め寄っていた体勢のまま、2メートルは軽く飛んで行きました。 ええ、もちろん身体強化はかけています。そうでなければ一般的な体格の男性相手に蹴り飛ばすなんて芸当はできませんからね。
「嫌がる令嬢に詰め寄る男性というのは、なんとも無様なものですね。貴方の行動が、他者の目にどのように映っているかを考えた方が良いですよ?ストロー様」
ビシっと決めてストロー様に向かって言い放ちます… あれ? もしかして蹴り1発で失神してますか? 言いたい事はもっとあるんですがねぇ、これは叩き起こして説教の続きをしないといけませんね。
討伐した魔物を処理する時に使っている革の手袋を収納から出して装備して、ストロー様を持ち上げます。
「この方を外に連れ出します、先行して扉を開けてもらえますか?」
メイドの方にそうお願いし、ストロー様を持ったまま後をついて行きます。 そして私の後ろにはなぜかミルフィ様も歩いています…
「アリシア様、私とそんなに体格が変わらないのに、良くもそんな軽々と男性を持ち運べますね」
「もちろん身体強化の魔法を使っていますよ。ですので、男性の一人や二人持ち歩くくらいなら簡単です」
そうなのです、12~3歳に見えるミルフィ様と私(18)は似たような体型なのです… なぜでしょうね、確かに私自身が小柄だというのは認めますが、このような少女にさえ同等以上の胸部装甲が備えられているのは… なんというか、すっかり敗北者の気分です。
メイドさんの案内の元、中庭と呼ぶにはかなり広い場所に連れてきてもらいました。
広い場所の中心付近にストロー様をポイっと投げ捨て、魔法で水を生成し、ばっしゃーんとかけてやりました。
「うおっ!冷たいぞ!」
目覚めたようです、それではお説教といきましょうか。
「目が覚めましたか? あの程度で失神するとは軟弱にも程がありますよ?」
「なっ? アリシア嬢…」
水をかけられて驚いた顔をしていましたが、私が煽ると即座に顔を真っ赤にします。 耐性が低すぎじゃないですかね
「アリシア嬢、これはタルト伯爵家に対する不敬だぞ? こうなればタダでは済ませないから覚悟するがよい!」
「ええ、もちろん構いませんわ? 貴方こそ、創造神フローラ様の使徒であり、アマンダ様より勅命を受けてこの世界に来ている私に対しての言動、看過出来るものではありません。 貴方個人に罰を…と思っていましたが、タルト伯爵家の名を出すのであれば、伯爵家も罰の対象にしましょうか」
魔法で生成した水に圧力をかけて発射します、原理的にはただの水鉄砲なんですがね。
「ちょっ、やめろ!ゴボ… 口に水を入れるな!」
「止めてくださいお願いします… ではないのですか?」
水にかける圧力を増しながら爆撃を続けます、水鉄砲も圧力次第じゃかなり痛いですからね。すでに高圧洗車機くらいの水流で爆撃中です。
「なにをっ? 今止めれば許してやってもいいんだぞ?」
「わかりました、話し合いは無理だという事ですね? それでは遠慮なく行かせてもらいます」
ストロー様の逃げ道を塞ぐように、周囲4箇所から水鉄砲による絨毯爆撃。 ああとっても痛そうですね、だからといって止めませんけど。
「ミルフィ様、辺境伯様はお屋敷にいるんですか?」
「はい、領都に戻るまでは我が家に滞在していますので」
「それでは、申し訳ありませんが呼んでいただけますか? 私は今、手が離せないので」
「はい!お任せください! 後で私にも魔法を教えてください、私もソレをやってみたいです」
「それはいいですね、ちょうどいい的がここにありますし」
ミルフィ様は近くにいたメイドさんに声をかけ、辺境伯様を呼ぶように言っているのでしょう。しかし、目はストロー様に釘付けのようです。 びしょ濡れになり、水圧で顔を歪ませながらゴボゴボいっているのがおかしいのでしょうか… なにやら良い笑顔ですね。
では、今のうちに新しい魔法を考えましょうか。 私が使える魔法というのは、生活魔法を除けば非常に殺傷力の高すぎる魔法しかないんですよね。
なので傷をつけないように、尚且つ相手を無力化できるような何かを考えましょう。この水鉄砲も屋内では使えませんからね…
さて… どんなものが良いでしょう。 空気を圧縮して撃ち出す空気弾? うーん、それだと怪我しそうですよね… 万が一回避でもされたら施設にも被害が出そうですし、どうしましょうか。
四つん這いで這いまわり、なんとか水から逃れようと蠢いているストロー様を逃がさないように射角を随時変えながら攻撃しつつ考えます。
「あっ!」
今、私の頭の上で電球がピコーンと輝きましたよ! 何も考える必要などなかったのです、普通に拘束する魔法を作ればいいのです!
ストロー様の周囲の空気を圧縮して、ぐいぐいと押し付けるようにして抑え込みます。
「ぐわあっ? 急に体が…締め付けられてる? く、苦しい」
おっとやりすぎたのでしょうか、もう少し手加減をした方が良いですね。イメージとしては、大きな風船で四方からぐいぐいとサンドイッチ状態、そんな感じです。
「これは…一体どうなっておるんだ?」
声が聞こえたので振り返ると、先ほどのメイドさんを先頭に、辺境伯様とガナシュ代官様がいらっしゃいました。
「わざわざご足労いただきありがとうございます。タルト伯爵家からの宣戦布告を頂きましたので、それを受けようと思います。もしもこの件でショコラ王国側がタルト家に味方をするような事になれば、辺境伯様とも敵対関係となってしまうので、先にお知らせしようと思った次第です」
「ちょっと待ってくれ、タルト家の問題に国は手も耳も貸さないから敵対する事は無い、だからまずは落ち着いて話し合おうじゃないか」
「私は落ち着いていますよ? ただ、このストロー様があまりにも醜悪な姿をさらすものですから、お仕置きをしているだけです」
辺境伯様は、額に手をやって「あちゃー」って顔をしています。 あちゃーなのは私の方ですよね?
新しい話を思いつき、ぼちぼちと書き綴っています。ある程度まとまったら活動報告にて報告したいと思います。




