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Heinvia Story  作者: Frey
首都フィンデンスタイン
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21/27

死毒を払うは、剣閃と銃弾

「フィル、タゲを取ってくれ、ルシエールとベネディクトはデッドリーを集中的に攻撃。マリーとルイーズは範囲魔法でイマーチャーを間引いてくれ、殲滅する必要はない、適宜デッドリーも狙ってくれ。イネスは回復と状態異常解除に専念。」


「後衛組は俺とルードにラインを被せるなよ!」


ターゲット固定スキル【プロボーク】を発動させつつデッドリーパイソンの裏手に回るよう移動する。


わらわらとイマーチャーが寄ってくるが、半数ほどが途中で踵を返してルードへ向かっていった。

同じように挑発スキルでイマーチャーを半分引き受けてくれたようだ。



こいつらは、生体になる前の未熟な個体と言うこともあり個々の戦闘力はかなり低い。

剣の一振りで仕留めることが出来る程脆いが、デッドリー同様の毒を使用するため注意が必要だ。


デッドリーが使用する、触れる時間に応じて受ける継続ダメージが増加する“蓄積毒”の対処法は2つ。触れないように立ち回ることと、受けたら即時解除を徹底すること。


解毒すれば蓄積値は初期値に戻るため、遠距離攻撃可能なジョブは距離を取り続け、毒を受けやすい前衛の解毒にヒーラーは意識を集中する。


デッドリーパイソンとの戦いにおけるセオリーであり、ルードが最初に出した指示は的確なものだった。


現に、ルーシィとベネディクトは順調にデッドリーに攻撃を命中させており、魔法使い組の範囲殲滅でイマーチャーの数も徐々に減ってきている。


プリーストのスキルも使用できるクルセイダーのルードは自力で解毒の魔法が使えるので問題なく、俺が毒を受けるたびにイネスが解毒してくれるので非常に安定している。


自分の役割をきちんと理解し、状況に応じて判断して行動することが出来る。

言うは易し、行うは難しという言葉があるが、俺が想定した以上に今回のメンバーは優秀なハンターが集まったようだ。



しかし、セオリーが通用するのはデッドリーパイソンが“通常種”の場合だ。

変異種との戦いにおいて、俺たちの安定した戦いの歯車が少しずつ狂いだしていた。


最初の異変は、ルーシィが発した一言から始まった。


「ねぇフィル、おそらくデッドリーにあまり攻撃が通っていないわ!」


すでにルーシィとベネディクトが相当数の攻撃をしていて、魔法使い組も定期的に攻撃に参加しているというのに、デッドリーの動きが鈍る様子が全くない。


「どうするルード?あまり時間をかけるとジリ貧になるわよ?」


「分かってるけど、効かないのが分かっててスキルをこれ以上無駄打ちするわけにはいかない。少し様子を見るから消費の少ないスキルで戦ってくれ。」



ルイーズの言う通り、デッドリーパイソン戦で絶対にしてはいけないのが戦いの長期化だ。

フィールドに残り続ける毒のせいで、戦闘が長引くほど行動できる範囲が狭くなる。


デッドリーパイソンがレイドクエストの対象になったのもこれが原因だと思われる。

勘違いされがちだが、デッドリーパイソンは物理防御力が高い。

爬虫類の例に漏れず、体表が堅固な鱗で覆われているためである。


そのため、デッドリーパイソンが討伐対象のクエストは大人数で短期決戦を行うためにレイド形式が取られる場合が多い。



それにしても、ルーシィを含めた魔法攻撃も通っていないのはおかしい。

通常種の魔法攻撃耐性はそこまで高くないので、変異種であることが原因であることは間違いないのだが、いかんせん情報が少ない。


攻撃を受けている時のデッドリーの様子を観察するためのルードの指示は正しい。

おかげで、奴の防御力の秘密がなんとなく分かってきた。



だが、既にデッドリー周辺の地面は前衛が触れずに立ち回ることが困難なレベルで毒のフィールドが出来上がってしまっている。


そうなると、攻撃スキルと補助魔法の両方を使用しているルードと、全体の回復と解毒を絶やさず行うイネスの負担が相対的に増える。

そして、MP回復中のイネスとルードのラインが重なったその時だった。


毒液を吐く際に、通常は紫色のエフェクトがかかるデッドリーの口元が、“黄色”に淡く光っていた。


「ルード、イネス、避けろっ!」


ドロドロした液状の毒とは異なり、霧散する黄色い煙をデッドリーが吐き出した。

ルードがイネスを庇うように立ち塞がるが、空間を支配するように広がる麻痺の霧は瞬く間に2人を飲み込んでしまった。


「回復役をまとめて潰せる時を狙ってやがったのか、くそ!二人とも、生きてるか?」


「あぁ、HPは問題ないが、体が動かない。」


ダメージ判定はなく、状態異常を引き起こすだけの霧なのは助かった。

しかしあの範囲は驚異的だ、連発されたらやっかいなのは間違いない。


さらに追い打ちをかけるように悪い展開は続く


「フィル、増援よ!」


「前衛1人と回復役が欠けてる間にたたみかけようってことか。性格が悪いなまったく。」


壁面の小さな穴から、おびただしい量のイマーチャーが湧き出てきた。



レイドクエストでは素性がバレそうになることは出来るだけ控えたかったが仕方ない。

今日会ったばかりの人間と言えど、レイドの仲間を死の危険に晒すわけにもいかない。


「ルードが行動不能だ、一時的に指揮権を継ぐ。ルイーズはルードとイネスの麻痺解除に専念しろ。マリーとベネティクトはデッドリーに少しの間集中攻撃、効かなくてもいいありったけ撃ちまくれ、毒と麻痺を吐かせる暇を与えるな。」


