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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第二章 和雄は冒険者ギルドへ行き登録をする。

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第5話「南の森と新たな討伐依頼」

ジェノバの街に来てから数日が経過した。


柾木和雄は《銀の麦亭》を拠点に、冒険者としての生活を少しずつ軌道に乗せていた。薬草採取や街中での雑用をこなし、依頼の受け方や報酬の受け取りにも慣れてきたところだ。


この日も朝食を済ませた和雄は、冒険者ギルドへ向かっていた。


「おはようございます、フィーネさん」


受付へ声をかけると、長い金髪を揺らしたエルフの女性が顔を上げた。


「おはようございます、カズさん。今日も依頼をお探しですか?」


「はい。そろそろ採取以外の依頼も受けてみようかと思いまして」


フィーネは少し考えてから、受付の下に置いていた依頼書を取り出した。


「それでしたら、南の森の外縁部でゴブリンの目撃情報があります。Gランクでも受注できる討伐依頼ですが、いかがですか?」


「ゴブリンですか。こちらへ来た日に一匹倒していますから、相手の動きはある程度分かります」


「そうでしたね。ただし、ゴブリンは複数で行動することもあります。危険だと思ったら無理をせず撤退してください」


「分かりました。ちなみに、討伐証明は右耳でしたよね?」


「はい。一匹につき五ゴルで買い取ります。討伐数はギルドカードに記録され、ランク昇格の実績にもなりますよ」


和雄は頷いた。


GランクからFランクへ昇格するには、薬草採取などの実績に加えて、ゴブリン十匹の討伐が必要だと聞いている。


「それなら、少しずつ実績を積んでいきます」


「はい。では、こちらで受注処理を行いますね」


フィーネは依頼書に受付印を押し、ギルドカードを返してくれた。


「カズさん、どうかお気をつけて」


「ありがとうございます。行ってきます」


和雄は受付を離れ、南門へ向かった。


街を出ると、朝の爽やかな風が頬を撫でた。街道の向こうには、以前薬草採取を行った草原と、その先に広がる森が見えている。


「さて、今日は初めての正式な討伐依頼だな」


和雄は腰に差した刀を確認し、森へ向かって歩き始めた。


森の入口に到着すると、まず周囲の気配を探った。


日本でブレイドアーツを教えていた頃から、相手の動きを読むことには慣れている。さらに女神メシアから授かった身体能力のおかげか、以前よりも遠くの物音まで聞き取れるようになっていた。


