37話
のんびり不定期連載です
前面に魔法障壁を展開して大穴の中を走り出します。光源となるライトの魔法を前方に放り投げて視界も確保、20メートルも走ると行き止まりになっていて、そこには寝そべっている緑色の巨竜が居ました。
グリーンドラゴンで間違いないですね!突然の敵襲に相当驚いているのか、首だけがこちらを向いて、口があんぐりと開いています。今がまさに好機!
「レーザービームっ!」
私の指先から放たれた凝縮に凝縮を重ねた魔力の光線がグリーンドラゴンの首元を横薙ぎにします、すると一瞬の間をおいて首がドスンと落ちました。
「明らかな不意打ちでしたがこれも使命です、恨むのならば存分にどうぞ」
首を落とされたグリーンドラゴンはそのまま息絶えたようでピクリとも動きません、討伐完了ですね。
「ふぅ、どこにも被害を出さないで勝てたのは良かったですね。これで3体目…残るは1体です」
やはり強制的に使徒になったとはいえ、やる事が残っていると落ち着きませんからね。全部が片付いてから自由行動だと思っていますので、できるならば残りの討伐も早めに終わらせたいものです。
【神託を行う。我が使徒によりグリーンドラゴンの討伐を確認した。今後この地を荒らされる事は無くなるであろう】
いつもの神託が来ましたね、ほとんどタイムラグが無いのですから…やはり見ておられたのでしょう。
いつの間にか外はすでに真っ暗ですね、グリーンドラゴンを収納したらささっと野営の支度をしましょう。とはいっても魔法障壁を張ってベッドを出すだけなんですがね…
その前にお風呂ですね、せっかく浴槽があるのですから毎日使わないといけませんよね。そうしましょう!
グリーンドラゴンを収納し、流れ出た血液をクリーンの魔法で綺麗にしてから大穴の中に大きめの魔法障壁を展開し浴槽を出した。厚めに張った障壁は真っ白な壁となって中が見えなくなるので、何も気にせずに服を脱いで浴槽内に座り、お湯を流し込みながら一息ついたのだった
ローレル王国西部、街道脇の野営地
カムリ王直下、アリシア捜索隊の7人がアリシアの足取りを追ってクリーム王国との国境付近まで来ていた。アリシアと違って街道を進んでいたため山脈の南側を大きく迂回しており、現在アリシアがいるグリーンドラゴンの巣穴からは相当の距離があった。
「聞いたか?もうグリーンドラゴンを討伐したのか」
「グリーンドラゴンが目撃されている場所は、国境を越えてから北上してかなり距離があったはず、これでは追いつかないのでは?」
「そうだな、仕方がないから先回りしよう。残るはホワイトドラゴンのみだから間違いなくポテチ王国へ向かうはずだ」
「それならば一度国に戻れますよね、陛下に予算を付けてもらわないと金策に困ります」
若い男が路銀の入った袋を見ながらしょんぼりしている。それもそのはず、本来であれば魔導馬車で往復10日前後の遠征だったはずなので、迎えに行ったアリシアが不便にならない程度の予算しか持ってきておらず、すでに最初に持ち込んだお金は底をつき、途中で魔物を狩るなどで金策しながらの行軍になったため、寄り道したり、途中で遊んでいたりしたアリシアに追いつく事がなかったのだ。
「ホワイトドラゴンが目撃されていた場所は聖王グロス教国の北側、徒歩だと間違いなく20日以上かかるはずだ。明日夜明けとともに、一度母国に戻る事にしよう」
「「「了解」」」
隊長の言葉に希望が見えたのか、隊員たちの声は明るかった。仕事とはいえすでに半月以上野営を繰り返しているのだから、それもしょうがないかもしれないが…
ガーナ王国西部
「アリシアめ、グリーンドラゴンを討伐しおったか。しかしこれならばわざわざ戻ってきたのは正解だったかもしれんな」
「はい、恐らくそのまま北上してポテチ王国を横断しながらホワイトドラゴンの下へ向かうと思われます」
「うむ、すでに国境は越えているから、あと2日もあれば我が領に着くので補給が出来るだろう。その後我らも北上してポテチ王国を進んでいくとしようか」
「それが良うございます」
フェブリー公爵と護衛の一行は強行軍を繰り返して疲労困憊であったが、神託を聞いて無駄に回り道をしなくて済んだと一息ついていた。王都邸に行くか自領の領都へ行くか悩んだが、資金が潤沢に置いてあるのは自領の城なので、そちらへ向かう事に決め、今夜は休むのだった。
(それにしてもアリシア様、長年に亘ってこの大陸に住む者達を苦しめていたドラゴンを、こうも容易く討伐なされるとは…私の見る目が無かったという事か。今更取り入る事はできるのだろうか)
老執事は、婚約破棄されて家を出ていった時のアリシアの姿を思い浮かべていた。
ガーナ王国フェブリー公爵領、領都
公爵家の城はすでに民達によって制圧されていて、食糧庫も調度品も金庫の中身すらも持ち去られて分配され、暴動が起きてからの僅かの間にすっかり荒廃の兆しを見せていた。城に仕えていた貴族令嬢の侍女や執事などは、民衆によって城から、挙句の果てには領都から着の身着のままで叩きだされていた。
そして公爵夫人と公爵家の次女である令嬢は捕縛されて地下牢に繋がれていた。
「アリシアが3体目の竜種を討伐しましたか、創造神フローラ様の使徒アリシアの母親である私に対してこの仕打ち、いい加減にしないと貴方達にも神罰が落ちますわよ!」
公爵夫人が見張りをしている者に対して声をあらげる。
しかし公爵領に於いて、アリシアがどれだけ冷遇されていたか領民は知っているため、特に行動を起こすことなく見張りを続ける。
「お母様、お姉様が戻っていらしたらこの者達を罰しましょう。さすがに肉親がこのような仕打ちを受けていたと知れば、お姉様もお怒りになるでしょう」
「そうね、それまで耐え抜きましょう」
そんな会話を聞いていた見張りの男が1人、歩み寄ってきた
「はっきり言うけどそれは無いと思うぞ。お前らは加護を失っているだろ、もしも使徒様がお前らを助ける気があるのならば加護が無くなったりしないだろう」
「全くその通りだ、自分らの行いを忘れて使徒様に縋ろうなんて、考えが甘すぎるんだよ。お前らは近いうちに公開処刑されるんだ、公爵が戻ってきたらな」
別な男も会話に加わって公爵家の母娘に向かって言い放つと、2人は青い顔をしながら静かになった




