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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第三章 Gランク冒険者仕事を開始する。

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第12話「Fランク冒険者、初めての依頼」

Fランクへ昇格した翌朝、柾木和雄は宿屋《銀の麦亭》で朝食を済ませると、冒険者ギルドへ向かった。


ジェノバの街は今日も活気に満ちている。商人の荷車が石畳を進み、露店からは焼きたてのパンの香りが漂っていた。


「さて、今日はFランクになって初めての依頼だな」


和雄は冒険者カードを取り出し、そこに刻まれた文字を眺めた。


《冒険者ランク:F》


昨日まではGランクだった表示が変わっている。たった一文字の違いだが、和雄にとっては冒険者として積み重ねてきた努力の証だった。


ギルドへ到着すると、受付ではフィーネが書類を整理していた。


「おはようございます、フィーネさん」


「おはようございます、カズさん。今日はFランクとして初めてのお仕事ですね」


「はい。せっかくなので、今までとは少し違う依頼を受けてみようと思っています」


フィーネは嬉しそうに微笑んだ。


「それでしたら、西街道の荷運び護衛補助はいかがでしょう? ちょうど今朝、新しい依頼が入りました」


「護衛補助ですか?」


「はい。ジェノバの西にあるデフ村へ物資を運ぶ商人の護衛です。Fランク以上が対象で、経験のある冒険者が同行するので、新人の方にも向いています」


和雄は興味を持った。


デフ村はジェノバから馬車で一日ほどの距離にある村だ。西側の街道については何度か依頼を受けているが、村まで足を延ばしたことはない。


「いいですね。詳しく教えていただけますか?」


フィーネは依頼書を取り出した。


「依頼主は商人のベルクさん。食料品や生活用品をデフ村へ届ける予定です。護衛はDランク冒険者一名とFランク冒険者一名の二人体制で、報酬は往復で百二十ゴル。村で一泊し、明日の夕方に帰還する予定です」


