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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第三章 Gランク冒険者仕事を開始する。

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第4話「オーク討伐とギルドの評価」

南の森から戻った柾木和雄とDランク冒険者のガレスは、冒険者ギルドの受付で調査結果を報告していた。


受付嬢のフィーネは二人の話を聞きながら、手元の報告書へ丁寧に内容を書き込んでいる。


「つまり、南の森の外縁部で複数のオークの足跡を確認し、そのうち一匹と遭遇したということですね?」


フィーネの確認に、ガレスは頷いた。


「ああ。足跡から判断すると、少なくとも四匹はいると思う。しかも、同じ方向へ移動していた形跡がある。偶然集まっただけとは考えにくいな」


「分かりました。ギルドとしても警戒を強める必要がありそうですね」


フィーネは真剣な表情で報告書を確認した。


「それで、遭遇したオークについてですが……」


「ああ、そいつならカズが倒した。しかも一撃だ」


ガレスがそう答えると、フィーネは改めて和雄へ視線を向けた。


「カズさん、本当にお怪我はありませんか?」


「はい。大丈夫ですよ。攻撃を受ける前に倒せましたから」


和雄が笑顔で答えると、フィーネは安心したように息を吐いた。


「それならよかったです。でも、オークはゴブリンよりもずっと力が強い魔物です。今後も無理はしないでくださいね」


「分かりました」


和雄は素直に頷いた。


ガレスはそんな二人のやり取りを見ながら、苦笑を浮かべていた。


「フィーネ、こいつは本当に変わった新人だぞ。オークの棍棒が振り下ろされる前に間合いを詰めて、一撃で仕留めちまったんだからな」


「そんなに速かったんですか?」


「ああ。正直、俺でも何が起きたのか分からなかった」


フィーネは驚いた表情で和雄を見つめた。


「カズさん……以前、剣術を教えていたとおっしゃっていましたよね?」


「はい。故郷ではブレイドアーツの講師をしていました」


「なるほど……」


フィーネは何かを考えるように頷いた。


そのとき、隣の受付からミーニャが顔を出した。


「ねえねえ、カズくんがオークを倒したって本当?」


「はい。一匹だけですけど」


「すごーい! Gランクなのにオークを倒しちゃうなんて!」


ミーニャは興奮した様子で尻尾を揺らした。


「いや、そんなに大したことじゃないですよ」


「大したことあるよ! 普通の新人さんなら、オークを見つけたら逃げるんだから!」


和雄は少し困ったように笑った。


日本で剣術を教えていた頃から、相手の動きを見極めて間合いを詰めることには慣れている。身体強化魔法を使えば、オークの攻撃にも十分対応できた。


しかし、それがこの世界の新人冒険者にとってどれほど珍しいことなのか、和雄にはまだ実感がなかった。


「とりあえず、討伐したオークを解体場へ持っていけばいいですか?」


和雄が尋ねると、フィーネは頷いた。


「はい。討伐証明と素材の確認をお願いします。そのあと、調査依頼の報酬もお支払いしますね」


「分かりました」


和雄はガレスとともにギルドの裏手にある解体場へ向かった。


解体場では、いつもの男性職員が魔物の素材を整理していた。


「おっ、カズじゃねえか。今日は何を持ってきたんだ?」


「オークを一匹です」


「……オーク?」


男性職員は一瞬、手を止めた。


「お前、確かGランクだったよな?」


「はい。そうですけど?」


「まあいい。とりあえず出してみろ」


和雄はアイテムボックスを開き、作業台の上へオークを取り出した。


大柄な魔物の身体が現れると、男性職員は目を丸くした。


「おいおい……本当にオークじゃねえか!」


「だから言っただろう?」


隣にいたガレスが笑いながら答えた。


「しかも、こいつが一撃で倒したんだ」


「一撃だと?」


男性職員はオークの傷を確認し、感心したように唸った。


「こりゃ見事だな。余計な傷がほとんどねえ。素材としても状態がいいぞ」


和雄は少し照れくさそうに笑った。


「ありがとうございます」


「討伐証明は左耳だ。買い取りは二十ゴル。それと、素材も買い取るなら追加で二十ゴルになる」


「それなら、全部お願いします」


「おう。合計四十ゴルだな」


男性職員は銅板四枚を差し出した。


和雄は報酬を受け取り、礼を言った。


「ありがとうございます」


「それにしても、お前は本当に面白い新人だな。今度は何を持ってくるんだか」


「いや、そんなに大きな魔物を狙うつもりはありませんよ」


和雄が苦笑すると、男性職員とガレスは声を上げて笑った。


解体場での手続きを終えた二人は、受付へ戻った。


フィーネは報告書を確認すると、調査依頼の完了処理を進めた。


「お疲れさまでした。今回の調査依頼は正式に達成となります。報酬はお一人八十ゴルです」


和雄とガレスは、それぞれ銀貨に満たない額の硬貨を受け取った。


「ありがとうございます」


和雄は報酬をアイテムボックスへ収納した。


