23話
のんびり不定期連載です
宿屋の店主に伺ったところ、孤児院は2軒知っているとの事。聖王グロス教国の教会と民間の孤児院、そういえば教会は全国展開しているんでしたね、後で顔だけ出しておきましょうか、優先すべきは民間の孤児院の方ですね。
フードを深くかぶり、王都内を歩きだします。教会は一等地と思われる場所にありますが、民間の孤児院は随分と外れの方にあるらしく、少し遠いですね。
宿を出てから1時間ほど歩き、民間の孤児院に到着しました。やはりボロいです…老朽化が進んでいて廃屋寸前といった感じですね、しかしこればっかりは予算の都合もあるのでしょうから、部外者がとやかく言えない問題です。さて、あまり時間もないのでさくっと偽善を行いましょうか、オーク肉はまだまだたくさんありますよ!
資金援助はされているようでしたが収容されている子供が40人と多いため、慢性的な食料不足だったそうで、お肉の供給は喜んでもらえました。多少の野菜と塩漬けするための塩も寄付し、時間もないので宿に戻る事にしました。
迎えの約束は昼一番、具体的に言うと午後1時ですね。お話し中にお腹が鳴ってしまうのは威厳に関わる事なので、宿で昼食をいただき迎えを待ちます。セリカ王国側が何を話し合いたいのか詳細は不明ですが、内容によっては王様の加護については戻してもらえるようフローラ様に進言しましょう。あくまでも内容によりますが。
ガーナ王国もそうでしたが、この世界の王侯貴族は我慢と遠慮という言葉を知らない人が多すぎなんですよね。何せ欲しい物は欲しいと頑なに主張し、事と次第によっては武力の行使も辞さないという者まで普通にいます。フローラ様の御威光が届いていないのは何とも嘆かわしい…なんて言ってみたりしますが、実は私も創造神フローラ様については書物で書いてある事しか知りませんでした。書いてあった内容も、150年前の天変地異に対してお力を発揮し、当時の人々に神託を与えて地上に住む生命の繁栄を願った…というものでした。
もしかしたらその時にも愛し子と呼ばれる者がいたのかもしれませんね。
まぁともかく、この国の権力者が自身の欲の為だけに動くような人でないことを祈りますか。
食後のお茶を楽しんでいると、馬の嘶きと車輪の音が聞こえてきました。どうやら迎えが来たようですね、お茶の残りを飲み、出入り口の方に目をやると立派な装いの男性とドレスを着た女性の2人が入ってきて、私のほうに歩いてきました
「お待たせしました、表に馬車を用意していますのでお乗りいただけると」
「貴方は昨日謁見の間にいた方ですね?高位な役職に就いている方だとお見受けしますが」
「はい、私はこの国で宰相を務めさせていただいてるクローズ侯爵と申します。こちらは私の娘でございます」
「宰相様でしたか、私はアリシアと申します、家名は捨てたため名乗ることは出来ませんのでご了承ください」
「家名を捨てた…ですか?噂だとガーナ王国の公爵令嬢だと聞いていましたが」
「はい、国では色々とありまして、国とも家とも縁が切れています。なので私の言動についてはガーナ王国とは一切関係が無い事を先に伝えさせていただきます」
「承知しました。それでは城内へご案内します」
まさかの宰相様が自ら使者となって迎えに来るとは思いませんでしたね、馬車の中で私の話し相手を務めてくれた娘さん、侯爵令嬢のカノン様も可愛らしい方でした。しかし上位貴族である侯爵家の令嬢らしく、話の端々に平民を見下すような態度が見え隠れしていましたね。
馬車は整備された大通りを1時間かけて王城まで進み、謁見の間ではなく違う部屋に案内されました。謁見の間ではどうしても王様は上座の高い所に座るものですからね、その辺を加味したのだと思います。昨日も玉座から降りて私と話をしてましたからきっとそうなのでしょう。
「よくぞ来てくださった、まずは礼を言わせてもらう。この部屋は我が国の緊急会議などで使用する部屋で、機密性に優れておる、情報の漏洩などの心配は無用だ。周囲にいる者達も信頼のおける者達ばかりなので安心してほしい」
「わかりました。それでは改めまして、フローラ様により使徒に任命されましたアリシアと申します。本日、招待された理由をお伺いしたいのですが」
「まずは昨日の事を謝罪させてほしい、アリシア殿がシアと名乗って冒険者として動いているのは把握してたのだが、迎えに出す時に 冒険者のシア殿を…と伝えたところ、騎士が勘違いしたようだ。重ね重ね申し訳なかった」
「勘違いだった…という事なんですね?」
「そうなのだ、はっきりと使徒殿をと言わなかったのが問題の引き金になったようだ」
「という事は、普通に冒険者であったならば、あのような横柄な態度は問題は無かった…という事ですよね?」
「……」
「王命だから今すぐ来い、来ないなら力尽くでも連れていく、断るならばこの国に対する宣戦布告と同意だ…と、そこまで言われたのですが、これはこの国の騎士の間では普通の事だという事ですね?」
「い、いやちょっと待ってくれ。我が国の騎士団はそのような事を普通だとは思っていない、思っていないが今後同じような事が起きぬようしっかりと指導させる事を約束しよう」
「私がこの国の指導方針について口を出す資格はありませんが、あのような横柄な行動の一つ一つが積み重なり、本来敵対していない者ですらどんどん敵に回してしまい、最終的には国に対して牙をむく…というのは過去の歴史で多々あったと思います、内乱は良い事など何一つありません、なので王侯貴族が主導して民を導き、内乱など起こらないよう豊かな国に育て上げるのが貴族の務めだと思っています。国王陛下におかれましても、この国の頂点として良識のある行動を期待します」
「うむっ、その件については言い訳のしようもない。王家として国を導く事を約束しよう」
「その言葉、確かに聞きました。その約束を実行するためには権威だけでなく力も必要となるでしょう、なので私からフローラ様に祈りを捧げましょう。今の約束を実行している間は…」
『フローラ様聞こえますか?』
『うむ、聞いているし見ているぞ』
『それでしたら話が早いですね、この王様の加護を戻してあげてもらえますか?今後のために必要な事かと思います』
『うむ、仕方がないの、その願い確かに聞き届けた』
私が跪き、両手を胸の前で組んだ祈りのポーズを取りながらフローラ様にお願いをしていると、緊急会議室の中にいた貴族達がなにやらざわめいている。王様の失脚を狙ってた者でもいたのでしょうかね
【神託を行う。我が使徒の祈りによりセリカ王国の国王に加護を戻す、今後は道を誤ることなく大地の平穏に努めるがいい】
「おおおお、加護を取り戻した…? アリシア殿!なんと礼を言えばいいやら」
「礼には及びません、フローラ様も言われた通り、今後よりいっそう大地が平穏となるよう努めてくださいませ」
「承知した、この事は子々孫々受け継ぎ後世まで言い伝える事も約束しよう」