「なるほど。二日間の依頼なんですね」


「はい。宿泊場所と食事は依頼主が用意してくださいます」


和雄は少し考えてから頷いた。


「それなら、ぜひ受けてみたいです」


「分かりました。では、受注手続きを進めますね」


フィーネが書類を整えていると、背後から聞き覚えのある声がした。


「おう、カズ! 今日も元気そうだな!」


振り返ると、そこにはDランク冒険者のガレスが立っていた。


「ガレスさん、おはようございます」


「おう。Fランク昇格、おめでとう!」


「ありがとうございます」


ガレスは豪快に笑った。


「それで、今日は何の依頼を受けるんだ?」


「西街道の荷運び護衛補助です。デフ村まで行くそうで」


「おっ、それなら俺と一緒だな!」


「えっ?」


和雄が驚くと、ガレスは依頼書を見せた。


「俺が今回の護衛責任者だ。相方のFランク冒険者を探してたんだが、まさかお前が来るとはな」


「そうだったんですか。よろしくお願いします!」


「おう! こっちこそよろしく頼むぜ!」


フィーネは二人の様子を見て、安心したように微笑んだ。


「ガレスさんが一緒なら安心ですね。ですが、お二人とも油断はしないでください」


「分かってるって。ちゃんと連れて帰るさ」


ガレスが胸を叩くと、フィーネは小さく笑った。


依頼の手続きを終えた二人は、西門近くの集合場所へ向かった。


そこには二台の荷車が停まっており、数人の商人が荷物を確認していた。


その中から、恰幅のよい中年男性が歩み寄ってきた。


「おお、ガレスさん! お待ちしていました!」


「ベルクさん、今回もよろしくな」


「こちらこそ。そちらの少年は?」


「今回の護衛補助を担当するカズだ。昨日Fランクへ昇格したばかりだが、腕は確かだぜ」


和雄は丁寧に頭を下げた。


「初めまして。冒険者のカズです。よろしくお願いします」


「おお、礼儀正しい若者ですな。私は商人のベルクと申します。二日間、よろしくお願いします」


ベルクはにこやかに握手を求めた。


和雄もその手を握り返した。


出発の準備が整うと、荷車はゆっくりと西門を抜けた。


街道の両側には広大な農地が広がり、遠くには緩やかな丘陵地帯が見える。


和雄は荷車の横を歩きながら、周囲へ視線を巡らせた。


「護衛の仕事って、思っていたより周囲を見ることが大切なんですね」


和雄が呟くと、ガレスが頷いた。


「そうだ。魔物を倒すだけが護衛じゃねえ。危険を早く見つけて、依頼主を無事に目的地へ送り届ける。それが一番大事なんだ」


「なるほど」


「それに、荷車を守りながら戦うのは普通の討伐依頼とは違う。敵を追いかけすぎるなよ」


「はい。覚えておきます」


和雄は真剣な表情で頷いた。


昼頃になると、一行は街道沿いの休憩所で足を止めた。


ベルクが用意していたパンと干し肉を分けてくれたため、和雄たちは簡単な昼食を取った。


「カズ君は、ジェノバに来てどれくらいになるんですかな?」


ベルクが尋ねた。


「まだそれほど長くありません。冒険者になったばかりですから」


「そうでしたか。若いのにしっかりしていますな」


「ありがとうございます」


和雄が笑顔で答えると、ベルクも嬉しそうに笑った。


休憩を終え、一行は再びデフ村へ向けて出発した。


街道沿いの農地が少なくなり、小さな林が増えてきた頃だった。


和雄はふと、木々の間に何かが動いた気配を感じた。


「……ガレスさん」


「ああ、俺も気づいた」


ガレスは小さく頷き、荷車の前方へ視線を向けた。


林の奥から、低いうなり声が聞こえてくる。


「グルルル……」


やがて、灰色の毛並みを持つ三匹の森狼が姿を現した。


「森狼か。ベルクさん、荷車を止めてください!」


ガレスが声を上げると、ベルクはすぐに御者へ指示した。


二台の荷車が停止し、商人たちは身を寄せ合った。


和雄は刀へ手を添えた。


「ガレスさん、どう動きますか?」


「俺が前の二匹を引きつける。お前は右側の一匹を頼む。ただし、荷車から離れるな」


「了解です」


森狼たちは唸り声を上げながら、じりじりと距離を詰めてきた。


最初の一匹が飛びかかると、ガレスは剣を構えて正面から迎え撃った。


「来い!」


鋭い爪が振り下ろされる。


ガレスは身体をひねって攻撃をかわし、剣で反撃した。


一方、和雄の前にも森狼が迫っていた。


「グルアッ!」


森狼が大きく跳躍する。


和雄は相手の動きを見極め、半歩だけ横へ移動した。


そして、刀を抜く。


「――リバーススティンガー!」


和雄は刀の柄で森狼の前脚を受け流し、身体を半回転させながら鋭い突きを放った。


刀の切っ先が森狼の急所を捉える。


森狼は短い悲鳴を上げ、その場に倒れた。


「よし!」


和雄はすぐにガレスのほうへ視線を向けた。


ガレスは一匹目を倒していたが、残る一匹が荷車の側面へ回り込もうとしていた。


「ガレスさん、右へ回ります!」


「おう、頼む!」


和雄は神速歩で間合いを詰めた。


しかし、荷車の近くで大きく刀を振るえば、積み荷や馬を傷つける可能性がある。


和雄は動きを抑え、森狼の進路へ先回りした。


「こっちだ!」


森狼が和雄へ飛びかかる。


その瞬間、和雄は身体を沈め、下段から鋭い斬撃を繰り出した。


「――タイガーブレイカー!」


低い位置から跳ね上がる刀身が、森狼を斬り伏せた。


三匹の森狼が倒れると、街道には静けさが戻った。


ガレスは剣を鞘へ収め、和雄へ歩み寄った。


「やるじゃねえか、カズ。荷車を守りながら、きっちり仕留めたな」


「ありがとうございます。ガレスさんが前を押さえてくれたおかげです」


「はははっ! 相変わらず謙虚だな!」


ガレスは笑いながら、和雄の肩を叩いた。


ベルクも荷車から降りてきた。


「お二人とも、ありがとうございます! おかげで荷物も無事です」


「いえ、これが仕事ですから」


和雄は笑顔で答えた。


森狼の討伐証明となる牙を確認し、素材をアイテムボックスへ収納したあと、一行は再び出発した。


夕方になる頃、遠くに小さな村が見えてきた。


木製の柵に囲まれた集落で、周囲には畑や牧草地が広がっている。


「見えてきたぞ。あれがデフ村だ」


ガレスが指さした。


「へえ、落ち着いた雰囲気の村ですね」


「そうだな。ジェノバほど大きくはねえが、商人の行き来も多い村だ」


一行が村の入口へ到着すると、見張りの男性がベルクへ声をかけた。


「おお、ベルクさん! 今回も無事に着いたんだな!」


「ええ。途中で森狼が出ましたが、護衛の方々のおかげで問題ありませんでした」


「そりゃよかった!」


村人たちは荷車を迎え入れ、荷下ろしの準備を始めた。


和雄は周囲を見渡しながら、小さく息を吐いた。


「無事に着けてよかった」


ガレスが頷いた。


「ああ。だが、護衛依頼は帰るまでが仕事だ。明日も気を抜くなよ」


「はい!」


和雄は力強く答えた。


その夜、一行はベルクが手配した村の宿で休むことになった。


夕食を終えた和雄は、宿の窓から静かな村の景色を眺めていた。


ジェノバとは違い、夜になると人通りも少なく、遠くから虫の声が聞こえてくる。


「こういう村もいいな……」


和雄は穏やかな夜風を感じながら、今日の護衛依頼を振り返った。


魔物を倒すことだけが冒険者の仕事ではない。


誰かの生活を守り、安全に旅を続けられるよう手助けすることも、大切な役割なのだ。


「明日も、しっかり頑張ろう」


和雄はそう呟き、明日の帰路に備えて休むことにした。

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