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ブレイドアーツマスターの異世界冒険譚  作者: バモス
第三章 Gランク冒険者仕事を開始する。

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第2話「薬草採取と森の小さな異変」

ジェノバの街に朝日が差し込み、石畳の大通りに人々の足音が響き始めた。


《銀の麦亭》で朝食を済ませた柾木和雄は、いつものように冒険者ギルドへ向かっていた。昨日は西の草原で森鼠を八匹討伐したため、今日は比較的穏やかな依頼を受けるつもりだった。


ギルドの扉を開けると、受付ではフィーネが書類を整理していた。


「おはようございます、フィーネさん」


和雄が声をかけると、フィーネは顔を上げて微笑んだ。


「おはようございます、カズさん。今日はどんな依頼をお探しですか?」


「昨日は魔物討伐だったので、今日は薬草採取にしようと思っています」


「それでしたら、ちょうど南の森の入口付近で薬草を採取する依頼がありますよ」


フィーネは依頼書を一枚取り出した。


「薬草二十束の納品で、報酬は六十ゴルです。最近は回復薬の需要が増えているので、薬草の依頼が多いんです」


「回復薬の需要が増えているんですか?」


「はい。冒険者の方が増えていることもありますが、最近は森で魔物を見かける機会が少し増えているそうです」


フィーネは説明しながら、少し心配そうな表情を浮かべた。


「まだ大きな問題にはなっていませんが、念のため注意してくださいね」


「分かりました。無理はしません」


和雄が頷くと、フィーネは依頼書に受付印を押した。


「それでは、こちらが依頼書です。お気をつけて」


「ありがとうございます。行ってきます」


和雄はギルドを出て、南門へ向かった。


街の外へ出ると、草原には穏やかな風が吹いていた。遠くには森が広がり、木々の葉が朝日に照らされている。


「さて、今日も薬草探しだな」


和雄は草原を歩きながら、足元の植物を観察した。


薬草の特徴はすでに覚えている。細長い葉と赤みを帯びた茎を見つけると、鑑定能力で確認してから丁寧に採取した。


「これで一束……二束……」


採取した薬草は、そのままアイテムボックスへ収納する。時間停止機能のおかげで、品質が落ちる心配もない。


しばらくすると、依頼分の二十束が揃った。


「よし、これで達成だな」


和雄は立ち上がり、軽く腰を伸ばした。


まだ昼前だったため、少し余裕がある。


「せっかくだし、追加で採取しておこうかな」


和雄は森の入口付近へ足を向けた。


森の外縁部には、草原とは違った植物が生えている。木陰には小さな花が咲き、湿った地面には薬草らしき葉がいくつも見えていた。


「おっ、ここにもあるな」


和雄は鑑定能力を使いながら、薬草を採取していった。


そのとき、少し離れた茂みから物音が聞こえた。


「……ん?」


和雄は手を止め、周囲を見渡した。


風で揺れる葉の音とは違う。何かが地面を踏みしめるような音だった。


「魔物かな?」


和雄は腰の刀へ手を添え、静かに茂みへ近づいた。


すると、木々の間から一匹のゴブリンが姿を現した。


「なんだ、ゴブリンか」


しかし、和雄はすぐに違和感を覚えた。


ゴブリンの身体には小さな傷がいくつもあり、何かから逃げてきたように荒い息をしている。


「……様子がおかしいな」


和雄が鑑定すると、目の前に情報が表示された。


【鑑定】


名称:ゴブリン


状態:負傷・興奮


「負傷しているのか」


ゴブリンは和雄の存在に気づくと、甲高い声を上げて突進してきた。


「ギャアッ!」


「おっと!」


和雄は半歩横へ移動し、棍棒の一撃をかわした。


続けて刀を抜き、素早く斬り払う。


ゴブリンは一撃で倒れた。


「……ふう」


和雄は刀を鞘へ収め、倒れたゴブリンを確認した。


傷の形を見る限り、別の魔物に襲われた可能性が高い。


「森の奥で何かあったのかな?」


和雄は周囲を見渡した。


普段なら鳥の鳴き声が聞こえるはずなのに、今は妙に静かだった。


「……少し気になるな」


和雄は森の奥へ続く獣道へ目を向けた。


しかし、フィーネから無理をしないように言われていたことを思い出す。


「まあ、今日は採取依頼だしな。気になることはギルドに報告しておこう」


和雄はゴブリンをアイテムボックスへ収納し、来た道を戻り始めた。


その途中、地面に大きな足跡が残っていることに気づいた。


「……これは?」


和雄はしゃがみ込み、足跡を観察した。


ゴブリンのものよりも明らかに大きい。しかも、複数の足跡が同じ方向へ続いている。


「オーク……かな?」


和雄は以前フィーネから聞いた魔物の特徴を思い出した。


オークはゴブリンよりも体格が大きく、力も強い。新人冒険者が一人で相手にするには危険な魔物だという。


「もしオークが森の入口付近まで来ているなら、街道を通る人も危ないかもしれないな」


和雄は足跡の場所を覚え、ジェノバの街へ戻ることにした。


南門を通り、冒険者ギルドへ到着すると、フィーネが受付に立っていた。


「ただいま戻りました」


「あっ、カズさん。お帰りなさい。薬草採取はいかがでしたか?」


「無事に二十束集まりました。追加で十束ありますので、そちらも買い取りをお願いします」


「はい。確認しますね」


フィーネは薬草を受け取り、状態を確かめた。


「今回も綺麗ですね。依頼報酬が六十ゴル、追加の薬草十束で三十ゴルです」


「ありがとうございます」


和雄は報酬を受け取った。


「それと、少し気になることがあったんですが……」


和雄がそう切り出すと、フィーネは表情を引き締めた。


「何かありましたか?」


「森の入口付近で、怪我をしたゴブリンに襲われました。それと、近くに大きな足跡が複数残っていたんです」


「大きな足跡……ですか?」


「はい。ゴブリンのものではないと思います。もしかすると、オークかもしれません」


フィーネは少し考え込んだ。


「……分かりました。ギルドの調査担当に報告しておきます」


「お願いします。あと、ゴブリンも一匹倒したので、討伐証明を確認してもらえますか?」


「はい。解体場へお願いします」


和雄は解体場でゴブリンを提出し、討伐証明の右耳を確認してもらった。


報酬の五ゴルを受け取って受付へ戻ると、フィーネが何かを書き留めていた。


「カズさん、先ほどのお話は調査報告として記録しました。もし同じようなことがあっても、無理に調べようとせず、ギルドへ知らせてくださいね」


「分かりました」


和雄は頷いた。


フィーネは安心したように微笑んだ。


「ありがとうございます。こうした小さな情報が、街の安全を守ることにつながるんですよ」


「そう言ってもらえると嬉しいですね」


和雄は笑顔で答えた。


その頃、ギルドの奥では、職員たちが和雄の報告について話し合っていた。


「南の森の入口付近で負傷したゴブリンか……」


「それに、大型の魔物らしき足跡が複数。少し気になるな」


「念のため、巡回する冒険者に注意を呼びかけておこう」


まだ大きな異変と呼べるほどのものではない。


しかし、普段とは違う魔物の動きが、少しずつ確認され始めていた。


一方、和雄は今日も依頼を無事に終え、《銀の麦亭》へ戻るところだった。


「さて、今日は何を食べようかな」


そんなことを考えながら歩く彼は、自分が見つけた小さな異変が、やがて新たな出来事につながっていくことを、まだ知らなかった。

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