16話
のんびり不定期連載です
解体が終わり、お婆ちゃんは残りのお肉の塩漬け作業を、私は孤児院に有った大きな鍋に魔法で水を張り、火にかけてスープを作っていきます。もちろん買い占めてある野菜も使って。
「この孤児院は国からの支援は受けていないのですか?」
「一応受けてはいます、月に銀貨1枚だけですが」
「月に銀貨1枚ですか?それでは1人ですら養えないじゃないですか」
「以前は銀貨5枚ほどもらえていて、きちんと運営できていたんですが、1年ほど前に慈善事業の担当者が代わり、銀貨1枚になってしまったんです」
「はぁ…その担当者、横領でもしているんじゃないですかね」
「そうは思っても、口に出してしまえばその銀貨1枚ですら無くなってしまいそうで黙ってるしかないのですよ」
むー、話を聞けばなんかひどい事になっていますね。これは他の孤児院も見に行って確認しないといけないですね。教会の孤児院にも後で行ってみましょう。
お婆ちゃんは手際良く塩漬けを作っていき、保存食の準備は整いました。この孤児院に子供は30人ほどいるらしいので、オーク1頭分のお肉があれば2か月は凌げるのではないでしょうか。スープの方も準備を終えて、仕事を終えた子供達が戻ってくるまでコトコト煮込んでおきましょう。
本当なら子供達が戻ってくるのを待って、全員にクリーンの魔法をかけてやりたいけど、他の孤児院の状態が気になったのでお婆ちゃんにスープを任せて出る事にした。
「ほえー、教会が運営している孤児院…ものすごい立派ですねぇ。格差がひどすぎますねこれは」
2軒目に行った民間の孤児院も1軒目同様貧しい感じがひどかったのですが、教会が運営している孤児院はなんかレベルが違いますね。まぁせっかく来たのです、世間話くらいはしてきましょうか。
教会の中に入るとそれはそれは華美な装飾が多く、色々と潤っているのがよくわかりました。中にいた若いシスターさんを捕まえて色々と伺ってみたところ、どうやらフォース王国からの寄付で賄っているとの事、世界の安定を願う創造神フローラ様からの神託により各国に協力していただいてるとかなんとか…もうそれ嘘でしょう!ってレベルの話をとてもいい笑顔で説明してくれました。
オーク肉を現物で寄付すると伝えたら…断られました!お布施は現物では受け取っていないので換金してきてくださいと言われました。 はぁ…
しかし何とも言えない程清々しい差別を行っていますねこの国は、しかし神託ですか、機会があればフローラ様に聞いてみるのもいいかもしれませんね、聖王グロス教国は確か150年ほどの歴史があったはず、はっきりと捏造だと言い切れない感じが何とも言えませんね。ともかく、使徒に任命されてしまった以上動くべきなのか、それとも竜種の討伐が最優先なのか…宿をとってお風呂の中で考えましょう!
再びギルドへ向かい宿を紹介してもらう。今の立場は平民なので、その中で高級な宿を教えてもらいました。
「ふむ、今回の宿もなかなか清潔感があり素敵ですね」
受付を済ませ部屋へと案内してもらう。しかし1泊金貨4枚は高すぎなんじゃないでしょうか!貴族館ならともかく!まぁいいでしょう、ここは王都ですし物価も違うのでしょうから。先に夕食を済ませてからゆっくりお風呂に入って考えましょうかね
『我に何か話があるのか?なんでも申し付けるがよい我が愛し子よ』
「ゴフッ!」
湯船に浸かってのんびりしていたんですけど…現れました。創造神様です!フローラ様です!
「ふ、フローラ様!このような格好で申し訳ありません」
『よいよい気にするでない。今日は我に聞きたい事があると考えていなかったか?我はそれが気になってのぅ』
「そ、そうでしたか…」
しかし突然お風呂場に現れるのはどうかと思いますよ?フローラ様。さすがに口に出しては言えませんがね。それでも会話をする機会に恵まれたので、日中気になった事を聞いてみる事にした
「聖王グロス教国に対して、150年ほど前に神託を出したことはあるのですか?あるのならば内容を教えていただきたいのですが」
『聖王グロス教国?そんなものは知らんな。確かに150年ほど前に神託を出した覚えはあるが、特定の国に何かを言う事など無いと断言しよう』
はぁ…しかし口調は尊大ですが、何度見ても美しいですねフローラ様は、見惚れてしまいます。創造神様の前では全てが霞んでしまいそうです
『ふふ、あまり褒めるでない愛し子よ』
「やはり私の考えている事はお見通しなのですね」
『なんでも分かるというわけではない、意識の表層に現れている感情ならすぐ分かる…といったものだ』
「そうなのですか、それはそれですごい事なんですけど… 話を戻しますが、聖王グロス教国がフローラ様の神託の下、各国から資金援助を受けているようなのです。一応の名目は世界の平定だそうで、悪い事ではないのですけど、聖王グロス教国の教会に対する支援に資金が流れているおかげで通常の孤児院が影響を受けているのです。聖王グロス教国に対して行なった神託でないのならば、その旨訂正をお願いしたいのです」
『ふむ、その程度容易い事よ。其方の頼みであれば引き受けようではないか』
「ありがとうございます。もう一つ質問があるのですがよろしいですか?」
『うむ、なんでも聞くがよい』
「愛し子とは一体何でしょうか?」
『愛し子とは我が力の代行者、この大地に於いて我の代わりに大地を巡り、そして大地を守る者。其方には生まれた時からその力を持っているのだ。大地に生きる者の目線で大地を育む者の事を愛し子と呼んでおるのだ』
「そうなのですか…私にはそれを務める事が出来ているのでしょうか?」
『うむ、其方は旅を始めてからすぐに害悪である竜種を討伐したではないか、それに未来のために子供達を救おうとしている事も我は見ておる。愛し子である其方が望むのならば神託を出す事くらい容易い事なのだ。其方は其方の思うがまま大地を旅して回れば良いのだよ』
「愛し子のお役目、改めて承りました。私の出来る範囲でというならば、その中で全力を尽くしましょう」
『うむ、まずは竜種の討伐をよろしく頼む。だが無理はせず、安全な方法でな』
「わかりました、気をつけます」
『それでは我が名を騙ったという聖王グロス教国に対して神罰を与えねばいけないな』
「お待ちください、騙った事は確かに不敬ですが、教義として言っている事はまともな事なんです。なので警告という事でお願いできませんか?」
『警告か…まぁよかろう、其方は優しいのぅ』
「その教義に感銘を受けて活動してる者がいるはずなので、潰してしまうのは惜しいのです」
『ふむ、我が愛し子の祈りを確かに受け取った。そのように計らおう』




