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Heinvia Story  作者: Frey
首都フィンデンスタイン
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24/27

戦うオートマトン

戦線で戦い始めてから、軽く2時間は経過した。

被弾を受けることはほとんどなく、引き継ぎ恩恵のおかげでステータス値は高いのでMPの自然回復量も多く消耗はほとんどない。


特に俺の場合は、他の人間にない割り振り可能ステータスポイントの使い方によって特殊な戦い方が出来る。


ここまで戦ってきて分かったことだが、俺はレベルが上がるにしたがって各ステータスが1ポイント上昇し、それとは別に任意のステータスに割り当てることが出来るポイントを3ポイントもらうことが出来る。


現在65レベルのため、192ポイント所持しているが、鍵になるのはこのポイントが“何度でも”再割り振り可能なことだ。


ステータス画面を開く必要があるため戦闘中に割り振るのは難しいが、例えば一時的にINTに全ポイントを割り当てててMPの自動回復量を増やしたり、ポーションを使用する前にVITに振り分けてHPの最大値を増やし割合回復量を水増ししたりすることが可能だ。



断続的な襲撃とアメリアは言っていたが、厳密に言うと周期の決まっていないモンスターの波が押し寄せてくる感じだ。

さらに、時間が経つにつれてモンスターの群れの中に少しずつ強い個体が混じるようになってきている。


既にほとんどの人間がすでに感づいているだろうが、この襲撃事件は人為的に引き起こされているものだ。


襲撃してくるモンスターの統一性の無さ、非好戦的なモンスターの突発的な狂暴化、ハンターを消耗させる戦い方といった具合にピースが揃いすぎている。


特に、特定のポイントを防衛しなくてはならない相手に対して小さな戦力を五月雨式にぶつける戦法は非常に理にかなったやり方で、低級モンスターの知性ではこうはならない。


しかし、その方法と目的が分からない。

今は、調査団の捜査に進展があるか、この襲撃が終わりを迎えるまで迎撃を続けるしかない。



「すまない、遅くなったね。」


「別に落ち合う約束をしていた訳じゃないだろう?謝る必要はない。」


後ろからルードが声を掛けてきた。

彼も事態を聞きつけ参戦しにやって来たようだ。


「あなたがフィルちゃんね、ルイーズが他人を称賛するのは珍しいから会ってみたかったのだけど、ちょうど良かったわー。」


「ちょっとオレイヤ!本人の前で言わなくてもいいでしょ!」


ルードと一緒にルイーズも来ているようだが、見慣れない薄ピンク色の髪をした女の子もそこにいた。


「ルイーズ、この人は?」


「あたし達のクラン、“ミステリードールズ”のクランリーダーよ。それと、別に称賛してないからね?レイドクエストの報告をしただけよ?」


「オレイヤよー、ジョブは“パペッティア”をやっているわー。よろしくねぇ。」



特徴的に語尾を伸ばす話し方をする彼女は、どう見ても幼女にしか見えない容姿の割に、不思議と大人びた雰囲気を漂わせる第一印象だ。


それに、“パペッティア”とは面白いジョブを習得している。

専用武器の鋼糸を使用した中距離戦を得意とするジョブだが、“傀儡子”の名の通り一風変わった戦闘が可能なジョブだ。


条件を満たした対象の行動を意思に反して掌握したり、無機物を操り攻撃を仕掛けたりといったようにスタイルの幅は非常に広いのだが、操作難易度の高さ故にゲーム時代にこのジョブをメインに運用しているプレイヤーはほとんどいなかった。



「あたしのクランメンバーがお世話になったお礼にー、あなたの持ち場を手伝ってあげるわー。」


(担当場所が決まっている訳ではないんだが、まぁいいか)


オレイヤは少し前に出ると、インベントリから2体の人形を取り出した。

平均よりだいぶ小さい彼女のさらに半分程の背丈で、赤と青のクリスマス帽子のようなものを被った兵隊のような造形をしている。


赤帽子はバックラー装備、青帽子はマントを着用し、それぞれ「Jamie」(ジェイミー)と「Jeremy」(ジェレミー)と書かれていて非常に愛らしい。



「さぁ、いくわよあなたたちー」


気の抜ける掛け声とともにモンスターを迎撃し始めたオレイヤだが、その戦闘には目を見張るものがあった。


おそらくあの人形は機械人形(オートマトン)として、オレイヤが魔力を媒介に操作をしていると思われるので、実質1人で3人分戦っているようなものだ。


面白いことに、敵の物理攻撃に対してはジェイミーがバックラーで防ぎ、魔法攻撃に対してはジェレミーが魔法カット効果のあるマントでカバーに入る動きをさせることによって、それぞれの被ダメージを最小限に抑えている。


