その16
のんびり不定期連載です。
─ロゼ王国、王宮─
王宮内の一室にて、ロゼ王を筆頭に王妃、第2王子、第1王女と、騎士団から数名の騎士がこの場にいた。
「父上、先ほど僕の権限をもって、アレク死刑囚を処刑してまいりました」
第2王子のブルゴーニュが切り出した。
「なんだと? それは協議すると申したではないか。それに死刑囚だというのも違うぞ」
「いえ、使徒殿に無礼を働いた王族をいつまでも存命させるのは、アマンダ様に対しても問題しかないと判断しました」
その話を聞いた第1王女のローズも口を挟んだ。
「ブルゴ、お兄様… いえ、アレクの処刑に対しては私も賛成ですが、貴方の権限とはなんですか? 立太子の儀式も終わっていないというのに」
王族の子供達、その継承権の序列は、1位がアレク王子、2位がローズ王女、3位がブルゴーニュと続いていたのだった。 この国では特に男系でなくては…という事も無く、過去には女王が統治してた時代もあった。
「ローズ姉様、やはりこの国の統治に女王など不要だと思いますよ? 僕が父上の後を継ぎますから、お国の為に嫁入りする相手を探した方が良いでしょう」
「貴方は何を馬鹿な事を言っているのかしら、王家のしきたりというのは、貴方が勝手に変えていいものではないのです」
「カビの生えたような古いしきたりを、時代に沿うように変えてこそ国がより良くなるのです。姉様もその程度の事が解らないようでは女王になっても国は栄えないでしょう」
「何を知ったように喋っているかは知りませんが、父上…現国王の前でそれを言いますか?」
「ええ、言いますとも。今ボジョレーが使徒殿を迎えに行かせていますが、使徒殿を我が妻に迎える事によって、創造神アマンダの加護も頂けることになりましょう」
その言葉にロゼ王は閉口した。第3王子であるボジョレーを己のパシりにしているのもそうだが、まさか使徒アリシアを妻に迎えるなどと考えていたとは思いもしなかったのだろう。
「はぁ、貴方にアリシア様が靡くとでも思ってらして? とてもじゃないけれど、貴方程度の男性のために、元居た世界の全てを捨ててまで妻になろうとするなんて思えませんわ。 自信過剰もその辺にしないとこの国が滅んでしまいます」
「なっ? 僕が口説いて落ちない女性なんていませんよ? 今までもそうでしたし、何よりも次期王の妻になれるなんて、それこそ女性の夢ではないですか!」
「はぁ、話になりませんね。 父上、このまま好きにさせておくと我が国は滅んでしまいますよ?」
「そもそも根本的におかしい話だと思わないか?ブルゴーニュよ。王命を守れぬ者を次期王になど指名する訳無いであろう。馬鹿めが」
ロゼ王が吐き捨てるようにブルゴーニュに言った。
「しかし父上、使徒殿を娶った僕が一番王になる資格があるのではないですか?」
「使徒殿が嫁に来てくれれば…であろう? 儂は一度話し合いをしたが、お前程度の男に御せる方ではないと見ておる」
「くっ、僕に落とせない女性などいないんだ! 後から言い寄ってきたって知らないからな!」
顔色を変えながら言葉を荒げるブルゴーニュに向かって、今まで静かに話を聞いていた王妃が口を開いた。
「ブルゴ、今まで貴方に言い寄ってきていた女性は、貴方個人の事など見ていませんよ? 見ているのは第2王子という肩書と、自由にできる権限、お金の事でしょう。 私も使徒様にお会いしましたが、貴方では無理だと断言できますわ」
「母上まで…」
ブルゴーニュの顔が赤くなっていく、侮辱されたと思って怒っているのだろう…
「ブルゴーニュ、ロゼ王として命じる。 お前から王位継承権を剥奪し、国家反逆罪の首謀者として離塔への幽閉の刑に処す。 お前が手にかけた兄と亡骸と共に悔やむがよい、近衛兵よ!取り押さえろ!」
「なっ、離せ!この無礼者がっ!」
近衛兵に取り押さえられたブルゴーニュはしばらくの間抵抗していたが、魔法を封じ込める魔道具の枷をはめられてようやく大人しくなった。
「ボジョレーも拘束しないといけないな、確かショコラ王国に向かっていたと思うのだが」
「ショコラ王と会談の後、帰国するはずですが」
「先ほどのブルゴーニュの話だと、その時に使徒殿に会いに行ったという事だな。本当に…国が滅んでしまうぞ」
「いえ、その心配は無いと思いますわ。アリシア様がボジョレー程度の提案に乗るとはとても思えません、なので急ぎ使者を出し、ロゼ王家としての意思を伝えればわかってもらえると思います」
「そうだといいのだがな。では、使者を立てるとするか」
こうして第2王子は、第1王子と同じ部屋に幽閉される事となり、国王直下の親衛隊が警備の指揮を取る事になった。 第2王子と深く付き合いのあったボルドーを遠ざけるための配置であり、離塔からの脱走を防ぐための判断だった。
─ショコラ王国ビターの町─
代官様の屋敷を出ると、すっかり暗くなっていたので迷わず飛行魔法を発動。 宿まで一直線です! これだけ暗いと見られませんからね。
「やっと休めますね、正直に言って魔物討伐よりも貴族の相手をする方が数倍疲れますね。 貴族社会が魑魅魍魎、魔物の巣窟とはよく言った物です」
後は帰るだけなのだから放っておいても良いと思いますが、何をしたいのでしょうかね。これが解決する前であったならば、使徒である私に協力したとアピールして、地位の向上もあるかもしれませんが、終わってから動き出したって遅いと思うんですけど。
まずは明日、ミルフィ様との交友を楽しむとしましょうか。それが終われば諸国漫遊でもしましょうかね、お土産も用意しないといけませんし。
ほんの数分で宿に着いたので、そのまま部屋に上がって行く。 クリーンの魔法で全身を浄化し、部屋着に着替えてベッドにすべり込む。
「しかしベッドというものも大変素晴らしいですよね、なんでしょうこの安心感」
魔法障壁も忘れずに展開し、そのままストンと眠りに落ちた。 その頃、雪と氷に囲まれて、氷に齧りつきながら寝そべっているハクも眠りに落ちようとしていたのだった




