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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第三章 Gランク冒険者仕事を開始する。

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第5話「南の森の警戒と新たな依頼」

翌朝、柾木和雄は《銀の麦亭》の食堂で朝食を取っていた。焼きたてのパンに野菜たっぷりのスープ、薄く焼いた肉が添えられている。異世界へ来てから数日が経ち、こうした朝の時間にもすっかり慣れてきた。


「カズさん、今日はどうされるんですか?」


食器を運んできたマリアが尋ねると、和雄はパンをちぎりながら答えた。


「いつもどおりギルドへ行くつもりです。ただ、昨日の調査で南の森にオークがいることが分かったので、今日は別の場所で依頼を受けようかと思っています」


「それがいいと思います。最近、南門を利用する商人さんたちも少し心配しているみたいですから」


マリアはそう言って、空になった皿を片づけた。


和雄は朝食を終えると、宿を出て冒険者ギルドへ向かった。


中央広場を通り抜け、南西地区へ進む。朝の市場には新鮮な野菜や果物が並び、商人たちの威勢のいい声が響いていた。和雄は途中で赤い実をつけた果物を一つ購入し、歩きながらかじった。


甘酸っぱい果汁が口の中に広がる。


「うん、美味いな。これなら料理にも使えそうだ」


日本で料理をしていた頃の癖で、珍しい食材を見ると、つい調理方法を考えてしまう。異世界にはまだ知らない食材が数多くあるため、市場を歩くだけでも楽しかった。


ギルドへ到着すると、いつもより多くの冒険者が依頼掲示板の前に集まっていた。


「南の森への立ち入り注意か……」


「オークが複数確認されたらしいぞ」


「しばらくは別の場所で仕事を探すか」


そんな会話が聞こえてくる。


和雄が掲示板へ近づくと、南の森に関する注意書きが貼り出されていた。外縁部でオークの移動が確認されたため、単独での深入りを控えるよう呼びかける内容だった。


「昨日の報告がもう反映されているんだな」


和雄が感心していると、背後から明るい声がした。


「おはよう、カズくん!」


振り返ると、猫耳をぴんと立てたミーニャが立っていた。


「おはようございます、ミーニャさん」


「昨日はオークを倒したんだって? ボク、報告書を見てびっくりしちゃったよ!」


ミーニャは尻尾を左右に揺らしながら、楽しそうに笑った。


「ガレスさんと一緒だったので、安心して戦えました」


「それでもすごいよ。あっ、そうだ。今日はフィーネがカズくんに紹介したい依頼があるって言ってたよ」


「俺にですか?」


「うん。受付で待ってるから、行ってみて!」


和雄が礼を言って受付へ向かうと、フィーネが書類を整理していた。


「おはようございます、フィーネさん」


「おはようございます、カズさん。昨日はお疲れさまでした。体調はいかがですか?」


「問題ありません。ぐっすり眠れました」


「それなら安心しました」


フィーネは微笑むと、一枚の依頼書を差し出した。


「実は、カズさんにちょうどよさそうな依頼があるんです。西門の外にある農地周辺で、森鼠が増えているそうなんですよ」


「森鼠ですか。以前にも討伐しましたね」


「はい。今回は畑の作物が荒らされているので、農家の方から駆除の依頼が出ています。討伐数に応じた買い取りとは別に、現地の被害を確認して報告していただく内容です」


和雄は依頼書に目を通した。


農地周辺の森鼠討伐と被害状況の確認。依頼達成報酬は四十ゴルで、討伐証明の尻尾は通常どおり一匹三ゴルで買い取られる。


「これなら俺にもできそうですね」


「カズさんなら大丈夫だと思います。ただし、農地の近くには住民の方もいますので、戦う場所には注意してください」


