第4話「拡散」
仮説を立てた直後から調査班を三方向に分け、外周・内部・中心へ同時に展開させた結果、現象の解明どころか発生範囲と頻度が急激に増加し、観測行為そのものが歪みを刺激している可能性が浮かび上がる。
進めるほど悪化する。
だが、止めれば終わる。
「……続行だ」
外周班。
町の境界付近。
門の近く。
「ここから外に出られるはずだ」
男が一歩踏み出す。
その瞬間。
同じ位置に戻る。
「……は?」
もう一度。
踏み出す。
戻る。
「……動いてない?」
「いや、歩いたぞ」
記憶はある。
だが、位置が変わらない。
「……ループか」
繰り返す。
何度も。
「……出られない」
内部班。
市場。
人が多い。
「異常はここが中心に近いはずだ」
観測を開始する。
紙に書く。
動きを記録する。
その瞬間。
全員が同時に止まる。
ペンが止まる。
「……何だ」
次の瞬間。
全員が同時に書き始める。
だが――
内容が一致しない。
「……読めない」
文字が歪む。
意味が崩れる。
「……記録が壊れる」
中心班。
町の中央。
「ここだ」
空間がわずかに歪む。
「見えるか?」
「……何も」
個体差。
「……測る」
魔力感知。
位置測定。
同時に実行する。
その瞬間。
装置が停止する。
数値が消える。
「……反応しない」
「……いや」
次の瞬間。
数値が一斉に跳ね上がる。
異常値。
「……測れない」
全班。
同時刻。
同時に異常発生。
「……連動してるな」
本部。
報告が集まる。
「外に出られません!」
「記録が取れません!」
「中心が特定できません!」
声が重なる。
「……分かった」
静かに言う。
「……全部繋がってる」
外周。
内部。
中心。
区別がない。
「……領域が広がってる」
誰かが言う。
「……違う」
否定する。
「最初から広い」
ただ――
「……見えてなかっただけだ」
沈黙。
「……撤退しますか」
部下が聞く。
「……無理だ」
理由は単純。
「外に出られない」
結論。
詰んでいる。
「……進むしかない」
男の視点。
調査を進めるほど現象が悪化していることを理解しながらも、それが“観測しているから悪化している”という可能性を認めてしまえばすべての行動が無意味になるため、その考えを意図的に切り捨てて前に進むしかないと判断している。
通り。
人の流れ。
さらにズレる。
同時停止。
同時動作。
衝突。
混乱。
「……広がるな」
一方。
通りの中。
歩く。
止まらない。
「……増えたな」
異常が。
明確に。
「……いい」
調査している。
観測している。
だから――
「……広がる」
視線を上げる。
町。
すべてが繋がる。
「……効率がいい」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
「――そのままやれ」




