18話
のんびり不定期連載です
教会の扉から離れて歩き出しましたが、町を出るためにはこの人垣をかき分けないといけないのでしょうか、ちょっと大変そうなんですが…言えばよけてもらえるのでしょうか。 …と、考えながら近づいていくと
「おおおおおおお!」
急に歓声が沸き、人々が次々に跪いてしまいました。何事ですか?そんな事より道を空けてほしいのですけど!
「使徒様が神罰をお止めになった理由はそれでしたか、ありがたやありがたや」
「ええ?ちょっとお婆ちゃん、こんな石畳で膝をつくと怪我しますよ?立ち上がってください」
最前列にいたお婆ちゃんがいきなり拝みだしました。一体何をやっているんですか!確かに教会の中に聞こえるようにと大きめの声で話していましたが、ここにいた人達にも聞こえてしまってたんでしょうか、それにしても大仰にも程があります。
確かに私は貴族、公爵家令嬢として育ちましたので、平民に跪かれる事にはある程度慣れてはいますが、さすがに他国でこれをやられてしまうと反応に困ってしまいます。とりあえず現状を打破するために行動しましょうか
「皆さん立ち上がってください、このように道を塞いでしまっては通行人に迷惑がかかってしまいます。それに私はこれから向かう所がありますので通してほしいのですが」
するとハっとした顔になり、慌てて道を空けようと人々が動き出しました。聞く耳を持っていてくれたようで安心です、なのでそんな人々に少しだけサービス致しましょう。と言っても大したことをするつもりではありませんが。
「おおおおおお!なんと美しい姿なんだ…」
ええ、ただフードをめくって顔を出しただけなんですけどね!毎日お手入れを欠かしていない髪の毛が太陽の光を受けてキラキラしています。自慢のサラサラヘアーをご覧あれ! 振り返ってみれば教会の扉が開かれていて、昨日話したシスターさんの姿も見えました。人々を導くために教会に所属したのであれば、今後もその信念を貫いて行動してほしいものです。
そして今がチャンスだとばかりにその場を去る事にしました。あまり時間をかけてしまうと、王都だけに王族が絡んでくる可能性がありますからね、私は自分の行動理念で動きたいので、権力そのものである貴族や王族に関わっている暇など無いのです!
歩きながら再びフードをかぶり王都を出ます、このまま西に向かえばカムリ王国へと辿り着くでしょう。そして…そこにはブルードラゴンがいるはず。自分の魔法障壁には自信はありますけど、だからといってわざわざ攻撃を受ける気にはなれないので、ひっそりこっそり索敵して一気にレーザービームで倒してしまいましょう。 まだ見ぬブルードラゴンに対峙する覚悟を持って進んで行きましょう
フォース王国王城
「なんと!使徒殿がこの町にいたと申すか!是非とも挨拶をしなければならんな。町へと出向き、ご招待差し上げろ!そして歓迎の準備もすぐに始めろ!」
「ははっ」
フォース王国の西側ではブルードラゴンの縄張りに少し入っているらしく、数年に一度という頻度で被害が出ていたのだ。そして先日のレッドドラゴン討伐の報を聞き、きっと次はブルードラゴンを倒してくれると信じていた。それに代々の王族は信心深く、創造神であるフローラ様を祀る事を是としていた。ただ、昨日の神託により聖王グロス教国が広めていた話が嘘だとわかり、これまで行なった多大な援助が無駄だったのかとショックを受けていたところに使徒様が教会に優しい言葉を残していったとの報せ、当代の王は急に元気を取り戻し、創造神フローラ様の愛し子である使徒様の姿をどうしても見たくなったのである。
「父上、使徒様をご招待するというのは本当なのですか?」
国王の執務室にノックもしないで入ってきたのはこの国の王太子であった。次期王にふさわしいと言われる整った顔つき、爽やかな笑顔を見せられて倒れる令嬢が多数いるとまで言われる美貌を持っていた。
「入る時はノックくらいしないか!マナーが足りないと言われるぞ。使徒様に関しては先ほど招待するよう使者を出したところだ。とても美しい方らしくてな、実際に姿を見た者は全員見惚れておったそうだ」
「そうなのでしたか、さすがは愛し子と言われている方ですね。それはそれとして、私が使徒様を口説いてしまってもよろしいですか?」
「何を言っているのだ、お前にはすでに婚約者がいるだろう。それに使徒様に対して無礼を働けばガーナ王国のようになってしまうのだぞ」
「聞いた話ですと、ガーナ王国の王太子が呆れるほどの愚者だった…との事でしたが、私はそのような愚行は致しません」
「そういう問題ではないのだ、全くお前ときたら女と見れば見境が無い…いいか、使徒様に対して無礼な真似は許さんぞ!余計な真似はせず大人しくしておるのだ」
「……承知しました」
王太子は王の執務室を出ると顔をしかめた
「俺にかかって落ちない女などいないというのに、父上は本当に愚鈍だな。使徒を口説き落とせればこの世界など簡単に手に入るというのに、愚かな事だ。使徒を篭絡し、自在に操ることができれば神罰ですら思いのままになるかもしれないというのに…」
自身の容姿に加え、女心を掌握する技術に自信のある王太子は王宮の廊下であるというのに独り言を声に出してしまっていた。 そしてそれを聞いてしまった者がいた
「お嬢様、い、今の言葉、本当ならば大変な事です」
「そうですわね、大至急陛下に謁見いたしましょう。すぐに取り次いでちょうだい」
「わかりました」
第2王子の婚約者であるフォース王国伯爵家の次女であった。王妃殿下とのお茶会に参加するために登城していたのだったが、この令嬢は意外と野心家であり、なんとか王太子を蹴落として自身の婚約者である第2王子を立太子させたかったのである。子供の頃から決められていた婚約だったため、王太子の毒牙にかかるのを免れていた数少ない令嬢なのであった。偶然とはいえ、王太子が特大の失態を演じている場面に遭遇し、途中からではあったが独り言の内容を記録結晶に収めた事によって証拠を確保し、ニッコリと微笑むのだった
「ふふっ、王太子殿下もここまでのようですね」
全くもって王宮というのは下手な迷宮よりも恐ろしい場所なのである、身内だからといっても決して味方ではなく、弱みを見せると瞬く間につけ込まれ失脚する…
こうして王太子による危険な行動は未然に処理され、心の底から安堵する国王なのであった。突然であったがなんとか王太子を代える事にし、フォース王国の安寧を切に願ったのだった