「……右奥に何かいるな」


和雄は木々の間へ視線を向けた。


しばらくすると、茂みの向こうから三匹のゴブリンが姿を現した。いずれも粗末な棍棒を持ち、何やら騒がしく鳴き交わしている。


「三匹か。ちょうどいいな」


和雄は静かに刀の柄へ手を添えた。


ゴブリンたちはまだこちらに気づいていない。和雄は足音を抑えながら距離を詰めた。


そして、十分な間合いに入った瞬間、地面を蹴った。


「神速歩!」


余分な力を抜き、脚から腰、背骨へと動きを連動させる。身体強化魔法もわずかに加えたその一歩は、通常の人間では考えられない速度を生み出した。


一瞬で間合いを詰めた和雄は、先頭のゴブリンへ刀を振るった。


鋭い斬撃が走り、一匹目が倒れる。


「ギャッ!?」


残る二匹が驚いて振り返った。


しかし、和雄はすでに次の動作へ移っていた。


右側のゴブリンが棍棒を振り上げるより早く、刀の柄頭でその腕を弾く。相手の体勢が崩れたところへ半身になって踏み込み、刃を走らせた。


二匹目も倒れる。


最後の一匹は仲間が倒されたことに怯えたのか、背を向けて逃げ出した。


「逃がすと、また街道で誰かを襲うかもしれないな」


和雄は刀を構え直した。


「ファントムブリッツ!」


身体強化を加えた連続歩法によって、木々の間を滑るように駆け抜ける。


逃げていたゴブリンの前方へ回り込むと、和雄は素早く刀を振り抜いた。


三匹目が地面へ崩れ落ちる。


「……よし、終わりだな」


和雄は周囲を警戒し、ほかに魔物がいないことを確認してから刀を鞘へ戻した。


目の前には、いつもの半透明の表示が浮かび上がっていた。


【魔物討伐】


ゴブリン三匹を討伐しました。


経験値を獲得しました。


《経験値2倍》が適用されました。


「経験値二倍か。改めて考えると便利な能力だな」


和雄は苦笑しながら表示を閉じた。


続いて、倒したゴブリンをアイテムボックスへ収納する。


「これで討伐実績は四匹。あと六匹で十匹になるのか」


もっとも、討伐数だけ満たせば昇格できるわけではない。採取実績も必要になるため、今後も地道に依頼を受けるつもりだった。


その後も和雄は森の外縁部を歩き、周囲の安全を確認していった。


途中、薬草を見つけたので数本採取し、アイテムボックスへ収納する。


「せっかく来たんだし、こういうものも集めておこう」


しばらく進むと、遠くから複数の足音が聞こえてきた。


和雄は足を止め、近くの木の陰へ身を寄せた。


現れたのは、さらに四匹のゴブリンだった。


「おっと、またいたか」


四匹は周囲を警戒する様子もなく、森の中を歩いている。


和雄は少し考えてから、刀を抜いた。


「今度は普通に正面からいってみるか」


木陰から姿を現すと、ゴブリンたちが一斉にこちらを向いた。


「ギャギャッ!」


二匹が棍棒を振り上げて突進してくる。


和雄は最初の一撃をかわし、相手の側面へ回り込んだ。


「ブレイドクラッシャー!」


上段から振り下ろした刀の背へ、左手の掌底を添えて威力を増す。強烈な斬撃を受けたゴブリンは、そのまま地面へ倒れた。


続く一匹には、身体を半回転させながら刀を振るう。


さらに三匹目の攻撃を刀の柄頭で弾き、体勢を崩したところへ突きを放った。


最後の一匹が逃げようとしたが、和雄は神速歩で距離を詰め、一撃で仕留めた。


「ふう……七匹か。思ったより多かったな」


和雄は刀を鞘へ収めた。


戦闘そのものに大きな苦労はなかったが、油断は禁物だ。ゴブリン程度なら問題なくても、森の奥にはもっと強い魔物がいる可能性もある。


「今日はこのくらいにしておこう」


和雄は四匹のゴブリンを収納し、ジェノバの街へ戻ることにした。


昼過ぎに冒険者ギルドへ到着すると、受付ではフィーネが書類を整理していた。


「ただいま戻りました」


和雄が声をかけると、フィーネは顔を上げた。


「あっ、カズさん。お帰りなさい。ご無事で何よりです」


「ありがとうございます。ゴブリンを七匹討伐したので、確認をお願いします」


「……七匹ですか?」


フィーネは思わず聞き返した。


「はい。最初に三匹、そのあと四匹の群れに遭遇しました」


「そ、そうだったんですね……」


フィーネは少し驚いた様子だったが、すぐに仕事の表情へ戻った。


「それでは、解体場で討伐証明を確認していただきましょう」


和雄は解体場へ向かい、ゴブリン七匹を作業台へ並べた。


担当の男性職員は、思わず目を丸くした。


「おいおい、坊主。また随分と持ってきたな!」


「たまたま群れに遭遇しまして」


「たまたまって……。しかも、どれも綺麗に倒してるじゃねえか」


男性職員は一匹ずつ確認し、討伐証明となる右耳を数えた。


「七匹分で三十五ゴルだ。間違いないな」


「ありがとうございます」


和雄は銅板三枚と銅貨五枚を受け取った。


その後、受付へ戻って討伐報告を済ませると、フィーネがギルドカードへ実績を記録してくれた。


「これでカズさんのゴブリン討伐実績は合計八匹ですね」


「えっ、八匹ですか?」


「はい。最初に持ち込まれた一匹も記録されていますから」


「ああ、そうでした。あと二匹ですね」


和雄が笑うと、フィーネは少し困ったように微笑んだ。


「カズさん……本当に新人冒険者なんですよね?」


「はい。登録したばかりですよ?」


「そうですよね……」


フィーネは何か言いたそうだったが、結局それ以上は尋ねなかった。


和雄はそんな彼女の様子に気づかず、次の依頼について考えていた。


「明日は薬草採取にしようかな。採取実績も増やしたいですし」


「ええ。それがよろしいと思います」


フィーネは安心したように頷いた。


こうして和雄は、初めての正式な討伐依頼を無事に達成した。


本人にとっては、少し剣術を使っただけの一日だった。


しかし、登録して間もないGランク冒険者が単独でゴブリン七匹を討伐したという報告は、ギルド職員たちの間で小さな話題となり始めていた。

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