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Heinvia Story  作者: Frey
首都フィンデンスタイン
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17/27

狼の店主と錬金の授業

翌日、早速俺たちは再び中央部に行き、ホームに設置する家具を選定することにした。


「一応聞くが、まさか室内をパステルカラーでいっぱいにしたいみたいなことは言わないよな?」


「私にどんなイメージを持ってるのよそれ?モダンな雰囲気のホームなんだからシックな家具を選びたいと思ってるわ。」


「そうか、安心した。それじゃあ中央部の観光をしつつ、家具選びといこうか。」


今日は、1日中央部での買い物に費やすつもりだ。

ホームの家具を購入するのと同時に、これから住むことになる首都の一番の商業区域である中央部の作りを把握するためでもある。



ハインヴィアは多種族が混合する世界となっており、特に首都では様々な種族の人たちで雑多している。

この世界では、種族による個体差は存在するが、差別という概念はない。異なる種族間での婚姻も珍しくない。


そもそも、ゲーム時代のキャラクタークリエイトの時点でヒューマン以外の種族を選択することもできたので、プレイヤー間同士で異種間交流が盛んだったことからそこまで違和感はない。


種族ごとの個体差とは、エルフが長命で魔法適性が高いが力が弱かったり、ドワーフは力が強く知力が伸びにくかったりするといったものだが、絶対ではない。

中には前衛職向きのステータスをしたエルフや、賢者のドワーフなんかも存在する。



そんな、活気あふれる中央部を、ルーシィと一緒に散策する。

中央部のさらに中央、つまりこの都市の中心部には行政や公的機関の建物が集中し、そこから外側に円形に広がるように商業施設が広がっていく作りになっているようだ。


俺たちが今いる国「ガリアブルグ」は、共和制をとっているため首都のフィンデンスタインには王城がなく、もちろん国王も存在しない。

したがって、公的機関の施設というのは移住や転居、都市内での販売店登録などを行う、いわば役所の事を指す。


今はお役所のお世話になる必要もないので、南側寄りの商業施設を中心に俺たちは散策していた。



自分の部屋に置く家財選びに四苦八苦するルーシィを見ながら買い物をするうちに時間は過ぎ、昼食を取った俺たちはとある道具屋を訪問した。


「ルーシィ、ポーションの在庫はいくつある?」


「HPポーションはフィルからもらった分があるから、まだたくさんあるわ。それ以外のはそこまで持ってないわね」


「そうか、ならここで買っていくか。しばらくは各種ポーションをクラフトする余裕はないだろうから、ある程度在庫を確保して...」


「どうしたの?急に黙って、って高いわねこのお店!どのポーションも相場の2倍以上するじゃない?」


「いや、確かに値は張るが...これはすごい。ポーション1つ1つの品質が限りなく高い。」


「どうゆうこと?どれも同じ中級のMP回復ポーションじゃない?」


「等級のことじゃない。ポーションに付与された効果の事だ。ルーシィはクラフト経験が無いから仕方ないが、ここにあるポーションはすべて、付与効果が吟味されているんだ。」


「錬金で付与する効果は自分で選べるんじゃないの?」


「最初の1つ目はな。術式付与(エンチャント)は、1つのアイテムに最大3回まで効果を付加できるが、2つ目以降は任意で選ぶことは出来ずランダムで選ばれ、全く役に立たない効果が発現することも珍しくないんだ。」


「それってすごくない?ここにあるポーション全部、ポーションとして役に立つ効果が複数付与されたものだけ抽出してラインナップしてあるっていうこと?」


「そうだ。効果の再抽選も可能だが、そのたびに手順を踏みなおす必要があるし、都度魔力も消費する。」


錬金のノウハウを知っている物であれば、それがいかに大変な作業なのか分かる。

店内を見渡してみれば、このお店の製品は全体的に効果だが、どの販売品も例外なく同じように付与効果の質が高かった。


「兄ちゃんはクラフトもやってるのかい?」


店の奥から、ワーウルフの男性が声を掛けてきた。

かなり人間に近い容姿をしているが、毛皮のマントを羽織っているように見える背中の体毛と、鋭い爪が彼の種族を物語っている。


「えぇ、まだ駆け出しですが。」


「駆け出しでそこまで分かるんじゃ大したもんだ。最近は錬金が軽視されがちで、ポーションごときに2つも3つも付与効果はいらねぇって奴も多いが、それは間違いだ。その効果が生と死を分ける時だってあるんだからな。」


