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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第二章 和雄は冒険者ギルドへ行き登録をする。

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第1話「冒険者としての第一歩」

ジェノバの街に到着し、冒険者ギルドへの登録を済ませた柾木和雄は、受付のフィーネから渡されたギルドカードを眺めていた。


灰色のカードには、名前と冒険者ランクが刻まれている。


「これで俺も冒険者か。なんだか実感が湧かないな」


和雄が小さく笑うと、受付の向こうにいるフィーネも微笑んだ。


「ふふっ。最初は皆さん、そんな感じですよ。ですが、依頼を一つ達成すれば、きっと実感できると思います」


「なるほど。それじゃあ、早速何か受けてみようかな」


「はい。カズさんはGランクですので、まずは採取依頼がおすすめです。魔物の討伐も可能ですが、最初から無理をする必要はありませんからね」


フィーネはそう言いながら、受付の横に置かれた依頼書を数枚取り出した。


和雄は差し出された依頼書に目を通す。


薬草採取、薬用果実の収集、街中での荷物運び。どれも新人冒険者が受けられる仕事らしい。


「薬草採取か。そういえば、森を歩いていたときにも、それっぽい植物があったな」


「そうなんですか?」


「ええ。ただ、どれが薬草なのか分からなかったので、触らずに通り過ぎました」


その言葉に、フィーネは感心したように頷いた。


「それは正しい判断ですね。森には毒草もありますから、知らない植物をむやみに採取するのは危険です」


フィーネは棚から一冊の薄い冊子を取り出した。


「こちらは初心者向けの薬草図鑑です。ギルド内でしたら自由に閲覧できますので、依頼を受ける前に確認しておくといいですよ」


「ありがとうございます。助かります」


和雄は冊子を受け取り、近くの空いているテーブルへ移動した。


ページを開くと、植物の絵と特徴が丁寧に記されていた。葉の形や茎の色、生育する場所まで説明されている。


「へえ、結構しっかりした図鑑だな」


和雄は感心しながら読み進めた。


薬草は主に森の入口付近や日当たりのよい草地に生えており、根を傷つけずに採取することが推奨されているらしい。


「なるほど。根ごと引き抜かず、必要な部分だけ採ればいいのか」


和雄は図鑑の内容を頭に入れながら、ふと女神メシアから授かった鑑定能力を思い出した。


試しに冊子へ意識を向けてみる。


【鑑定】


名称:初心者用薬草図鑑


分類:書物


内容:アルヴェイン王国内で一般的に採取される薬草と毒草の解説。


「おお、本当に何でも鑑定できるんだな」


和雄は小さく呟いた。


これなら森で見つけた植物も鑑定できるかもしれない。とはいえ、能力だけに頼って知識を身につけないのも問題だろう。


和雄は図鑑を最後まで確認してから、受付へ戻った。


「フィーネさん、薬草採取の依頼を受けたいんですが」


「はい。薬草採取ですね。今回は十束の納品依頼があります。報酬は銀貨ではなく銅貨でのお支払いになりますが、よろしいですか?」


「もちろんです。まずは仕事に慣れることが大切ですから」


フィーネは嬉しそうに微笑んだ。


「それでは、こちらで受注処理を行いますね」


フィーネが依頼書に受付印を押している間、和雄は気になっていたことを尋ねた。


「そういえば、魔物の素材も買い取ってもらえるんですよね?」


「はい。討伐証明部位や利用可能な素材を買い取っています。何かお持ちなんですか?」


「実は、街へ来る途中でゴブリンに襲われまして。一匹倒したんですが、そのまま持ってきたんです」


「えっ、ゴブリンを?」


フィーネは少し驚いた表情を浮かべた。


「お怪我はありませんでしたか?」


「はい。特に問題ありませんでした」


和雄が答えると、フィーネは安心したように胸を撫で下ろした。