「分かりました。畑を壊したら本末転倒ですからね」


和雄が答えると、フィーネは安心したように頷いた。


「それでは、依頼を受理します。お気をつけて」


和雄は依頼書を受け取り、西門へ向かった。


西門の外には街道が延び、その両側に畑や牧草地が広がっていた。農夫たちが畑を耕し、荷車を引く馬がのんびりと歩いている。


依頼書に記された農地へ到着すると、一人の年配の男性が畑の脇で困った顔をしていた。


「すみません。冒険者ギルドから来ました、カズといいます」


和雄が声をかけると、男性は顔を上げた。


「おお、冒険者さんか。待っていたよ。わしはこの畑を管理しているトーマスだ」


「森鼠が出ていると聞きました。詳しい状況を教えてもらえますか?」


「ああ。ここ数日、畑の端にある根菜を食い荒らされていてな。夜だけじゃなく、昼間にも姿を見るようになったんだ」


トーマスは畑の西側を指さした。


そこには掘り返された土と、かじられた野菜が散らばっていた。


「なるほど。確かに被害が出ていますね」


和雄はしゃがみ込み、地面に残された足跡を確認した。


小さな爪痕がいくつも続いている。どうやら森鼠が頻繁に出入りしているらしい。


「この先の林から来ているみたいですね」


「そうなんだ。できれば畑に入ってくる前に追い払ってほしいんだが……」


「分かりました。林の入口で様子を見てみます」


和雄はトーマスにそう告げると、畑の西側にある小さな林へ向かった。


木々の間には獣道ができており、ところどころに森鼠の足跡が残っていた。


「さて、どこにいるかな」


和雄は周囲の気配を探りながら、ゆっくり歩いた。


すると、茂みの奥から小さな物音が聞こえてきた。


葉が揺れ、茶色い毛並みの森鼠が二匹姿を現す。


「いたな」


和雄は刀へ手を添えた。


森鼠は和雄に気づくと、甲高い鳴き声を上げて飛びかかってきた。


「キキッ!」


和雄は半歩横へ移動し、最初の一匹をかわした。そのまま刀を抜き、素早く斬り払う。


続いて二匹目が足元へ飛び込んできたが、和雄は身体をひねって攻撃を避け、返す刀で仕留めた。


「よし、二匹」


和雄は倒した森鼠をアイテムボックスへ収納した。


しかし、茂みの奥からさらに物音が聞こえてくる。


「……まだいるのか」


和雄が視線を向けると、今度は四匹の森鼠が現れた。


森鼠たちは散開し、左右から和雄へ近づいてくる。


「なるほど。小さいけど、数が多いと厄介だな」


和雄は刀を構え、呼吸を整えた。


余計な力を抜き、足裏へ体重を預ける。相手の動きを見極めると、身体を滑らかに移動させた。


一匹目の攻撃をかわし、二匹目を斬る。続けて振り向きざまに三匹目を仕留め、最後の一匹が逃げようとしたところを神速歩で追いついた。


「これで六匹か」


和雄は周囲を確認した。


林の奥からは、もう森鼠の気配が感じられない。


「とりあえず、近くにいたのは全部倒せたかな」


和雄は倒した森鼠を収納し、畑へ戻った。


トーマスは和雄の姿を見ると、驚いたように声を上げた。


「おお、もう戻ってきたのか!」


「はい。林の入口付近に六匹いたので、討伐してきました」


「六匹もいたのか!」


トーマスは目を丸くした。


「そりゃ畑も荒らされるわけだ。助かったよ、冒険者さん」


「いえ、仕事ですから。それと、林の奥にはまだいるかもしれないので、しばらく様子を見たほうがいいと思います」


「そうだな。もしまた出てきたら、ギルドに依頼を出すことにするよ」


和雄は畑の被害状況を確認し、依頼書にトーマスの署名をもらった。


「ありがとうございました。それじゃあ、ギルドに報告してきます」


「こちらこそありがとうな!」


トーマスに見送られ、和雄はジェノバの街へ戻った。


ギルドへ到着すると、受付ではミーニャが素材の査定記録を整理していた。