すると、ガレスが肩を軽く叩いてきた。


「カズ、今日は助かったぜ。お前がいなかったら、あのオークとの戦闘はもう少し面倒になっていたかもしれん」


「いえ、こちらこそ勉強になりました。足跡の見方とか、色々教えてもらえましたし」


「ははっ、そう言ってもらえると嬉しいな」


ガレスは満足そうに笑った。


「また機会があったら、一緒に依頼を受けようぜ」


「はい。よろしくお願いします」


二人は握手を交わし、ガレスはギルドの酒場へ向かっていった。


和雄が受付へ戻ろうとすると、フィーネが声をかけてきた。


「カズさん、少しお時間をいただいてもよろしいですか?」


「はい。何でしょう?」


「今回の調査報告について、ギルドの事務担当者にも確認していただくことになりました」


「事務担当者ですか?」


「はい。新人冒険者がオークを討伐したということで、実績の確認を行いたいそうです」


和雄は少し驚いた。


「えっ、何か問題がありましたか?」


「いえ、そういうわけではありません。ただ、Gランクの方が単独でオークを討伐するのは珍しいので、念のため確認するだけですよ」


「なるほど。それなら大丈夫です」


和雄が頷くと、フィーネは奥の事務室へ案内した。


部屋には大きな机が置かれ、書類が綺麗に整理されていた。


その机の向こうには、落ち着いた雰囲気の女性が座っていた。


「失礼します。カズさんをお連れしました」


フィーネが声をかけると、女性は顔を上げた。


「ありがとう、フィーネ。あなたがカズさんですね?」


「はい。柾木和雄です。よろしくお願いします」


「わたしはクラリス・ベルナール。冒険者ギルドの事務を担当しています」


クラリスは丁寧に挨拶すると、手元の報告書へ目を落とした。


「登録して間もないGランク冒険者で、ゴブリン十匹以上を討伐。森鼠の討伐実績もあり、今回はオークを一匹討伐……」


クラリスは顔を上げ、和雄を見つめた。


「ずいぶん順調ですね」


「そうですね。今のところ、何とかやれています」


和雄が答えると、クラリスは少し考え込んだ。


「剣術の経験があると聞いていますが、どの程度のものなんですか?」


「故郷ではブレイドアーツという剣術の講師をしていました。日本の剣道も習っていて、五段を持っています」


「ニホン……ですか?」


「はい。かなり遠い場所なので、ご存じないと思います」


クラリスは頷きながら、何かを書き留めた。


「なるほど。少なくとも、まったくの初心者というわけではないんですね」


「はい。剣の扱いには慣れています」


「分かりました。今回の討伐実績は、同行したガレスさんの証言もありますので、正式に認められます」


「ありがとうございます」


和雄が頭を下げると、クラリスは少し表情を和らげた。


「ただし、実力があっても無理は禁物です。冒険者としての経験は、これから積んでいく必要がありますからね」


「はい。気をつけます」


「それと、南の森の件については、ギルドで引き続き調査を行います。新しい情報が入りましたら、必要に応じてお知らせします」


「分かりました」


こうして、和雄の実績確認は無事に終了した。


事務室を出ると、フィーネが安心したように微笑んだ。


「お疲れさまでした、カズさん」


「ありがとうございます。少し緊張しました」


「ふふっ。クラリスさんは厳しい方ですが、冒険者の安全を大切にしているんですよ」


「そうなんですね」


和雄は納得したように頷いた。


その頃、ギルドの酒場では、ガレスが仲間の冒険者たちに今日の出来事を話していた。


「いや、本当に驚いたぜ。あの新人、オークを一撃で倒しちまったんだからな」


「Gランクの新人が?」


「ああ。しかも、本人は大したことをしたつもりがないらしい」


冒険者たちは半信半疑の様子だったが、ガレスの話を興味深そうに聞いていた。


少し離れた席では、銀髪のエルフの少女リューネが静かに飲み物を口にしていた。


「……オークを一撃、ね」


リューネは小さく呟き、視線を受付の方へ向けた。


そこには、フィーネと楽しそうに話している和雄の姿があった。


「変わった新人が来たものね」


そう呟いたリューネは、再び手元の飲み物へ視線を戻した。


一方の和雄は、自分の評判が少しずつ広まっていることなど知らず、今日の報酬を頭の中で計算していた。


「調査報酬が八十ゴル、オークの買い取りが四十ゴル……今日は百二十ゴルか」


和雄は満足そうに頷いた。


「これなら、しばらく宿代にも困らなさそうだな」


フィーネはそんな和雄を見て、思わず微笑んだ。


「カズさんって、本当に不思議な方ですね」


「えっ、そうですか?」


「はい。でも、悪い意味ではありませんよ」


和雄は首を傾げながらも、笑顔で答えた。


「それならよかったです」


こうして、和雄の冒険者としての評価は少しずつ高まり始めた。


しかし、南の森で確認された複数のオークの足跡については、まだ十分な調査が終わっていない。


その小さな異変が何を意味するのか、現時点では誰にも分からなかった。

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