46話
そろそろクライマックス。
ガーナ王国の王城は異様な雰囲気に包まれていた。突如城門の内部から現れた青年が見張りをしていた騎士に斬りかかり、そのまま城門を開放したのだ。
「冒険者パーティのブレイバーだ!城門は開けたから中に突撃だー!」
青年が剣を掲げて叫ぶと、城門の外側で中の様子を窺っていた民衆が雄叫びを上げて一斉に侵攻を始めた。民衆が持っているのは棍棒であったり掃除用具であったりと様々だが、盾すら持つ事の出来ない貴族に対しては十分に有効打を与える事が出来た。
「一気に進んで国庫を抑えるんだ!」
民衆の誰かがそう叫ぶ、果たして本当に民衆なのかは不明だが、随分と戦い慣れている様子であった。
騒ぎを聞きつけた周辺の者もどんどん参加し、2時間もしないうちに完全に制圧完了となった。王城内の個室を使用していた上級貴族も当然のように撲殺され、死体が並べられていたのだった
「おうリーダー、遅かったな」
「この辺の制圧は終わってるぜ」
「王女は俺が持って帰る」
リーダーが王家の居室付近に辿り着いた時には全ての戦闘が終わっていた。
「王はどうした?」
「俺が斬った、しょうがないだろ?目の前にいたんだから斬らなきゃいけないだろ」
「王家の死体は晒し首にするから引っ張り出さないとだな」
「俺達の完全勝利だな!後は金目の物を頂いて帰ればいいだろ」
こうして王城に避難していた王侯貴族は全滅した。
翌日、ガーナ王国の滅亡が冒険者ギルドによって宣言され、そのままギルドが旧王都となった町の治安維持をすることとなった。
そしてガーナ王国と隣接していたポテチ王国、クランキー王国、トリュフ王国は、ガーナ王国の国土を切り取るために軍を動かしたのだった。
ガーナ王国北部
「ふぅ、この町もひどいですね」
アリシアが立ち寄った町の中央部では、処刑されたとみられる貴族の遺体がそのまま放置されていて異臭を放っていた。
「片付けないのでしょうか、病気が蔓延したらどうするつもりなんでしょうかね」
と言ったところでどうしようもありませんね、この町に住んでる人がそれでいいと思ってやっているんでしょうから。しかし、ここまでされるくらいこの国の貴族は恨まれていたんですね。
やるせない気持ちを抱えたまま町を出る事にした。
「復興というわけではありませんが、王都の近くまで行って孤児院建設の候補地を探すとしましょうか。やはり人の多い地域の方が孤児も多いでしょうから」
気持ちを切り替えて王都に向かった。
ガーナ王国の国土はそれほど広くはないので、2時間もあれば中央部にある王都に辿り着く。門をくぐって中に入るとお祭りのような状況でした
「ガーナ王国滅亡バンザーイ!」
「これでもう税に苦しむ事も無くなるぜ!」
人々が声をあげているその内容を聞いてかなり驚きました。ガーナ王国が滅亡…ですか?
「ガーナ王国が滅亡って本当なんですか?」
酒を片手に騒いでいたおじ様に聞いてみる事にした
「おうお嬢ちゃん、今この町に来たのかい?それじゃあ知らないのも仕方がねえな。昨日の夜に冒険者を筆頭に王城を攻め立てたんだよ、そしてついに!王家を含む貴族連中を全滅させる事が出来たんだ!」
「それではこの町の統治はどなたが?」
「冒険者ギルドがやるって話だぜ、詳しくは知らんがな」
そう言いつつおじ様はお酒のお代わりをしに店に入っていった。
「ギルドが…ですか」
正直言ってギルドにも黒い部分はあるのでしょう、火事場泥棒的にこの町の権利を手に入れたという事なのでしょうか。
まぁそれよりも、この町にあった孤児院の様子を見に行ってみましょうか。
王都の孤児院は、公爵令嬢時代に何度も訪れた事のある院で、顔馴染みと言っても過言ではないくらいの付き合いはありました。
一応王都という事で、厳しいながらもなんとか経営を続ける事が出来ていましたが、今回の騒ぎのせいで影響が出ているのか直接聞いてみましょう。
国としての機能が崩壊してしまったというのなら、今後寄付金は無くなってしまうでしょうから、私が孤児院を建てたら丸ごと引き取ってしまいましょうか。その辺りの相談もしたいですね…
「あ、アリシア様ですか?国外追放になったと聞いていましたから…ご無事で何よりです」
「お久しぶりです、なんでも国は滅んでしまったらしいので、私が入ってきても問題ないでしょう」
「それもそうですね、今日は何かありましたか?」
いつもお話ししていた職員であるエミリアさんを見つけましたので情報収集しましょう!
「寄付を少々と、私自身も孤児院を作ろうと思っていまして、そのための知識を仕入れに来ました。院を建てるのはこれからなのですが、もし完成したら、職員さんも含めて移籍しませんか?もちろん私が給金を支払いますので」
「え?それは本当ですか?もしそれが可能であるのでしたら子供達も喜びますが… 場所はどの辺りになるのですか?」
「王都から少し離れた所に勝手に作ってしまおうかと考えてます。この孤児院の敷地だと、のびのびと育成は難しいですからね。自給まではいかなくとも畑も作りたいですし」
「なるほど…確かに町の外ならば、文句を言いそうな人は滅んでしまいましたからね」
「魔法を使って一気に建ててしまおうと思っているのですが、職員さんの経験上こうあってほしいとかありますか?利便性の話も聞きたいですね」
「なるほど、新規で、それに広さも自由に決められるのでしたら色々とありますね。色々考えましょうか」
「まずは寄付を先にしておきましょう、オークの肉がありますので解体して食べてください」
「ありがとうございます!それで王都の外に院を建てるというのなら、この孤児院はどうしますか?」
「正直に言えば、昨日のお城への襲撃とか貴族家を根こそぎ処刑とか、一部の人なのでしょうがやり過ぎに思えるんですよね。そんな人達との関わりを減らすという意味でここは放置して使わない方向でと思っています」
「そうですよね、私もこの国の貴族がやってきたことを知っているけど、全てを処刑するというのはやりすぎだと思います。公爵令嬢だったアリシア様みたいな方もいたはずだと思うと悲しいです」
「まぁまずは食事の準備をしてお腹を満たしましょう。そして良い未来について考えていきましょう」




