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Heinvia Story  作者: Frey
首都フィンデンスタイン
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18/27

優秀なスポンサー

中央部で家具を購入し、ホームへ一通り設置し終えた翌日、俺はライドアイテムの作成に取り掛かった。


ルーシィは銃技の練習をしてから、近所の散策に向かうらしい。


今日から作成するライドアイテムは、バイク型の乗り物「スコーチャー」だ。

ライドアイテムには、搭乗員数・最高速・取付可能アタッチメントが乗り物ごとに設定されている。


「スコーチャー」は武装アタッチメントが取付不可で、搭乗員数も2名と少ない代わりに、最高速が非常に高く設定されているライドアイテムだ。


ゲーム時代は、それなりに序盤のメインクエストのクリア報酬でレシピを入手することができ、クラフトに必要なクラフトレベルも素材の量も良心的な設定になっていた。


オープンワールドゲームでは、フィールド内での移動速度にユーザーが感じるストレスは、それだけでゲーム離れを引き起こしかねない問題である。

その解決策として、プレイヤーが最初にクラフトすることが出来るライドアイテムとして配られていたものだろう。


必要クラフトレベルが低いアイテムであれば、NPCのクラフターに作成を依頼することが可能なので、ハンターのレベルしか上げていないプレイヤーも安心だ。



ただ、武器を製作した時からそうだったが、この世界でのクラフトはゲームの時とは大きく異なる点が1つあった。


ゲーム時代は、レシピと必要な素材を選択し、ウィンドウから作成を選択して選ぶだけで、後は放置していれば完成したのだが、こちらでは自分の手で素材を加工して部品やパーツにし、実際に組み立てるがある。


ちゃんとクラフトレベルの上昇に合わせて、どの素材をどのように加工し、どう組み上げれば完成するのか勝手に頭に流れ込んでくるあたり、不思議なものだ。



そんなわけで、俺は目下ホームの工房でひたすら素材を加工している最中だ。


現実世界の俺は肉体労働とはかけ離れた仕事についていた為、非常に新鮮である。

それなりにステータスも高くなってきたため、疲労も今のところ感じない。


この世界のクラフトアイテムの作成時間は、クラフターの体力次第で長くもなれば短くもなるのかもしれない。



昼にルーシィが作ってくれたサンドイッチを食べ、午後もクラフトの続きに取り掛かる。

パーツの作成が終わり、ボディの組み立てに入っていた時、ルーシィが戻ってきた。


「おかえり、何か発見はあったかい?」


「ただいま。ほんとに閑散とした地域ね。ちょっとした買い物をするくらいのお店ならいくつかあるけど、大きい買い物をしたかったらやっぱり中央部まで行かないとダメだわ。ただ、外側に近い分フィールドに出るのはすぐよ。あとは、大きな教会が1つあるくらいね。」


「なるほどな、おもしろい建物の1つや2つもしかしたら見つかるかと思ったが、期待しすぎだったか」


「そっちは順調そうね、見たことない乗り物だけどもう完成は近いの?」


「あぁ、後少し部品を取り付けたら終わりだ。完成したらテストランを兼ねてその辺を一緒に走ってみるか?」


「いいわね!じゃあ、あと少しならここで見ててもいいかしら?」


「構わないよ。」



ルーシィと雑談しながら組み上げを進めていき、ついに「スコーチャー」は完成した。


「さぁ、ドライブといこうじゃないか。」


出来上がったスコーチャーに乗り込み、ルーシィを後部座席に乗せる。

初めて見る乗り物に少々不安はあるようだが、好奇心の方が勝っているらしい。

腰に手を回してしっかり掴まっているように伝え、ガレージから勢いよく発進する。


流石はハインヴィアでも上から数えたほうが早いクラスのライドアイテムだけあって相当早い。

ホームが見る見るうちに小さくなっていくのが分かる。


このスコーチャーは、見た目こそ完全にバイクでタイヤもしっかり2つ付いているのだが、実際は地面のほんの少し上を浮遊するように走っている。

そのため、沼地や底の浅い川程度であれば問題なく走破することが出来る。


さらに、速度と走行ルートから道の状況に応じて浮遊する距離を調整し、事前にサスペンションの代わりになるスペースを作り出すことによって悪路も快適に走れる仕組みになっている。


