35話
のんびり不定期連載です
広大な国土を持つローレル王国、その中心地にある王都を出て10日が過ぎていた。クリーム王国との国境となっている山脈を眼前に見ながら佇む…
「この山を越えなければいけないのですね、街道は大きく迂回しているので通ると時間がかかってしまいますし、そんな所にグリーンドラゴンもいないでしょう。徒歩で越えるしかないですね」
グリーンドラゴンの目撃情報は大体山深い所で、活動期になると餌を狩るために巨大なウィンドカッターを放つと言われてます。そしてそのたびに木々が切り倒され、甚大な環境破壊をしているとの事です。
あ、この情報はフローラ様から聞きました。
巨大なウィンドカッターを使うという事は、当然遠距離攻撃がメインになるという事で、うっかり探知魔法を逆探知されてガチ戦闘になってしまうと環境破壊が加速してしまいます。なので作戦としては地道な索敵をして、気づかれないうちにレーザービームでスナイプ!というのが最良だと思います。
山間部に入ってしまえば気の抜けない時間が数日と続く事になりますが、そこは気合いと根性で乗り切りましょう。食料の備蓄も万全だし、魔法障壁は外側に魔力が漏れないので気づかれる心配もありません。つまり、夜は今まで通りゆっくり寝れるという事ですので疲れがたまって不覚を取る確率も低いと思ってます。
「さて、それでは進軍しますか」
魔力障壁を薄くして自身に纏い、探知魔法はやはり逆探知が怖いので自粛モード。小物な魔物であれば不意打ちを受けても魔法障壁で防げますし、ぶつかってびっくりしているところにライト○ーバーで斬ってしまいましょう。逃げていくのでしたら追いませんが、歯向かってくる魔物と盗賊山賊野盗の類に慈悲はありません。まぁさすがに人を斬った事はありませんし、躊躇なく斬れるかどうかは不明ですが、ボコるくらいなら罪悪感も何も感じません。この世界の犯罪者の方がやる事がひどすぎるので救う価値を見いだせる可能性が低いのです。
それにしても…この広い山間部の捜索、大変ですね。これはちょっと新しい魔法を開発した方がいいかもしれません。例えば空を飛んだりとか逆探知されない広範囲の探知魔法とか… 空、飛んでみたいな
仮に空を飛ぶとして、魔力をどのように操作すれば飛べるのでしょうか。足から火を噴いて飛ぶ…これはダメですよね、やるとすれば背中から羽を生やしてみるとか…いいかもしれません。
やはりサイボーグ系のような飛行機タイプの羽ではなく、天使の羽みたいな見た目も美しい感じが良いですね。羽がこう…もふもふしていて暖かそうな、よし、この線で試してみましょう。
人体の重量バランスを考えれば腰に羽があるといいんでしょうが、やはり理想は肩甲骨の辺りから出てた方が美しく見えますよね、どうせ魔法でやるのだからバランスとかどうでもいいでしょう!多分ですが。
そうなると、衣装もそれに合わせていきたいですよね。今着ているのは茶系の長袖長ズボン、機能的には優秀なのですがファッション的にはどうか、という感じなのです。やはり白い羽には白い服でしょうか、私の肌も白いし髪の毛もプラチナブロンドなので取り合わせが悪いでしょうか。
まぁ服については気分の問題なので後回しにしてもいいでしょう、まずは実際に飛べるか…ですよね
重力に逆らうわけですし、飛べたとしても機動性の事は無視できません。仕方ありませんね、これは実戦で覚えるのが一番手っ取り早いでしょう。
まず最初に、制御を失って落下したとして、墜落死を防ぐために重力に干渉する魔法を考えましょうか。それがないと怖くて飛べませんよね
イメージとしてはやはり無重力空間で浮遊している感じでしょうか、難しい理論は知らないので持ち前の魔力に物を言わせてゴリ押ししましょう。
日が暮れました。
魔力で羽を出して物質化、自在に羽ばたく事で浮力と揚力を得る事は確認できました。緊急回避等の機動性については明日訓練しましょうか、そして空中で制御不能になった時用の緊急回避手段なのですが、宇宙船アニメなどでよく見るシステムのスラスター、これを魔法で再現させる事に成功しました。
さすが半日以上もそれだけについて考えただけあって、そこそこの結果が出せました。結局今日は全然前に進まなかったけど、明日から頑張る!という事で、夕食にして体を休める事にしましょう。
ローレル王国西部、上空
「ふむ、創造神の使徒がグリーンドラゴンの縄張りに入ったか。あの恐ろしいまでに高い魔力、それにあの障壁…あれほどの障壁であれば我には破れんな」
ローレル王国の上空で、今まさに山間部に入ろうとしているアリシアを遠くから見つめる者がいた。己から発する魔力を極限まで抑え込んで気配を消し、アリシアからの探知から逃れるようにして観察していたのだ。
「グリーンドラゴンの奴は魔力だけは高いが頭は良くないからな、これだとレッドドラゴンやブルードラゴンと同様に屠られる事だろう。そうなれば…次は我の番という事か」
雲に紛れるようにしているため地上からは認識されていないが、そこにいるのは真っ白な体躯の巨大な竜、ホワイトドラゴンであった。
大陸の歴史の上では、ポテチ王国の北側にある永久凍土を縄張りとし、特に他の生物に対して虐殺などの記載はない。しかし、年々少しずつ永久凍土の範囲が南に移動して増えていくために、創造神フローラから討伐の対象とされたのだ。
「我とて死にたくはないからな、何か生き抜くための方法を思案するしかないようだな」
アリシアの姿が木々に阻まれて見えなくなったところで方向転換し、永久凍土にある住処へと飛び去っていった。
この大きな大陸に住んでいた4頭の竜種、同じ種でありながらも属性の違いのせいか、長年敵対していた経緯があり、すでに討伐された2頭とこれから討伐されるであろうグリーンドラゴンに対して思う所はなく、むしろ清々すると言った感じだが、次は自分だという事で偵察に訪れていたのだった。
そしてアリシアの持つ極大な魔力と運用の仕方、魔法障壁によるガードの硬さを目の当たりにして戦意を喪失。戦っても勝ち目が薄いというならば違う道を探る、ホワイトドラゴンにはそう考えられるだけの優秀な知能を有していたのだ。いかに凍土が自分のテリトリーだといえ、あの障壁の前には何の意味もなさないと理解し、策を練るために巣穴に籠るのだった




