その13
のんびり不定期連載です。
─特異点のある森の東部─
『ふん、これほどまでに手加減してると、すっきりするどころか却って疲れてしまうの』
日が暮れる前にほとんどの魔物を火山帯に追い込み、手加減されたブレスで数万に及ぶであろう魔物の氷漬けが出来上がっていた。
『しかし、火山の側にいると不愉快な気分になるわい。火口にブレスを吐いて火山活動を止めてやろうか…』
そうは思いつつも、「大地への被害は最小に」という言い付けがあるため我慢する。
『後は、これらを処理するという人間どもに伝えておけばいいだろう。しかし、こうして飛び回ったのも久々であるな』
気温の高い火山帯で不愉快な気分になりつつも、久々に飛び回った事による爽快感の方が上回ったようだった。
その後、地熱で溶けてしまわないようにもう一度ブレスを浴びせ、飛び去るのだった。
─真っ白な世界─
『むむ? 早くも異界との接点を見つけ出し、これは封印か? いや障壁だな、すでに外部と切り離しておるのか… これは聞いていた以上に優秀のようだな。これ程の者であるならば、我が世界に置いておきたくなるが…』
『ダメに決まっておろう、我の愛し子であるぞ。それに本人が戻りたいと言うに決まっておる』
『それは後で本人に確認してみるとするかの、しかしこれほど早く解決してくれるとは思わなんだ、我の回復が追い付いていない… 異界との繋がりを断つのに魔力を使えば、フローラの世界に送り出す魔力が足りないのぅ』
『それは仕方あるまいよ、まずは神託を出して異界の遮断を優先せよ。それからある程度魔力が回復してから、アリシアとハクにも協力してもらって送還すれば良い』
『それしかあるまいな、それでは… なけなしの魔力を振り絞るとするかの』
─辺境伯領ビター南方の森─
『アリシアよ、よくやってくれたの。想像以上の働きぶりに感服しておるぞ、それでは異界との繋がりを断つから障壁を解いてくれ』
「アマンダ様!お待ちしていました、それでは障壁を解きます」
キャンプを覚悟していましたが、見ていたかのようにアマンダ様が現れました。そういえばフローラ様も… 絶妙なタイミングで現れていましたね。
お役目が終わるという安堵と共に、魔法障壁を解除しました。
『よし、ほいっと!』
「ほいっと!?そんな簡単にできたのですか?」
『うむ、これで完了だ。アリシアよ、其方の働きに感謝する。しかし残念ながら、其方らを送還するための魔力が不足しておってな、回復するまで待っていて欲しいのだ』
「それはもちろん構いません、お役目を果たせたとあれば良かったです」
『それでの… どうじゃ? 其方も我が世界で暮らしてみてはどうかの?』
「え… それは難しいですね、あちらの世界には残してきた者も待っていてくれてる者もいますので、せっかくの申し出ですが…」
『そうか、それは残念じゃの。まぁ仕方あるまい、それでは我も回復させるため休むとする。なにせ其方とドラゴンを転移させるには莫大な魔力を使うからの』
「わかりました、その日をお待ちしています」
『うむ、その時が来たらまた伝えよう』
アマンダ様のお姿が消えていきました、これでやっと一息つけますね。貴族用の宿をとって数日ダラけてしまいましょう、それくらいいいですよね!
【神託を与える、我は創造神アマンダである。大陸南部に現れていた異界との繋がりは、異世界より召喚した創造神フローラの使徒、アリシアによって打ち消す事に成功した。異界の魔物に苦しめられていた者達よ、安堵するがよい。使徒アリシアと従魔であるホワイトドラゴンを元の世界に送り届けるまでしばし時間がかかるが、この者らに対する無礼は許さんからそのつもりでいるがよい】
神託が出されましたね、では私もこの場を離れましょう。とりあえずビターの町に行って辺境伯様に報告すればいいでしょう。
飛行魔法を発動し、森から顔を出した所で飛んできたハクと合流し、とりあえず移動する事にしました。
「ところでハク、この地は随分と温暖な気候ですけど、氷を司る貴方は平気なんですか?」
『む? 別に我は特に困る事は無いが… せいぜいこの辺りの気温が下がる程度だろうな』
「それはそれでまずそうな気がしますね…」
『先ほどの神託は我にも聞こえていた、送還まで時間がかかるそうだから、その間我は北方に移動していてもいいぞ?』
「そうですね、貴方にとってもその方が過ごしやすいでしょう。ではそれでお願いできますか?」
『承知したぞ我が主よ、我の力が必要になればいつでも呼ぶがいい』
「ええ、そうさせてもらいます」
ハクはそう言うと大きく羽ばたき、すごい速さで北の空へと消えていきました。
「実は熱いのが相当嫌だった…とかだったりしたんでしょうかね」
そう思ってしまう程の勢いで羽ばたいていきました。
─ロゼ王国、離塔─
「おお、これ程早くに解決するとは… さすがは使徒と呼ばれるだけはあったのだな」
護衛を引き連れて離塔に訪れていたロゼ王国第2王子のブルゴーニュは、聞こえてきた神託に感嘆の声を漏らした。
「これが神託ですか… 伝記で記されていた通りなのですね」
「そのようだな、我らの世代で神託が聞けるとは運が良かったのかもな」
護衛部隊の隊長を務めているボルドーと共に、塔の最上階を目指して歩き続ける。
最上階、王族や高位貴族の罪人を幽閉できるように数多くの魔導具が仕込まれた部屋に辿り着く。
「やあアレク、いいザマだね?」
「お前はブルゴ? 兄を呼び捨てにするとは何様のつもりだ?」
「おやおや、お前こそ次期王に向かって何という無礼な態度だい? お前はすでに廃嫡され、王族ですらないんだよ。今の不敬は高くつくぞ?」
「ぐぬぬ… それで一体何の用だ?」
貴族用に誂えているとはいえ、所詮は牢。強がっているものの、相当精神的に疲れているのだろう。傲慢を絵にかいたようなアレクが弟に言い負かされている姿はこれまで一度も無かった事だ。
「今の神託を聞いただろう? お前が無礼を働いた使徒殿が異界との繋がりを閉じられたそうだ。そして元の世界に帰るまで時間が空くらしいので、その間を我が城で寛いでもらうために準備をしに来たんだよ」
「はぁ? 寛がせる準備でどうしてここに来る必要があるんだ?」
「わからないかい? この世界を救った英雄殿に対して無礼を働いた王族が生きている… そんな事があってはいけないだろう?」
ブルゴーニュはそう言うと、右手を挙げて見せた
「お前…まさか!」
スコッ
後ろに控えていたボルドーが放った弓が、鉄格子の隙間を縫ってアレクの額に命中したのだった。