「それならよかったです。ゴブリンは一匹ならそれほど危険ではありませんが、群れで襲ってくることもありますから、十分に気をつけてくださいね」


「分かりました」


「それと、ゴブリンの討伐証明は右耳になります。一つ銅貨五枚、つまり五ゴルで買い取っています」


「なるほど。じゃあ、持ってきたゴブリンはどうすればいいですか?」


「解体場へ持ち込んでいただければ、職員が確認しますよ。場所をご案内しましょうか?」


「お願いします」


フィーネは隣の受付職員へ一声かけると、和雄をギルドの裏手へ案内した。


建物の奥には広い作業場があり、数人の職員が魔物の素材を仕分けていた。


「こちらが解体場です。魔物の死体を持ち込む場合は、ここでお願いします」


「分かりました」


和雄は空いている作業台を指さした。


「ここに出しても大丈夫ですか?」


「はい、どうぞ」


和雄がアイテムボックスからゴブリンを取り出すと、作業場にいた男性職員が目を丸くした。


「おいおい、坊主。空間収納持ちなのか?」


「ええ、まあ」


「珍しいな。それに、このゴブリンは傷が少ない。随分きれいに倒したもんだ」


男性は感心しながら死体を確認した。


「討伐証明の右耳は問題ないな。五ゴルだ」


職員から銅貨五枚を受け取った和雄は、初めて手にする異世界の硬貨を興味深そうに眺めた。


「これがゴルか」


硬貨には王国の紋章らしき模様が刻まれていた。


日本円に換算すると五百円ほどだが、自分の力で得た初めての報酬だと思うと、不思議と嬉しかった。


「ありがとうございます」


和雄が礼を言うと、男性職員は笑った。


「おう。また魔物を倒したら持ってこいよ」


解体場を出た和雄は、フィーネと一緒に受付へ戻った。


「カズさん、これから薬草採取へ向かわれるんですよね?」


「はい。そのつもりです」


「でしたら、街の南側にある草地がおすすめです。森の奥へ入らなくても薬草が見つかりますから」


「南側ですか。ちょうど俺が来た方向ですね」


「そうなんですね。ただし、森の中にはゴブリンや森狼が出没しますので、無理はしないでください」


フィーネは少し心配そうな表情を浮かべた。


和雄は笑顔で頷いた。


「ありがとうございます。気をつけます」


ギルドを出ると、街には昼前の賑わいが広がっていた。


露店から漂う焼きたてのパンの香りに、和雄のお腹が小さく鳴った。


「そういえば、朝から何も食べてなかったな」


和雄は近くのパン屋へ立ち寄り、値段を確認した。


店先には丸いパンや細長いパンが並んでいる。


「すみません。このパンを一つください」


店主の女性は笑顔でパンを袋に入れた。


「はいよ。三ゴルだよ」


和雄は銅貨三枚を渡し、焼きたてのパンを受け取った。


「ありがとうございます」


一口かじると、小麦の香ばしさが口いっぱいに広がった。


「うん、美味しいな。ちょっと硬めだけど、これはこれで悪くない」


日本で料理を仕事にできるほどの腕を持っていた和雄は、つい食材や調理方法を考えてしまう。


この世界の食文化にも興味が湧いてきた。


「そのうち、自分でも料理を作ってみたいな」


パンを食べ終えた和雄は、南門へ向かって歩き始めた。


門番にギルドカードを提示すると、特に問題なく街の外へ出ることができた。


目の前には緑豊かな草原が広がり、その先には先ほど通ってきた森が見えている。


「さて、初めての正式な依頼だ」


和雄は軽く身体を伸ばし、草原へ足を踏み出した。


目的は薬草十束の採取。


決して派手な仕事ではないが、冒険者として生活するためには大切な第一歩だった。


「まずは地道に稼いで、宿代を確保しないとな」


そう呟いた和雄は、女神から授かった鑑定能力を意識しながら、足元の草花へ目を向けた。


異世界エルディアでの冒険者生活は、まだ始まったばかりだった。

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