その49
誤字報告いつもありがとうございます。
─ショコラ王国西部、SIDE:カラメル辺境伯夫人─
一応タルト家の者達に聞けないよう距離を置いた場所で、お茶の用意をしてルック子爵をもてなす。もちろん他の護衛兵達にもお茶を振舞い、休憩してもらう。
「それで今後の予定なのですが、この場で襲撃してあの醜い豚どもの死体を我が国の地に晒すのは問題かと思いまして、このまま予定通りに進んでいただき、迷宮都市ボンボンに入って頂きたいの」
「迷宮都市ボンボンにですか、という事は… あの罪人らを迷宮に入れるという事ですね?」
「そうです、そこで私がこの手で斬ります。そうすれば後始末も楽になりますわ」
「承知いたしました。しかしそれだとギルドの目を掻い潜らなければいけませんね、たとえ罪人だとしても、迷宮内で処刑すると良い顔をしないでしょう」
「そうね、それについては考えがありますので任せていただきたいわ。その為にこちらも4人の優秀な騎士を連れてきていますので」
「策があるのならばお任せいたします。我らは4人の罪人を国外に追放した… それだけですので」
「一応お兄様宛てに手紙をしたためてあります、戻りましたらそれを提出してくだされば咎は無いでしょう」
予め書いてあった手紙を子爵に渡す、お兄様ならこれで納得してくれますわ。
「それでは、仕込みをするために私は先行して迷宮都市ボンボンに向かいますわ、貴方達は当初の予定通りに行動してくださいませ」
「承知いたしました、ご無理をなさらぬよう…」
さて、これで後はボンボンに入って準備をしましょうか。すでにボンボンでのギルド職員達の動向は掴んでいますので、後は牢馬車が到着するのを待つだけですわ。
後は… ボンボンには高級宿が1軒しかないらしいので、変な宿でないことを祈るばかりね。
─ボンボン迷宮最下層、制御室─
「美味しいお弁当でした… デザートも最高でしたし、ソファーもいい仕事をしています。より良い食生活のために頑張りますか!」
食後の休憩を終えて制御室を後にする。
完全に作業と化している49階層『自称農園』の狩りも、48階層ブラックコカトリスの狩りも、この世界の人間であれば高位の騎士や、Aランク冒険者が4~5人束になって初めて1体を狩れるほどの強さを持っています。
正直に言えば、ブラックコカトリスとドリアードだけは一般開放すると大惨事が起きそうな予感はしています。
辺境伯領で見た騎士達の実力を考えると、2~3年訓練に時間を費やした所で対等に戦えるかどうかは分かりません。
「そこの所、ギルドはどう考えているんでしょうね。少なくともテネシーさんはブラックコカトリスをその目で見ているはずなんですが、そんな話はしませんでしたし…」
実際問題、コカトリスには『石化攻撃』と呼ばれる、身体が硬化していく毒を使うと言われています。尻尾になっている蛇に噛まれると、毒を注入されるみたいなのです。まぁ私は基本的には遠距離攻撃なのでその手の攻撃は脅威ではありませんし、接近戦をしたとしても、私の防御魔法を破って来るほどの攻撃ではないので問題はありません。
しかし、自分でも分かっていますが… 私の持つ魔力がおかしいだけで、普通の人では真似をする事が出来ないのです。
「迷宮を改変したとして、ブラックコカトリスとドリアードは単体にして、リポップの時間も長く設定しないと狩りどころではないですよね」
ブラックコカトリスはともかく、ドリアードを対策する方はもっと大変です。なにせ樹木ですから! 木材だからと言って侮ろうものなら、あっという間に袋叩きにあいますよ。
「まぁ… ちょっとだけ裏技を思いつきましたが、果たしてそれをギルドに教えていい物かどうか… 悩ましいですね」
思いついた裏技… それが上手くいくようなら、ブラックコカトリスとドリアードの狩りは完全に作業になります。それもドロップ品を拾うだけの…
まだ試していないので成功するかは不明ですが、恐らく上手くいくのではないかと考えています。
あのギルドマスターやサブマスターがそれを知ったら… それどころかこの国の貴族に知られたら、間違いなく『黒コカ利権戦争』が勃発してしまいますよね。
ノーリスクで高級品である黒コカ肉とドリアードのりんごが収穫できるのですから… 喉から手が出る程欲しがるでしょう。
「これはどうしましょうか… 相談できる相手がいないというのも、なかなかに寂しいものですね」
とはいえ、せっかくなので裏技は試験しておいた方が良いでしょうね。そのための道具を作ってこなければいけませんが、迷宮都市であれば鍛冶屋は何軒かあるでしょうからお願いしてみましょう。
作ってもらうものは、3メートル四方の鉄板です。厚みは2センチもあれば十分でしょう、持ち運びは収納魔法があるので大丈夫だとして… 鍛冶屋の方でそのサイズの鉄板が作れるかどうかですね。
最悪は4分割して作ってもらい、広い場所に移動してから継ぎ接ぎしてもらいましょう。
「試験と言いつつ、上手くいくようであれば私も使うんですけどね」
晩までみっちりと狩る予定で乗り込みましたが、あっさりと方向転換して迷宮から出る事にしました。
「さて鍛冶屋なんですが、個人的なイメージでは… 頑固そうなオヤジさんがハンマーを片手に『べらんめぇ!てやんでぇ!』という感じなのですが… そういえば、そういった工房にお邪魔するのは初めてかもしれませんね」
完全に偏見であると理解しつつも、ちょっとだけわくわくしながら騒音系の工房が集まっているエリアに向かいました。
ボンボンの町の南西にある工房が立ち並んでいるエリア、それぞれの工房から黒煙が立ち昇っており、空気がよろしくありません。この場所に長く居ると… 私の自慢のプラチナブロンドヘアーが煤けてしまいそうです。早急に用件を片付けなければいけませんね、まぁクリーンの魔法を使えばいいのですが、そこはそれです。
おや、早速見つけてしまいました。ショーウィンドウらしきスペースに、剣とか槍とかを飾っている所を。果たして仕事を受けてくれるでしょうかね… どきどきしてきましたよ。
「た、たのもー!」
言ってみたかったセリフを思い切って告げながら工房に入っていく。
「んー? なんだいお嬢ちゃん、ここは武器防具、金属加工の工房だ。お嬢ちゃんの役に立ちそうなものは置いてないぜ?」
「いえ、それであれば私の役に立ちそうです」
中にいたのは、身長190センチはありそうな大柄な男性で、当然のようにものすごい筋肉が立っていました。