燃料は大気中の魔力を取り込んでエネルギーとしており(これはスコーチャーに限らず他のライドアイテムも同様)、最大で3時間まで連続走行が可能だ。


ゲーム時代の設定だが、こういう細かい設定が設けられているのも、俺がハインヴィアを好きな理由の1つだ。



「こんな乗り物初めて乗ったわ。これなら中央部にも気軽に行けそうね。」


「そうだな、おそらく20分とかからず行けるはずだ。」


「鉄道だと2時間弱はかかるのに、フィルは相変わらず無茶苦茶ね。」


「今更だろ?そのうちルーシィの分も作るから、今のうちに速さには慣れておけよ。」



そうして、10分ほどのテストランを済ませて、自宅へ帰ってきた。

今は、今後の予定を話しながら、2人で夕食を取っている最中だ。


「ホームと移動手段が確保できたわけだけど、次の目標は何?」


「まだまだやることはたくさんあるが、急ぎ必要なことはひとまず達成だ。予定通りお互いのレベルアップを軸にして、順繰りやっていこうじゃないか。」


「フィルのやろうと思っていることって、どんなこと?」


「錬金と鍛冶のクラフトスキルを上げる、ステータスとジョブのレベルを上げる、新しい装備を作る、首都のクエストを受けてみる、挙げたらいろいろあるな。」


「じゃあ、明日から早速クエストを受ける?」


「いや、まずはジェイドの店に行こう。せっかく招待を受けたんだし、あの店は今後も懇意にしたいしな。それに、ジェイドに頼みたいこともある。」


「頼みたいこと?」


「ルーシィが使う弾丸のクラフト代行だ。ルーシィは魔法弾主体で戦っているが、通常弾も使うだろ?俺の手持ちにも限界があるから、供給してくれるスポンサーが必要だ。さすがに、遠距離職が通常攻撃に使う消耗品までクラフトしてる余裕はないからな。」


「そうゆうことなら、直接会ってお願いしなきゃね。」



翌日、俺たちはスコーチャーに乗ってジェイドの店に向かった。


「ようフィル、早速来たのか。ってなんだその乗り物?」


「ライドアイテムさ、ちょっと特殊だけどな。俺たちのホームからここまで20分で来れるぞ?」


「20分!?冗談だろ?ここから郊外まで辻馬車でも1時間半はかかるのに。」


「予想通りのリアクションが得られたな。」


「なぁフィル、そのライドアイテムのレシピ教えてくれよ。礼はちゃんとするからよ。」


「そう慌てるなジェイド、今日はその話もするつもりで来たんだ。とりあえず中に入れてくれないか?」


「おぉ、そうか、そいつはいい。歓迎するぜ、ルーシィもよく来たな。」


「2日ぶりねジェイド。娘さんは中に?」


「あぁ、今日はいるぜ。ちょうど急ぎのクラフトの依頼もねぇから、すぐに歓迎会といこうじゃねえか。」


店の奥の住居スペースに案内されると、そこには少し長めの金髪ウルフカットの女の子と明るい茶髪をヘアバンドで結わえた女性が待っていた。


「紹介するぜ。嫁さんのシレイラと、娘のアッシュだ。」


「あなたがフィルさんね、よろしく。」


「お父さんが、久しぶりに見込みのあるクラフターを見つけたって喜んでた。ウチのお店の商品を今後ともよろしくね。」


リビングで座っていた2人が席を立ち、それぞれ挨拶をしてくれる。


「よろしく。こっちはルーシィ、俺の旅の仲間だ。」


「旅の仲間で、将来のお嫁さんでもあるわ、よろしくねぇ。」


「なんだお前ら、まだ結婚してなかったのか?」


「まぁ、そこはあまり突っ込まんでくれ。」


ジェイドに茶化されながら、案内されたテーブルに座る。

シレイラとアッシュが食事の支度をするということでキッチンに向かい、ルーシィも手伝うためについていった。


「じゃあ、食事の前に商談と行こうじゃねえか。」


「気が早いな、まだ着いたばかりだというのに。」


「まごまごしてると食事ができちまうからな。こちらの要求はシンプルだ、さっきのライドアイテムの製造法を教えてくれないか。もちろん俺が対応できる限りの対価は払おう。」


「結論から言うと、レシピは渡してもいいし、費用もいらない。ただし、条件が2つある。」


「その条件は?」


「1つは、初期の段階からあのライドアイテム「スコーチャー」の製造法を拡散しないこと。おそらくスコーチャーは首都の交通事情に大きな影響を与える。最初から各商店が取り扱いすると価格競争が起きて値が崩れるってのもあるが、一番は一般人が普段使いの乗り物として使える程、首都の交通網が整っていないことが問題だ。」


「つまりどうゆうことだ?」


「流通して最初の内は少なからず事故が起きることが予想されるってことさ。整備や規制がある程度整うまでは、得意先に完成品を売るだけに留めてほしい。ほどほどに話題になってから、製造法を開示して流通させたい。」


