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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第5章「歪み」

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第3話「誤認」

 机の上に並べられた報告書を前に、断片的な証言と再現性のない記録を何度も照合しながら、共通点が存在しないという事実そのものを“共通点”として扱うしかない状況に追い込まれ、無理にでも形を与えなければ次に進めないと判断する。


 曖昧なままでは、対処できない。


 「……仮説を置く」


 部下が顔を上げる。


 「結論、出すんですか」


 「……出す」


 正確でなくてもいい。


 必要なのは“方向”だ。


 「現象は広域」


 紙を指で押さえる。


 「個体差がある」


 別の紙を重ねる。


 「認識、記憶、行動に影響」


 「……全部ですよね」


 「……そうだ」


 だからこそ。


 「……原因は外部だ」


 部下が眉をひそめる。


 「外部?」


 「人間じゃない」


 「……魔物ですか」


 「近い」


 だが、それだけでは足りない。


 「……個体ではない」


 部屋が静まる。


 「……じゃあ何なんですか」


 「……“領域”だ」


 言葉にする。


 無理やり。


 「この町そのものが、何かに覆われている」


 部下が息を呑む。


 「……結界みたいな?」


 「それに近い」


 完全ではない。


 だが、説明はできる。


 「中にいると、認識が歪む」


 「だから記憶が飛ぶ」


 「だから動きが揃う」


 「……全部繋がる」


 部下の表情が変わる。


 「……なるほど」


 納得する。


 「……それでいきましょう」


 「対処は?」


 「……境界を探す」


 「外に出る方法を探る」


 「中心を特定する」


 言葉が並ぶ。


 形になる。


 「……やっと進むな」


 紙に書き込む。


 “仮説:広域精神干渉領域”


 「……これで動ける」


 立ち上がる。


 「調査班を分ける」


 「外周、内部、中心」


 「全方向から詰める」


 「了解」


 部下が動く。


 「……形になったな」


 完璧ではない。


 だが、十分だ。


 視線を上げる。


 窓の外。


 町。


 「……見えてきた」


 原因が。


 位置が。


 対処が。


 「……終わらせる」


 確信する。


 男の視点。


 理解できなかった現象に“名前”がついたことで不安が整理され、恐怖が薄れ、代わりに対処できるという確信が生まれ、それが正しいかどうかよりも“納得できるかどうか”が優先されていることに気づかない。


 「……これでいい」


 一方。


 通りの中。


 同じ町。


 同じ流れ。


 「……領域か」


 歩く。


 止まらない。


 「……違うな」


 すれ違う。


 人間。


 「……惜しい」


 理解に近い。


 だが、ズレている。


 「……いい」


 問題ない。


 むしろ都合がいい。


 「……そのまま進め」


 視線を上げる。


 空間。


 歪みは残っている。


 「……気づかないか」


 原因は外ではない。


 「……内側だ」


 歩き出す。


 止まらない。


 迷わない。


 「――間違えたな」

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