20話
カムリ王国王城
「聞いたか?とうとう我が国の悩みの種であったブルードラゴンが討伐されたぞ!これは使徒とやらに褒賞を出さねばいけないな。よし! 捜索隊を出し、使徒アリシアという者を我が城へ連れてまいれ、なんだったら15番目の妻にでもしてやればそれが褒美にもなるだろう」
「なりません陛下、使徒アリシアに不敬を働いたガーナ王国がどうなったかご存じでしょう?我が国を滅ぼすおつもりですか?」
「なんだ、15番目の妻にするといったから焼きもちを焼いておるのか?それに不敬などではない、我が妻になるなど、これ以上ない褒美であろう。ふふん、使徒とやらの顔を見るのが楽しみだわい」
「……」
王の部屋を出た王妃は自室へ戻り、自分付きの侍女以外を部屋から出した
「陛下が使徒アリシアに何かやらかしそうな気がするわ。そうなってしまう前に視察の名目で一時避難をしようと思ってるわ。実家であるセリカ王国方面に視察に出るよう書類を出しておいてちょうだい、私も出る準備をしておくわ」
「承知しました王妃様。捜索隊の詳細も調べてきましょう」
「そうね、よろしく頼むわ」
侍女が出ていったのを確認すると、王妃は盛大に溜息を吐いたのだった
セリカ王国のどこか…
「やっと街道に出てこれましたね、ドラゴン素材の売却もしたいですし、大きな町を目指しましょうか」
ここが地図上のどこかは分かっていませんが、とりあえず西へ向かっていればグリーンドラゴンの棲むクリーム王国に着きます、多分。 方角さえ間違っていなければ、街道を歩いている以上いつかは町に辿り着くはずです!多分。
それにこの道、ちゃんと均されているし主要街道の一つのはず、この先にはきっと大きな町があるのでしょう…希望ですけど。
とりあえずこの地でやらなければいけない事は済んだので、西へ向かって歩き出す。戦闘もレーザービーム一撃で終わっているので魔力の消費も大した事は無く、疲労も特に無し。強いて言えば今すぐにでもお風呂に入りたいくらいなので、お風呂付の宿屋に行く!を モチベに変えて進みだした
という思いも空しく、村程度の集落はあったが町と言える規模のものは一つもないまま3日が経過した。途中にあった村に立ち寄って話を聞いたところ、この街道は一応王都に向かっているとの事。ただし、途中に分岐点があり、それを南に行くと王都で、西に行くと隣国であるローレル王国に向かうらしい。
王都に行くにはその分岐を南に徒歩2日だそうで、西に行くと大きな町に着くまでの距離感はわからないと言っていた。その言葉を聞き、遠回りになると解っていたが分岐を南へ…聞いた話の通りだとそろそろ王都が見えてくるはず、今はそれをモチベに変えて突き進んでいる。
「お風呂はまだですかー、そろそろ見えてきてもいいと思いますよ?」
日が傾き、もう1時間もすれば日没というくらいになって、ようやく都市を守る防壁が見えてきました。
距離的に急がないと門が閉まってしまいますね、全身に身体強化を強めに施し、走り始めます。
「とはいっても、こんな時間に町に入って高級宿の部屋は取れるのでしょうか…」
しかし王都と言うならば高級宿も何軒もあるはず、まずは町に入ってから考えればいいですね。自身の正面に魔法障壁を展開して加速した。 魔法障壁の意味ですか?速度を上げると虫がぶつかってくるんですよね…
「ふぅ~到着です、なんとか日没前に門をくぐることができました。さて、宿を探しますか」
門から続く大きな通りを歩いていると、早速ギルドの建物を発見しました。やはり町の事を尋ねるにはギルドで聞くのが手っ取り早いですよね、そうしましょう
ギルド内は大変混みあっていましたが、ほとんどが素材の買い取り窓口に並んでいたので、特に困る事も無く宿の場所を聞くことができました。王都だというのに周囲には魔物が多いそうで、それらを排除する冒険者が多数居ついてるみたいですね。それでも強い魔物はいないそうで、ここ数十年魔物による王都への襲撃は特に無いそうで安全だと強調していましたね。長居するわけではないのでどうでもいいですけど。
「鳳凰の宿木にようこそいらっしゃいました、1泊金貨1枚となりますがよろしいですか?」
「それでは2泊お願いします」
1泊金貨1枚ならば許容範囲ですね、この町に2泊してゆっくり疲れを取りましょう。やはり野宿が続くと精神的に疲れてしまうものなので、すこしくらいのんびりしていてもいいでしょう。先に夕食をいただき、待望のお風呂ですよ!
しかし、その待望のお風呂タイムが邪魔されるなどとは、今の時点では露ほどにも思っていませんでした。
冒険者ギルド王都支部
「ギルマス、たった今シアと名乗る女性の冒険者が宿の場所を聞きに訪れました」
「ついにこの町に来たか、ブルードラゴンを討伐したならばここを通ると思っていたんだ。王城に使者を出してくれ、勧めた宿の名前も添えてやってくれ」
「わかりました」
ギルドから放たれた使者は急ぎ足で王城へと向かっていった
セリカ王国王城内
「よし!その連絡を待っていた!今すぐ向かって王城へお連れしろ!」
「はっ 承知しました」
国王の令が出されたので、宰相は即座に王の執務室を出た。向かうは騎士団の詰め所である
「今すぐ『鳳凰の宿木』という宿に向かい、シアと名乗る冒険者を謁見の間に連れてくるのだ。これは王命である、急ぐように」
「承知した」
駐在していた隊長職の者が部下の方に目を向ける
「聞いていたな?2人向かってくれ」
そんな訳で2人の若い騎士が急いで馬車を用意し、宿に向かった。
鳳凰の宿木
「食事もなかなか美味しかったですね、これなら明日以降の食事も楽しみになります。ふふふ…さぁさぁお風呂ですよ!湯船が私を待っています!」
荷物はすべて魔法で収納しているので、羽織っていたローブとダミーの鞄も収納し、浴室に向かって歩き出しました…
「この宿にシアという冒険者が泊まっているはずだ、今すぐここに呼んでくれ」
「騎士様?急に困ります」
「お前の言い分などどうでもいい、早く呼ぶんだ」
なんですか?私の名前が出てきましたけど、それに騎士?この国に知り合いなどいないはずなんですがね
とりあえず自分の名が呼ばれていたので顔を出してみました
「お前がシアという冒険者か?」
「そうですが、何の用でしょうか?」
「そうか、では今から王城へ向かう、大人しくついてこい」
「はい?何を言ってるんですか、お断りします」
「そこにある馬車に乗れ…なに?お前に断る権限などない!黙って従え!」
「いや無理です。お断わりします」
「貴様ぁ、これは王命であるぞ!従わぬというのならば、それは我が国への宣戦布告と取るがそれでも構わないというのか?」
「宣戦布告ですか?いいでしょう、今の私は機嫌が悪いですので覚悟してくださいね?」
鳳凰の宿木の店主が青い顔をして脂汗を垂れ流していたのだった




