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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第三章 Gランク冒険者仕事を開始する。

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第11話「Fランク昇格と新たな出会い」

翌朝、柾木和雄は宿屋《銀の麦亭》の食堂で朝食を済ませると、いつものように冒険者ギルドへ向かった。


ジェノバの街は朝から活気に満ちていた。中央広場では商人たちが露店を開き、焼きたてのパンや新鮮な野菜を買い求める人々が行き交っている。


和雄はそんな光景を眺めながら、昨日クラリスから聞いた話を思い出していた。


「今日、Fランクへの昇格が決まるんだったな」


異世界へ来てから、まだそれほど長い時間が経ったわけではない。それでも薬草採取や魔物討伐など、さまざまな依頼を経験してきた。


冒険者として少しずつ成長していることが、和雄には嬉しかった。


ギルドへ到着すると、受付ではフィーネが書類を整理していた。


「おはようございます、フィーネさん」


「おはようございます、カズさん。ちょうどよかったです。お待ちしていました」


フィーネは嬉しそうに微笑んだ。


「実は、カズさんにお知らせがあるんです」


「もしかして、昇格の件ですか?」


「はい。昨日、ギルドマスターから正式に承認が下りました」


フィーネは机の引き出しから一枚の書類を取り出した。


「柾木和雄さん。これまでの依頼達成記録と討伐実績が認められ、本日付でGランクからFランクへの昇格が決定しました。おめでとうございます!」


「ありがとうございます!」


和雄は思わず笑顔になった。


「ようやく一つ上のランクですね」


「はい。カズさんは登録から昇格までがかなり早いほうですよ」


「そうなんですか?」


「ええ。もちろん、実力だけでなく、依頼を丁寧にこなしてくださったことも評価されています」


フィーネは冒険者カードを受け取り、受付奥の魔道具へ通した。


淡い光がカードを包み、表面に刻まれたランク表示が変化する。


《冒険者ランク:F》


「はい。これで更新完了です」


和雄はカードを受け取り、嬉しそうに眺めた。


「おお、本当にFランクになってる」


「ふふっ。これからはFランク向けの依頼も受けられますよ」


そのとき、隣の受付からミーニャが顔を出した。


「カズくん! 昇格したんだって?」


「はい。おかげさまでFランクになりました」


「おめでとう!」


ミーニャは嬉しそうに尻尾を揺らした。


「やっぱりカズくんはすごいね! ボク、すぐに昇格すると思ってたよ!」


「ありがとうございます。でも、まだFランクですから」


「そのうち、もっと上に行っちゃいそうだけどね!」


ミーニャが笑うと、フィーネも頷いた。


「そうですね。でも、焦らず一つずつ経験を積んでくださいね」


「はい。これからもよろしくお願いします」


和雄は二人に頭を下げた。


昇格の手続きを終えた和雄は、依頼掲示板へ向かった。


Fランクになったことで、これまで受けられなかった依頼も選べるようになっている。


「へえ、護衛の補助や少し遠くまでの採取依頼もあるんだな」


和雄が興味深そうに依頼書を眺めていると、背後から女性の声が聞こえてきた。


「ねえ、ちょっといい?」


振り返ると、そこには銀色の髪を持つエルフの少女が立っていた。


整った顔立ちに、澄んだ瞳。背中には弓を背負い、腰には短剣を携えている。


和雄は初めて見る少女に、少し驚きながら答えた。


「はい。何でしょう?」


少女は和雄の顔をじっと見つめた。


「あんたが、最近噂になってる新人冒険者?」


「噂……ですか?」


「そう。ゴブリンを何匹も倒して、オークまで一撃で仕留めたっていう」


和雄は少し困ったように笑った。


「ええと、オークを倒したのは確かですけど……。そんなに噂になってるんですか?」


「なってるわよ。特にギルドの酒場じゃ、最近あんたの話をよく聞くもの」


少女は腕を組み、興味深そうに和雄を見つめた。


「ふうん……。思ってたより普通の人族の男の子なのね」


「そうですか?」


「うん。もっと筋肉だらけの大男かと思ってた」


和雄は思わず笑ってしまった。