「その通りですね。消耗品は使用頻度が高いから安価なものを、ではなく、使用頻度が高いからこそ高品質なものを、と俺は思っています。」


「いいねぇ!久しぶりにいいクラフターに会ったぜ。俺はジェイド、この店の店主だ、あんたは?」


「よろしくお願いします、ジェイドさん。俺はフィルです。早速、いくつかポーションを購入してもいいですか?」


「ジェイドでいい、敬語もいらねぇ、苦手なんだ。もちろんいいが、その前に1つ問題を出してもいいか。」


「では遠慮なく。で、問題とは?」


「付与効果の選別ってのは、単に再付与の手順のめんどくささや魔力消費だけが問題だけじゃねぇ。もっと大きな問題があるんだが、それが何かわかるか?」


「重複効果と並列効果の付加難度の話か?」


「正解だ!しかしお前、本当にクラフト初心者か?。」


「クラフトをし始めたのは最近だよ。ただ、ちょっと予備知識があるだけさ。」


「ねぇフィル、重複効果と並列効果の付加難度って何?」


「言葉だと分かりづらいから、図に書いて説明しよう。」


ジェイドに紙とペンを借り、例として付加効果の異なるHPポーションを3つ書いた。


1. 回復量上昇・回復量上昇・回復量上昇

2. 回復量上昇・MP回復効果追加・回復効果が全体化

3. 回復力上昇・種族特攻(竜)・効果時間延長


「1が重複効果、2が並列効果、3が意味のない効果が付与されたポーションだ。重複効果は、その名の通り同名の効果が付与されている状態の事で、並列効果は“付与された効果同士で相互に影響する”状態のことを指す。」


「なるほど、2のケースで言えば、MP回復も付いて回復量も増えた効果がパーティー全体に適用されるようになるってことね。」


「そうゆうことだ。だが、この重複効果と並列効果は付与に成功するのが難しい。ランダムで抽出される効果に選ばれづらくなるからだ。3つすべて重複効果もしくは並列効果になるアイテムをクラフトできる確率は、限りなく少ないんだ。」


「錬金って奥が深いのねぇ。でも、そしたら重複と並列の効果を持った品物ばかり置かれてるジェイドさんのお店はやっぱりすごいわね。」


「ありがとよ、あんたも呼び捨てにしてくれ美人さん。」


「ふふ、あなたのたてがみも素敵よジェイド。私はルシエール、よろしくね。」



付与効果の再設定に素材は必要無いが、ポーションの1つにまで重複・並列の効果を付けているとは恐れ入る。

並々ならぬ時間と魔力を必要とするが、もしかしたら...


「なぁジェイド、ここの品はあんたがクラフトしてるか?。」


「いや、俺の娘がクラフトしたアイテムだ。...気付いたか?」


「あぁ、娘さんは何かクラフトに関する特殊なアビリティを持っているんだろ?」


「がっはは!正解だ。気に入ったぜフィル、お前にはうちの店の商品を3割引きで売ってやるよ。」


「そりゃあありがたい。何度も通わせてもらうことになりそうだ。」


「首都に越してきて1日目で、いいお店を見つけられたわね。」


「お前ら、昨日越してきたのか。なら、今度来た時に引っ越し祝いに1杯やろうじゃねえか。あいにく今日まで娘が素材の買い出しに行っちまってるから、そん時に改めて紹介しよう。」


「いいね、今度来るときは土産を持ってくるよ。」



そして、いくつかポーションを購入した後に俺たちはホームへ戻った。

この日出会った豪快な店主ジェイドとその娘との交流は、その後も長く続くことになる。


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