45話
そろそろクライマックス。
ポテチ王国と聖王グロス教国の国境に近い町の宿で、久しぶりにゆっくりと休んでいた。聖王グロス教国に通じる街道沿いだったので、そこそこの高級宿にチェックインする事が出来たのだ。
「お風呂が無いのは残念でしたが、ベッドの質はいいですね。お風呂については一応毎日入っていたので、今日の ところはクリーンの魔法で我慢しましょうか」
魔法障壁を濃く張れば中を覗くことは出来なくなるとはいえ、さすがに人がたくさんいる場所でカポーンとお風呂に入ることは出来ませんでした。人並みの羞恥心は持ち合わせているのですから、そんなの無理ですよね?
ベッドにもクリーンの魔法をかけて横になる。
「さて、これからどうしましょうか。急に目的が無くなってしまうのも考えものですね、うーん」
考えがまとまらないけれど、夕食の時間になったので食堂に下りていきました。何やら混んでいますね、この町では多分最高級に値する宿だというのに。せっかくなので噂話に耳を傾けてみますか…
後方にあるテーブル席
「おー調子はどうだい?儲かっているか?」
「やあ久しぶりだね、そこそこ儲かっているよ。ただ危険はあるけどね」
「危ない事やってるのか?命あっての物種だ、無理はすんじゃねーぞ?」
「大丈夫大丈夫、一応商人は大事にされているからね。最近のガーナ王国人は金回りが良いからね」
「そういえば、ガーナ王国全域で大暴動が起きてるんだったな。加護無しの貴族邸に押し入って金品奪ったって話のだろ?」
「そうそう、貴族家の人間は軒並み処刑されて金だけは持っているから、食料や衣料品がよく売れているよ」
「そうかー、俺もガーナ王国に行ってみっかな!」
ほえ?全域で大暴動?貴族家は軒並み処刑?そんな事になっているんですかガーナ王国は。
これは…もしかして私のせい?…いえいえ、いい加減で大雑把で悪質でふざけた領地運営していた貴族家と、それらを制御できなかった王家が悪いですよね?ええそうですとも!
しかしそんな事が起きているのであれば、最も被害を受けるのは特に力の無い子供達でしょうか。ちょっとガーナ王国の様子を見に行った方が良さそうですね。
冒険者ギルドを早々に退会したせいなのか、情報収集を怠っていた結果ですね。とりあえずガーナ王国に向かってみて…自分の目で見ない事には判断がつかないでしょう。
夕食を終えて部屋に戻り、明日は朝からガーナ王国の現状を確認をしに行きましょう。
ガーナ王国地下通路
「よし!鍵が外れたぜ!」
「おーうお疲れさん」
「というか遅いよ、何時だと思ってんだ?」
「まさか今から攻め込むのか?」
時間は午後9時を指していた、この地下通路に入ってからすでに10時間以上が経過しており、若くて経験の浅い冒険者パーティの集中力は既に切れていた。通路の途中に階段があり、試しに登ってみると地上に出ていた。ここはどうやら城のすぐ外側のようで、暗くてよく見えないが門のほうまで行けそうだった。
「まずここから二手に分かれよう、一組は城門の方に向かって門の解放。もう一組はこのまま城内に侵入して貴族狩りだぁ!」
「じゃあ俺は中に侵入で」
「俺も中だな」
「よし、じゃあ3人で中に入ってガンガン行こうぜ!」
「え…俺は?」
「リーダーは1人で門だな!任せたぞ!」
「さすがリーダー、頼りになるぜ!」
「プッ」
リーダーと呼ばれた青年が俯きながら肩を震わせている…
「待てぇお前ら!どうしてそうなるんだ!」
「いやだって、中に入る人員は多くないとダメだろ?」
「リーダーなら大丈夫だって、俺達が中で暴れて陽動するから」
「そうそう、その隙をついて門を開放すれば、門を見張ってる奴らがなだれ込んでくるって」
若さという衝動なのか、作戦と呼べるものではないのに誰も危機感を持たずに一国の城にたった3人で特攻をかけるという決断をしてしまった。
これも英雄願望がなせる業なのか、失敗して返り討ちに遭うなど微塵も考えない突撃脳に侵されたかのように動き出した。
「くそっ、俺の分も残しておけよ!俺の獲物は王だからな!」
「そんなの誰でもいいだろ」
「じゃあ姫様は俺がもらいますね」
「残ってるといーねー」
なんだかんだいじられながらも1人で門に向かって走り出すリーダー君、門を守るのは騎士だが、加護を失ったせいで重い鎧は着れず、剣を振る事すら覚束ない状態だと聞いているのですぐに終わるものと信じていた。
「よし、俺達も行こうぜ」
「そうだな、分かってると思うけど早い者勝ちだからな?」
「恨みっこなしという事で」
3人はもう一度地下通路に戻り、城内に向かって歩き出した。
「こういうのって大体王家の秘密通路みたいなアレだろ?」
「多分そうだな、緊急避難用なんだろう。本当にあるなんて驚いたけどな」
「って事は、これを進めば王がいるって事か?それじゃあ大将首はもらったも同然だね」
「加護無しの貴族に負ける事なんかないだろうけど、大怪我でもして冒険者続けられなくなるのはもったいないからな、手加減すんなよ?」
「「おう!」」
城内は静まり返っていた。避難している高位貴族が幅を利かせて食料の一部を独占していたから食べる物が少なく、なるべく動かないようにして消耗を避け、これ以上空腹にならないようにしていたからだ。
当然今まで培ってきたコミュニティなど崩壊したも同然で、他家との食料の奪い合いがいつ始まってもおかしくない程緊迫した空気に包まれているのだった。
ガタッ ゴロゴロ
不意に響き渡った何か重いものを引きずるような音。
王家の居室に近い広間には個室がもらえなかった下級貴族が大勢いたのだが、突如響いてきた音に全員がその方向を向いた。
「おうおう、貴族がいっぱいいるな」
「それじゃあやるか!」
「戦闘開始!」
虐殺が始まった瞬間だった。
よたよたと逃げ惑う貴族達を追い立てて斬りつける冒険者、逃げ切る事も出来ずに無残にも斬られていく貴族の流した血で、むせるようなにおいが充満していく
そんな中、冒険者の1人が戦前を離れて奥に向かう通路に入っていった。
通路の突き当りにあった扉を力いっぱい蹴り上げて無理矢理開いて中に入る。
「おっ?お前ら王家だな?その汚い首はもらっていくぜ!」
「なんだ貴様!無礼であろう!」
王は突然の侵入者に驚きながらも威厳を見せつける
「もうお前ら王家には人としての権利なんかねえんだよ!黙って死ね!」
王に向かって剣が振り下ろされた