「ただいま戻りました」


「あっ、カズくん! お帰り!」


ミーニャは元気よく手を振った。


「森鼠を六匹討伐してきました。依頼主の確認も済んでいます」


「もう終わったの? 早いね!」


和雄は依頼書を渡し、討伐した森鼠を解体場で引き渡した。


しばらくして受付へ戻ると、ミーニャが報酬を用意して待っていた。


「はい、カズくん。依頼報酬が四十ゴル、森鼠六匹の討伐証明が十八ゴル。合計五十八ゴルだよ!」


「ありがとうございます」


和雄は硬貨を受け取った。


「それにしても、カズくんって本当に仕事が早いよね」


「そうですか? 今日は比較的簡単な依頼でしたから」


「普通は六匹もまとめて相手にしたら、もう少し時間がかかると思うけどなあ」


ミーニャは苦笑しながら尻尾を揺らした。


そのとき、隣の受付からフィーネが顔を出した。


「カズさん、お帰りなさい。依頼は無事に終わったんですね」


「はい。農家の方にも喜んでもらえました」


「それはよかったです」


フィーネは嬉しそうに微笑んだ。


「そういえば、南の森の調査についてですが、ギルドマスターが追加の巡回を指示されたそうです」


「そうなんですか」


「はい。今のところ街道への被害は確認されていませんが、オークの移動が続いている可能性があるので、しばらく警戒することになりました」


和雄は頷いた。


「早く落ち着くといいですね」


「ええ。本当にそうですね」


フィーネはそう答えたあと、少し表情を和らげた。


「ところでカズさん、今日はもう依頼を受けられますか?」


「いえ、今日はこれで終わりにしようと思っています。市場で食材を買って、宿の厨房を少し借りられないか聞いてみようかなと」


「お料理ですか?」


「はい。そろそろ自分で作った料理が食べたくなりまして」


和雄が笑うと、フィーネは興味深そうに目を輝かせた。


「カズさんのお料理、いつか食べてみたいです」


「それなら、機会があれば作りますよ」


「本当ですか? 楽しみにしていますね」


フィーネは嬉しそうに微笑んだ。


その様子を見ていたミーニャが、すかさず会話に加わった。


「ねえねえ、ボクも食べたい!」


「もちろん、ミーニャさんもどうぞ」


「やったー!」


ミーニャが両手を上げて喜ぶと、フィーネも思わず笑ってしまった。


和雄は二人に挨拶し、ギルドを後にした。


夕方の市場には、まだ新鮮な野菜や肉が並んでいる。和雄は夕食の献立を考えながら、ゆっくりと露店を見て回った。


「さて、何を作ろうかな。せっかくだし、日本風の料理にしてみるか」


異世界での生活は、少しずつ日常になりつつあった。


冒険者として依頼をこなし、報酬を受け取り、美味しいものを食べる。そんな何気ない毎日が、和雄にとっては新鮮で楽しいものだった。


一方、冒険者ギルドの二階では、ギルドマスターのガルド・レイヴァンが南の森の調査報告書を読んでいた。


「……オークが複数で移動している、か」


ガルドは報告書を机に置き、窓の外へ目を向けた。


「今のところ大きな被害はないが、念のため警戒は続ける必要があるな」


その傍らでは、副ギルドマスターのシルヴィアが別の報告書を確認していた。


「それと、例の新人冒険者についても気になることがあります」


「カズとかいう少年か?」


「はい。Gランクでありながら、オークを一撃で討伐したそうです」


ガルドは小さく笑った。


「面白い新人が来たもんだな」


シルヴィアは報告書に記された名前を見つめた。


「柾木和雄……。一度、直接お会いしてみたいですね」


まだ本人の知らないところで、和雄への関心は少しずつ高まっていた。


――第三章 第6話「異世界の料理とフィーネたちの約束」へ続く。


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