34話
のんびり不定期連載です
楽しい夕食会も終わり、赤い咆哮の3人も帰っていったので後片付けを始めます。しかしこれ、廃油の処理はどうしましょうかね…とりあえず保留にして収納しておきましょう。そのうち折れた剣とか買い取って、その鉄を使って一斗缶みたいな物を魔法で作ってみましょうか、色々と用途もありそうですしそうしましょう。
孤児院でお世話になってちょうど1ヵ月経った。先ほど浴槽を依頼していた職人さんを訪ねたところ、最後の仕上げが残っていて今晩中に仕上がるとの事、引き渡しは明日の朝以降だと言われて戻ってきました。
孤児院の子供達の顔色もすっかり良くなり、健康そのものと言った風貌になるまで回復していた。もちろん職員さん達も同様だった。
赤い咆哮の3人は、頻繁に孤児院を訪れては持ち込んだ食材で調理を依頼してくるようになっていて、剣士に憧れる男の子達をカレンさんが鍛え、魔法の素養がありそうな子をサーシャさんが、そして身軽そうな子をエリカさんが指導してあげていた。現役の冒険者による英才教育ともいえる修行をキラキラした目で頑張る子供達、今後は弱いけどお肉が取れる魔物を狩って、自分達の生活費に充てるんだと息巻いていた。
私はと言うと、そんな子供達が少しでも楽に狩りが出来るようにと、10歳未満の子でも引けるような小さな荷車を作っていました。これならわざわざ奪っていくような代物ではないし、それでも力の無い子供達でもちょっとした魔物を載せて運べるようになるので便利だろうと思う。
実際に子供達を町の外に連れ出し、体長40センチくらいの角が生えたうさぎを自分達で狩らせてみて、その角を使った槍の作り方を教えて武器の補充にさせたりと、過ぎてみれば忙しい1ヶ月だったのではないかと思います。
ちなみに角うさぎの狩り方は簡単で、木製でちょっと厚めの盾があれば、勝手に突撃してきて盾に刺さって動けなくなるのです。しかし木製の盾に刺さるくらいの突進力はあるので油断は禁物です、不意打ちを避けれるように、常に4~5人でパーティを組ませて盾要員を3人、残りは刺さったうさぎにとどめを刺す、といった感じで狩りの安定性を図っています。
角うさぎは町の外であればどこにでも居るせいか、売っても大した金額にはなりませんが、数多く獲れるので持ち帰って孤児院の食卓に並ぶことも増えましたし、毛皮も職員さん達の手によって毛布になったり服になったりと、この1ヶ月で劇的に生活が変わったと大変感謝されました。
「院長先生、私は明日にこの町を出ます。1ヶ月の間お世話になりました」
「お世話だなんてとんでもない、むしろこちらがお世話になりっぱなしで感謝の言葉もないくらいよ。子供達もみんな元気になったし、生きていくための術を学べた事は今後の糧となるでしょう」
「私も将来どこかの町で孤児院を経営しようと思っていますので、この孤児院で得られた経験は糧になると思っています。なのでお互い様なんですよ」
そうなのです、私にとっても得る物の多い滞在だったので言う事なしです。こういうのはどうかと思いついたものをすぐに試してみて、職員さんや子供達に使い心地や意見などがすぐに手に入るので、改良もやりやすかったし、やはり長く現場で働いている職員さんの意見はとても貴重でしたね。
エルフのサーシャさんとの魔法についての語り合いもなかなか興味深かったですよ、伊達に長く生きてはいませんでしたね。
そして今日の夕食は、子供達が自分達で狩った獲物と採集したハーブなどを使って子供達が主導して作ってくれる事になりました。
私は厨房に入る事を禁止され、お客様のように出来上がるのを待っています。隣にはなぜか赤い咆哮の3人もいます。
「明日この町を出ちゃうのか、行き先はどこなんだい?」
「クリーム王国ですね、ちょっとやる事がありまして」
「クリーム王国か、道中の護衛はいらないかい?食事付きなら安く請けてやるよ?」
「有難い申し出ですけど、私は1人の方が都合がいいですし、自分勝手にあちこちと動き回りますので団体行動に向いていないんです。なのでお断わりしますね」
「そうか、そりゃ残念だ。まぁ縁があればまた会う事もあるだろうし、黙って見送る事にするかね」
カレンさんと話をしているうちに夕食が完成したようです。次々と料理がテーブルに並べられていきます、つい1か月前まで食べる物に困窮していた孤児院の食卓とはとても思えない豪勢ぶりですね。それでは頂きましょうか。
「大地の恵みに感謝を!」
翌日、夜が明ける少し前に旅立ちの準備を済ませてベッドを収納し、魔法障壁を解除した。1ヶ月も寝泊まりしていたからなのか、孤児院の庭にもなんだか愛着がわいたような気がします。
裏口から孤児院の中に入るとすでに職員さん達が起きており、宿泊費として納めたオーク肉を使ったスープを作っていた。
「おはようございます」
「おはようございますアリシアさん、早いですね、もう出るんですか?」
「そうですね、子供達との別れは昨日の夜に済ませてありますし、会うとまた泣かれそうで…」
昨晩は、この孤児院滞在最後の夜だという事で子供達に囲まれ、盛大に泣かれてしまったんです。それだけ仲良くなれたという事なのでしょうが、正直私も泣きそうになるのを必死で堪えていました。会ってしまえば今度こそ泣いてしまうかもしれません、ここは大人の威厳を保つために早朝に出ようと思ったわけです
「本当にアリシアさんにはお世話になりました。お肉を直接狩ってきたり収入も増えましたので、今後はちゃんとご飯を食べさせてやる事が出来ます、ありがとうございました」
「いえいえ、子供達がそれぞれやる気があったからこそうまくいったんです。ただ、狩りの調子が良いからと言って、うっかり森の方に近づかないように指導をお願いしますね」
「はい、安定の良さをしっかりと教えて、わざわざ危険を冒さないよう指導していきます」
にっこりと微笑む職員さんに、子供ならではの暴走をしっかりと止めてくれるのを祈りながら孤児院を後にした。
うっすらと明るくなってきた空を見ながら浴槽の依頼をしていた店舗に向かう。急いでも開いてないだろうからゆっくりと。
今回の長期滞在のおかげで、孤児院を開設したいという思いはより強くなったような気がします。フローラ様からの依頼をパパっと終わらせて、孤児院の開設に勤しむとしましょうか。
グリーンドラゴンとホワイトドラゴン、待っていてくださいよ!瞬殺してあげます。