「なるほどな、2つ目の条件は?」


「2つ目は俺からの依頼だ。いくつかアイテムをクラフトして収めてほしい。俺とルーシィの本職はハンターだ。戦闘で使用するいくつかの消耗品の代行を頼みたい。」


「店売りのじゃダメなのか?あくまで消耗品なんだろ?」


「売ってないのさジェイド、あんたの店にも。クラフトしてほしいのは弾丸だ、それも特注の。」


「特注の弾丸?」


「そう、特殊な効果を持たせた弾丸だ。レシピはこちらから提供する。ただし、こっちの製造法は完全に対外秘で頼む。誰に頼まれても絶対に開示しないで欲しい。」


「了解した。条件はそれだけでいいのか?」


「条件としてはそれだけだ。可能なら娘さんのアビリティも教えて欲しい。」


「分かった、ちょっと待っててくれ。」


ジェイドはそう言って席を立ち、部屋を出て行った。

5分ほどすると1枚の紙を持って戻ってきた。


「ほら、契約書だ。機密事項があるから書面に残しといたほうがお前も安心だろ?問題なければサインしてくれ。」


渡された契約書に目を通している間に、ジェイドはアッシュのアビリティについて教えてくれた。


「娘のアビリティは、追加の魔力を消費することで2回目以降の術式付与(エンチャント)で付加できる効果を任意に選択できるようになる能力だ。並列効果だろうが重複効果だろうが、問題ない。」


「術式付与(エンチャント)する能力を何らかの方法で選択できる能力だと予想していたが、付与する時点から選べるのか。すごい能力だ。」


契約書の内容は概ね俺が要求した内容に対する承諾と、機密事項に関する秘匿の約束を文面に記したものがしっかり記載されていた。

概ねと言ったのは、いくつか内容が追加されているためである。


1つ目の条件について、スコーチャーの販売によって得られた利益の2割を俺にマージンとして支払うこと、レシピの開示時期については俺の指示に準拠することが加えられている。


2つ目の条件には、弾丸の製造法が漏洩した際に賠償金を支払う旨と、俺たちの依頼品を優先着工してくれる内容が追記されている。


「随分と俺たちにメリットが出る条件が加えられてるけど、いいのか?」


「馬鹿野郎、分かってて言ってんだろ?お前の依頼は、言い換えれば俺の店にしばらくの間独占販売権と専属のクラフト依頼をくれるってことだ。しかも無料で、レシピまで提供してくれるってんじゃ、フィルたちにフィードバックがなけりゃ俺の気が済まねぇ。」


「ま、ジェイドがそれでいいなら好意はありがたく受けさせてもらおう。」


契約書にサインを書き、ジェイドに渡す。


「商談は終わったの?」


アッシュがキッチンから出てきて、飲み物をテーブルに置きながら尋ねてきた。

改めて見ると、ジェイドがかなり人間に近い容姿のワーウルフなだけあって、アッシュは狼のような耳があるだけでほぼ人間と言ってもいいレベルの容姿をしている。


「あぁ、ちょうど終わったところだ。フィルは俺たちが知らないようなアイテムの製造法を知ってる。オーダーメイドを頼まれたから、忙しくなるぞ?」


「お父さんも私も知らないアイテム?どんなの?。」


興味を示したアッシュに、いくつかのレシピを手渡す。


「早速だが、そのレシピのアイテムを作ってもらいたい。戦闘で消耗したら定期的に買いに来るから、レシピに記載した在庫は常に確保しておいてくれないか?」


「これって、銃用の弾のレシピ?でも、どれも普通の弾じゃないね。」


「そうだな、おそらく一般的に流通しているものじゃない。ジェイドにも言ったけど、今渡したアイテムの製造法は秘密で頼む。」


「フィルって何者?あたしもお父さんもクラフトレベルは高い方だと思うけど、こんなに私たちの知らないアイテムのレシピを知ってるなんて...」


「ジェイドとの取引が軌道に乗ってきたら教えてあげるさ。遅くなったけど、今日はお招きいただきありがとう。」


「招待したのはお父さんだけどね。じゃあ早く成果が出るように私も頑張らなくちゃ。」



その後はシレイラお手製の料理と、俺たちが持ち寄った酒とお土産を肴に親睦を深めることとなった。


この世界に転生して初めて大人数で宴会をした。

もう二度とハインヴィアで人と何かを祝うことなど出来ないと思っていた俺にとって、忘れられない日となった。


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