その14
のんびり不定期連載です。
誤字報告いつもありがとうございます、気を付けているはずなのに…
─レクタングル辺境伯領、城塞都市ビター─
さぁ、ビターの町に戻ってきました。魔物の処分をお願いしていた騎士団はもう出立したんですかね?まぁその辺の確認も含めて聞いてみましょうか。
早速門の復旧作業している騎士に話しかけてみる
「お疲れ様です、辺境伯様にお会いしたいのですが、取り次ぎをお願いしても?」
「あ、貴女は…! 少しお待ちください!」
若い騎士様が… 猛ダッシュで走り去ってしまいました。 待てと言うので少し待ちましょうか…
収納から木箱を出して座り込み、復旧作業を見物しながら果物を食べていると、大きな紋章が刻まれた馬車がやってきました。 察するにアレはレクタングル家の家紋なのでしょうね。
「待たせたようだな、おや?ドラゴンの姿が見えないが…」
馬車から現れたのは辺境伯様ご自身でした。
「あの子は氷を司るドラゴンです、この地の気温では落ち着かないでしょうし、溢れ出る冷気で環境破壊を起こすかもしれないので、寒い土地に移動しています」
「そうであったか、それでは改めて… 我が国を救ってくださり感謝の念に堪えません。つきましては我が国の王宮にお招きし、歓待の宴を開催したいのですが、この招待を受けて下さいますか?」
「今まで通りの口調で結構ですよ、そしてそのご招待についてはお断りさせていただきます。歓待に使うはずの費用を被害に遭った地の復旧にお使い下さるよう王様に進言していただけますか?」
「むぅ…、しかし」
「私もお役目を無事に終えられてホっとしています、アマンダ様からのお迎えが来るまではゆっくりと静養したいと思っています。まずはお風呂のある宿を紹介して欲しいのですが…」
辺境伯様は何とも言えない面持ちをしていますが、復旧していないのにお金を使うと国が破綻しますよ? 私にとってはそんな事よりもお風呂の方が大事なのです!
そんなこんなで、ショコラ王国の王都行きを華麗にスルーしてしまいました。 その代わりなんでしょうが、城塞都市ビターを治めている代官様の屋敷で夕食会をするという事で、これはさすがに受けました。
この夕食会がどれほど時間がかかるかわからないので、その前にお風呂に入ってしまいましょうね。
こういったイベント事の後、なぜかお風呂に入るとフローラ様が顕現なされていましたね… さすがに異世界ではそういう事は無いでしょうが、アマンダ様は…回復中なので大丈夫ですよね。
髪と体を洗い、湯船にどっぷりと身を沈める
「ほぇ~、やはりお風呂は至福ですね」
思わず声が出てしまいました。
この異世界にやってきてまだ10日も経っていませんが、与えられたお役目は終わって後は帰るだけ…
「こう言っては何ですが… なんだかちょろかったですね、今回は」
前回のドラゴン討伐では、大陸の端から端まで行って、なんだかんだと数ヶ月も旅をして回っていましたからね。
しかしまぁ、ちょろかったと言っても突然の異世界召喚で驚いてしまったのは事実であり、初めての異世界交流が、あの【俺様王子】でしたからね… そういえば幽閉されたんでしたっけ。
「王族というものは、どこの世界でも大差ないものなんですね… 民があっての国だというのに」
目を閉じると眠ってしまいそうです、そろそろ出ましょうかね。
体を拭き、自慢の髪をブラシで整えていきます。 うん、艶々で良い仕上がりになっていますね。
今晩は代官様の屋敷で夕食の予定なので、少しはお洒落をした方が良いのでしょうね、辺境伯様もいるでしょうし。
そうはいっても、公爵家に住んでいたころのドレスやなんかは持ってきていませんし、髪飾りやなんかもありません…
「あれ? もしかしてお洒落できない…?」
考えてみればそうですよね、孤児院の院長を務めるのにドレスは着ませんし、むしろ動きやすい服装になっています。 一応組織の責任者として上質な服もありますが、ドレスとは程遠い物ですからねぇ…困りましたね。
しかしまぁいいでしょう、この際思い切って開き直りましょう! 普通に考えれば異世界に召喚されて来たのにドレスなんてある訳ないですもんね!
そんな訳で、対外的な仕事をするときに来ていた服を着る事にしました。 膝下までのスカートなんですが、もうこれでいいでしょう。
準備を済ませ、お迎えに来た馬車に乗って代官様の屋敷へと向かいます。
「ようこそ使徒様、歓迎いたします。 ドレスの方はこちらで用意してありますのでお召替えの方をお願いします」
「こちらこそご招待ありがとうございます」
渋くて素敵な老執事さんに迎えられましたが、なんと!ドレスを用意してあるとの事! 屋敷のメイドさんについて行って着替える事になりました。さすがは代官とはいえ辺境伯領の城塞都市を任されるだけありますね。
複数のメイドさんの手にかかり、あれよあれよと飾られていく私。こういうのも久しぶりですね…
選んだドレスは水色で、肩口が大きく開いた物。スカートの裾はふんわりと足首まで隠すほどの長さで良い感じです。
こういったドレスの基準もどうやら私がいた世界と似ているようで、違和感なく着る事が出来ますね。
「とても良くお似合いです、アリシア様」
「ありがとうございます、良い生地を使っていますね、着心地がとても良いですよ」
「この町の仕立て屋が総出で手直しいたしました、目視だけで採寸できなかったので少し不安でしたが、不具合が無いようで安心いたしました」
目視だけでこれだけピッタリ合わせたのですか! それはすごいですね。
着替えが終わり会場へと足を運びます。この町の代官様は、ショコラ王国の子爵家の次男の方だそうで、有能な方なんだそうだ。
会場に到着すると、急に決まった食事会だというのにかなりの人が集まっていました。立食パーティーの形式にしたみたいで、もうこれは食事会ではなく普通にパーティですね…
「ようこそお越しくださいました使徒様。私がこの町の代官を務めておりますガナッシュ子爵家次男、ロシェと申します」
「これはご丁寧に、アリシア・フォン・フェブリーと申します。本日はご招待いただきありがとうございます」
ご飯を食べるだけだと思っていましたが… これはやられましたね。挨拶の対応で食べる暇が無いかもしれません… お腹空いてるのに。




