その50
誤字報告いつもありがとうございます。
「ほぅ? 一体何を所望なんだい? 言ってみろよ」
大柄な筋肉さんはニヤつきながら話しかけてきます、しかしすごい腕の太さですね、私の腰… は大袈裟ですが、それくらいありそうです。
「実はですね、3メートル四方で、厚さは2センチくらいの鉄板を作って欲しいのです。それと、それを置けるだけの強度を持った台座も」
「3メートル四方の鉄板だぁ? 一体何に使うってんだ」
「残念ながら用途を教える訳にはいきません。その鉄板なんですが、場所の都合で作れないというのであれば、4分割にしても問題は無いですよ。もちろん後で繋げられるように加工してもらいますけど」
「ほほぅ、用途は言えない…か」
筋肉さんは何やら『考える人』のポーズを取り、思い耽っているようですけど… 出来るか出来ないかの返答は早めに欲しいですね。
「別に作るだけなら簡単な代物だ、さすがに分割はさせてもらうが… しかしお嬢ちゃん、3メートル四方で厚さ2センチって… どれだけ重くなるか分かっているのか? 4分割したって1枚持つのに屈強な男連中が4~5人必要になりそうなんだが」
「それについては問題ありません。持ち運びは収納魔法を使いますし、身体強化の魔法も得意なので大丈夫です」
「お嬢ちゃん魔法使いだったのか… まぁいいだろう。台座込みで金貨5枚、これで良いって言うなら引き受けよう。後、これはただの希望なんだが… どういう風に使われるか見てみたいのだが」
「金額は了解です、前金として金貨3枚を今日払っていきましょう。後、使う所ですか… 迷宮内で使用する予定なので、恐らく無理だと思います。49階層でやるつもりなんで」
「迷宮内でか? それは無理なんじゃないか? 鉄板と言えども吸収されちまうと思うぞ」
「それについての対策は考えていますので大丈夫ですよ」
「ふむ~、迷宮内で使うのか… 護衛を雇ったらいくらくらいかかると思う?」
「いえ、そもそも49階層に到達できる冒険者がいないので無理だと思います。現状では私以外いませんので」
「ええ? お嬢ちゃんなら行けるってんのか? 見た目は良い所お嬢ちゃんなんだが… やはり魔法使いってのは優秀なんだな」
筋肉さんがオーバーアクションで驚きのポーズを取る、ふむふむ… こうして見るとお茶目に見えなくも無いですね。
「じゃあお嬢ちゃんに依頼したら受けてくれるか?」
「それは… 正直に言えばお断りしたいですね」
「なぜだ? 理由を聞いても?」
「私が私のペースで進んだとしても、片道で4~5日はかかってしまいます。その期間を男性の方と一緒に過ごすというのは…」
「ああ、そりゃ確かに配慮が足りなかったな」
理解してくれたようで何よりです。
身の安全はどうにでもなるとはいえ、男性が一緒にいたら… 道中でお風呂に入れませんからね!
それに、さすがに転移魔法を見せびらかすわけにもいきませんし、転移陣を使ってしまえば… 迷宮が踏破されたという噂が流れてしまう可能性があります。
さすがにそこは、ギルドに配慮しておかないといけませんからね。
「まぁアレだ、4分割するから接続用の金具も必要になるだろう。それに台座の形や高さも打ち合わせが必要だな」
「はい、ですが装飾などは必要ないので、台座は高さが1メートルくらいの位置で、平面に置けるようにお願いします」
「高さ1メートルで平らに置くという事か、そうすると… うんまぁイケるだろ。期間は5日欲しい所だな、それでいいか?」
「わかりました、それでお願いします」
前金で金貨3枚を支払い、鍛冶屋さんを後にしました。
これで上手くいくようでしたら、無人でひたすらブラックコカトリスを狩ってくれる罠が出来上がります。
無人で… とはいえ、お肉を拾わなければいけないのですがね。まぁそこは上手くいってから考えましょう。
実際にやってみないと欠点も分かりませんしね、それに… ブラックコカトリスだけでなく、他の魔物にも応用できると思うので、文字通り自動狩りの畑が出来上がります。
「上手くいくと良いですね。これが出来るのなら、冒険者の実力とか関係無しに、定期的で安全に供給が出来るようになります。もちろんドリアードにも使えるでしょう」
後はテネシーさんを含めたギルド職員の構想次第ですが、この町の発展に寄与できる事でしょう。
さすがに甘やかし過ぎるでしょうかね… でもまぁ、美味しい物は皆で分かち合わなければいけませんのでね、このくらいであれば許容範囲でしょう。
ギルド関係者がおかしな方向に頑張りすぎないことを祈りましょう。
これが出来れば完全に工場のようになり、危険も大幅に減少できると思います。欠点を言えば、厚さ2センチの鉄板とはいえ消耗品である事。
いずれは消耗して、重さに耐えられなくなって壊れてしまう事でしょう。
それが何年後になるのかは不明ですが、最低でも10年くらいは持つと思います。その10年を猶予として、いずれは自力でブラックコカトリスを討伐できる冒険者を育成して、備えるようにするしかありません。
「さすがに10年後には私はいませんからね、まぁアマンダ様次第ではありますが」
どちらにしても、完成しなければ検証も出来ません。この5日間どうしましょうか… いっそテネシーさんを説教しながら意識改革のために教育してしまいましょうか… 今のままじゃはっきりいって頼りないですからね。
まぁアレです、お節介を焼くにしても… お腹が空いては戦は出来ないのです! ちょっと早いですが宿に戻って夕食まで待機としましょう。
─冒険者ギルドボンボン支部─
「ふぁっくしゅ! んー、誰か悪口言ってない?」
「知らんがなそんな事」
「まぁいいわ、ちょっとこれ見てくれる? 迷宮1階層の図面なんだけど」
「どれどれ?」
書かれた図面には、2階層に向かうルートと低級の野菜系魔物が現れる大部屋、それに隠し通路を設け、その奥にブラックコカトリスを狩るための部屋が書かれていた。
「低級の野菜系と言うと、イモネギタマネギか? しかしアレだぞ? 一度見ておいた方が絶対に良いと思う。なんせあの使徒が言う低級だろ? 普通の冒険者にとっては中級以上の魔物かもしれないぞ」
「確かにそれは考えられるわね、ブラックコカトリスをちょちょいと倒しちゃうくらいだし… 実はブラックコカトリスが雑魚だったんじゃないかって疑う程だったしね」
「で、実際に見た感じは?」
「ええ、コカトリスなんかよりも遥かに威圧感があったわ。少なくとも私では倒せないわね」
「だろ? これは要確認だな。安全の為だって言えば使徒だって嫌とは言わないと思うし」
「そうしましょうか…」
会いたい旨を伝えるために、職員に手紙を持たせて宿へと走らせるのだった。