「ははは。残念ながら、そんなに大きくありませんね」


少女も小さく笑った。


「あたしはリューネ。Bランク冒険者よ。リュネって呼んでくれていいわ」


「俺は柾木和雄です。カズって呼んでください」


「カズね。よろしく」


リューネは軽く手を差し出した。


和雄もその手を握る。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


こうして、和雄とリューネは初めて言葉を交わした。


リューネは以前から、ギルドで和雄の姿を何度か見かけていた。


受付でフィーネやミーニャと楽しそうに話している様子や、依頼を終えて戻ってくる姿を遠くから眺めていたのだ。


しかし、直接話しかける機会はなかった。


今日になってようやく、少しだけ興味が勝ったのである。


「それで、カズはどんな武器を使ってるの?」


リューネが尋ねると、和雄は腰に差した刀へ手を添えた。


「刀です。俺の故郷で使われている武器ですね」


「刀……?」


リューネは興味深そうに目を細めた。


「細身の剣みたいだけど、少し形が違うのね」


「はい。片側に刃があって、斬ることを中心に作られています」


「へえ……。あたし、そんな武器は初めて見たわ」


リューネは刀をじっと見つめた。


「それでオークを一撃で倒したの?」


「はい。相手の動きを見て、間合いへ入って斬っただけですよ」


「……だけ、ね」


リューネは少し呆れたように笑った。


「普通のFランク冒険者は、そんな簡単にオークを倒せないわよ」


「そうなんですか?」


「そうよ。オークは力も強いし、皮膚も厚い。油断すれば、経験のある冒険者だって怪我をするわ」


和雄は真剣な表情で頷いた。


「なるほど。気をつけます」


その素直な反応に、リューネは少し驚いた。


自分の実力を誇示するわけでもなく、忠告を素直に受け入れる。


噂で聞いていた印象とは、少し違う少年だった。


「……変わった人ね、あんた」


「よく言われます」


和雄が笑うと、リューネもつられて微笑んだ。


そのとき、受付からフィーネの声が聞こえてきた。


「カズさーん!」


和雄が振り返ると、フィーネが手を振っていた。


「先ほどの昇格書類について、確認していただきたいことがあります!」


「分かりました!」


和雄はリューネへ向き直った。


「すみません。ちょっと受付へ行ってきます」


「うん。行ってらっしゃい」


「それじゃあ、また」


和雄は軽く手を振り、受付へ向かった。


リューネはその背中を見送りながら、小さく呟いた。


「……カズ、か」


最初は単なる好奇心だった。


しかし、実際に話してみると、思っていた以上に自然体で話しやすい相手だった。


「ちょっと面白いかも」


リューネは小さく笑い、依頼掲示板へ視線を戻した。


一方、受付へ戻った和雄は、フィーネから昇格に伴う注意事項を説明されていた。


「Fランクからは受けられる依頼が増えますが、討伐対象も少しずつ強くなります。必ず依頼内容を確認してくださいね」


「はい。分かりました」


「それと、先ほどリューネさんとお話しされていましたね」


フィーネが何気なく尋ねる。


「はい。初めてお話ししました。Bランク冒険者だそうですね」


「ええ。リューネさんは弓と魔法を得意とする、とても優秀な冒険者なんですよ」


「そうなんですね。今度、冒険の話を聞いてみたいです」


和雄がそう言うと、フィーネは少しだけ複雑そうな表情を浮かべた。


しかし、すぐにいつもの笑顔へ戻る。


「ふふっ。きっと、いろいろ教えてくださると思いますよ」


和雄は頷き、改めて依頼掲示板へ向かった。


Fランクへの昇格。


そして、新たな冒険者との出会い。


異世界での生活は、少しずつ広がりを見せ始めていた。


その日の夕方、ギルドの二階では副ギルドマスターのシルヴィアが報告書を確認していた。


「カズさん、無事にFランクへ昇格されたのですね」


隣にいたクラリスが頷く。


「はい。本人も喜んでいました」


「それはよかったです」


シルヴィアは微笑んだ。


「これから、どんな成長を見せてくださるのでしょうね」


窓の外では、夕日がジェノバの街を赤く染めていた。


和雄の冒険者としての物語は、まだ始まったばかりだった。

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