身の丈に合わない攻撃を苦も無く人形たちが受け止めているのを見る限り、バックラーとマントにはそれぞれ物理と魔法を大幅に軽減する加工がされているのだろう。


(すごいな、術者の集中力が続く限りは、弱点らしい弱点が見当たらない。)


「僕たちも仕事といこうじゃないか。」


ルードがオレイヤの援護に入るのを皮切りに、ルイーズと俺も戦闘に参加した。

いつ終わるか分からない戦いであるため、孤独に戦い続けるより、共闘してくれる仲間がいた方が精神的にも、肉体的にも助かる。


この数日で、コミュニティが広がったことに感謝しなくては。




夜明けが差し掛かかるまで戦い続けているが、敵の手が休まる気配はない。

むしろ、中型モンスターの割合も増え、ちらほらと大型のモンスターも混ざるようになってきたあたりから、ハンター勢の戦線が後退してきている。


ルードと俺、オレイヤとルイーズの共闘組はまだ戦えているが、消耗と疲労からリタイアしたハンターが増えてくるにしたがって休憩に割く時間が減り、特にMP残量が戦闘に影響しやすいルイーズがジリ貧になってきている状態だ。


調査団の最新の情報でも、襲来してくる各地のモンスターの元の生息区域をくまなく捜索したが、狂暴化につながるような原因はどの地域でも見つからなかったそうだ。



「終わりが見えないのは、流石に応えるわね。」


「そうねぇ、あたしも眠くなってきちゃったわー。」


(2体のオートマトンをここまで精度を落とさず操っておいて、よく言う)


「調査団の調べに進捗がないんじゃ、戦線を維持しているハンターたちのモチベーションは下がる一方だね。どうするフィル?」


「どうして俺に聞く?」


「まだ1回しか一緒に戦ったことないけど、君がこういうとき頼りになりそうなのは知っているからね。」


「考えはあるが、聞くなら最後まで付き合えよ?ルイーズとオレイヤも頼む。」


「内容次第だけど、言ってみなさいよ。」


「各モンスターの生息区域に異常が見られないのであれば、原因はモンスター達が押し寄せてくるこの波の向こう側にある可能性が高い。それを何とかしないとこの襲撃が終わらないのであれば、やることはひとつ“一転突破”だ。」



思い返してみれば、よく考えられた作戦だ。

一部区域のモンスターを何らかの方法で狂暴化させ街周辺を攻撃すれば、当然レギオンが黙ってはいない。


迎撃のハンターと遊撃調査のハンターを二分させ、その上で防衛側が消耗しやすい布陣で継続的に街を襲撃させる。


原因がモンスターの生息地、つまりポップする場所にないことが明らかになる頃には、モンスターの集団を突破するだけの戦力がハンターには残っていない。


人為的な異変を疑えたのならよくよく考えれば分かる作戦なのだが、昨日俺は“グローミーヴェイル”で狂暴化した“ブランディア”に遭遇してしまった。

そのせいで、俺自身も原因はモンスターの出現地域にあると思い込んでしまった。


「今からPT申請を送る。作戦に乗ってくれるなら、加入してくれ。悪いがリーダーをやらせてもらう、メンバーの能力を上昇させるアビリティがあるんでな。」


「僕は元からそのつもりだ。今回も期待してるよ。」


「まぁ、それ以外に方法はないし、私も別に構わないわ。」


「じゃあ決定ねー、陣形はどうするのフィルちゃん?」


「俺が前衛で邪魔になるモンスター倒しながら中央を突破する。討ち漏らしが出たらオレイヤがやってくれ。回復役はクルセイダーのルードが担当だ。側面からの攻撃はルードとオレイヤが逐一防いで、肉薄してきたやつをルイーズが殲滅だ。」


作戦を聞いて、それぞれが頷いてくれる。


「じゃあこの騒動に、幕を下ろすとしようじゃないか。」


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