「どうするつもり?」


ルイーズが訪ねてくる。


「心配するな。あいつを倒す方法には見当がついた。」


ルイーズは俺の顔を少しの間睨んでいたが、指示通りルードとイネスの回復に向かってくれた。


「ルーシィ、特殊弾丸を解禁だ。“アロー”を撃て、目標は沸いてきたイマーチャーだ、殲滅しろ。」


「了解よ。」



ルーシィが数発の弾丸を天井に向けて放つ。


【MX256 フレシェット】 通称 “アロー”

発射されたこの弾丸は、空中で炸裂し小型の矢のような子弾を放物線を描いて撒き散らす。

攻撃対象を刺傷させることに特化した炸裂式投射弾頭だが、イマーチャークラスの耐久力であれば殲滅も可能だ。


ダーツのような形状の弾丸の雨が、イマーチャーの集団に降り注ぎ、瞬く間に殲滅していく。


「マリー、ベネディクト、3秒後に攻撃停止だ。次の合図をするまでMPを回復しておいてくれ。ルイーズ、回復は終わったか?」


「もう大丈夫よ!」


「すまない、フィル。麻痺は治してもらった、もういけるよ!」


「了解だ、悪いがこのまま指示を出させてもらう!ルイーズとイネスは俺にバフを掛け直してくれ。ルード、マリーとベネディクトの攻撃が終わったら仕掛けるぞ、少しの間タゲを引き受けてくれ。」



マリーとベネディクトの総攻撃が止むのと同時に俺とルードが駆け出す。


デッドリーがルードに肉薄する。

両者が拮抗している間に、ルードの横をすり抜けるようにデッドリーの顎下に潜り込む。



ジョブを“剣聖”に切り替えながら。


【血飲み石化】

対象へ突き攻撃を行う。首に該当する場所へ攻撃が命中した場合、威力が増加する。


デッドリーの喉元に突き立てるようにスキルを命中させる。

顔の先端は鱗で覆われていないこともあり、物理攻撃もよく通るようだ。



「キシュァァァ!!」


「初めて鳴き声を上げたな、寡黙なモンスターかと思ったが...」


「フィル、尻尾に気を付けて!!」


危害を加えられたことによる条件反射のように、巨大な尻尾を降り下ろしてきた。


すぐさま大楯を装備した“パラディン”の状態に戻り防御する。


【アブソリュートディフェンス】

物理攻撃を1度だけ完全に防ぐ


「なっ!?どうしてすぐにジョブチェンジを?」


「説明してる暇はない。ルード、そいつの頭をかちあげろ!」


驚いた様子のルードを一括して、指示をする。

ルードは剣で力いっぱいデッドリーの頭を打ち上げた。



その間にまた“剣聖”のジョブへ変更していた俺は、準備していたスキルを発動させる。


【螺旋・鎧通し】

対象の物理防御力が高い程威力が上昇する突きを放つ。命中後、対象の物理防御力をダウンさせる。


鱗の隙間を縫うように数撃突きを放つ。


「シャァァアア!」


嫌がるようにデッドリーが自分の周囲に毒液を撒き散らし始める。

だが、すでに俺とルードは距離を取るように戦線を下げていた。


奴にとどめをさすための準備が整ったからだ。


「マリー、【バインド】の魔法を頼む、少しで構わないから奴の動きを止めてくれ。ルーシィ、“フラワー”を撃て。血が流れ出している部分を狙うんだぞ?」


「任せて。」


拘束の魔法【バインド】をマリーが詠唱し、デッドリーの動きが止まった瞬間にルーシィが銃を撃つ。



【GD233 ホローポイント】 通称 “フラワー”

弾頭の先端に空洞が出来るように加工されたこの弾丸は、命中すると空洞部分の空気が圧縮され弾頭が花開くように対象の体内で炸裂膨張し、大きな損傷を与える。




「盲管銃創って知ってるか?弾丸が貫通せずに体内に残留してしまう事をそう言うんだが、それを意図的に起こりやすくした弾丸だ。体内で咲く鉄の花には、自慢の鱗も役に立たないだろうな。」


「...間違っても撃たれたくないね。」


「人に撃つには非人道的過ぎる代物だ。討伐依頼が出ているモンスターにしか使う予定はないさ。」



しばらくもがき苦しむように動き回っていたデッドリーパイソンだったが、次第に力なく地に伏すようにして絶命した。


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