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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第1章「異常個体」

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第8話「領域」

 ――減っている。


 洞窟の奥を進みながら、俺は確信していた。


 魔物の数が、明らかに少ない。


 牙獣鼠の気配も、さっきまでの密度がない。


 匂いも、薄い。


 代わりに残っているのは。


 血の匂い。


 そして、強い個体の痕跡。


 ……食われている。


 それが、一番自然な結論だった。


 俺が食った分もある。


 だが、それ以上に。


 別の何かが、この領域を荒らしている。


 あの異形。


 あの存在が、周囲の魔物を喰い尽くしている可能性が高い。


 ……なら。


 ここは、危険だ。


 普通なら、離れるべきだ。


 だが。


 足は止まらない。


 むしろ。


 わずかに前へ出る。


 ……おかしい。


 自分でも分かる。


 危険だと理解しているのに。


 “確かめたい”と思っている。


 その感覚が、わずかに残る違和感として胸に引っかかる。


 だが。


 それも、すぐに薄れる。


 代わりに残るのは、もっと単純な思考。


 ――この領域、使えるな。


 魔物が減っている。


 つまり。


 競争が少ない。


 安全に狩れる範囲が広がる。


 ……支配できる。


 その言葉が、自然に浮かんだ。


 支配。


 誰に教わったわけでもない。


 だが、理解できる。


 この場所を、自分の狩場にする。


 他の魔物を排除する。


 そうすれば、効率よく成長できる。


 ……悪くない。


 そう判断する。


 その思考が、完全に“捕食者”のものだと気づく。


 だが、もう違和感はほとんどない。


 周囲を探る。


 気配。


 匂い。


 小型の反応がいくつか。


 だが、まとまっていない。


 ばらけている。


 ……狩りやすい。


 その時。


 別の気配を捉える。


 近い。


 牙獣鼠ではない。


 少し大きい。


 そして――動きが遅い。


 ……弱い。


 そう判断する。


 近づく。


 慎重に。


 影に溶けるように。


 やがて、視界に入る。


 二足。


 だが、人間ではない。


 痩せ細った体。


 皮膚が剥がれ、肉が露出している。


 目は虚ろ。


 口から黒い液体が垂れている。


 ――腐敗人形。


 そんな言葉が浮かぶ。


 人型の魔物。


 だが、動きは鈍い。


 ……いける。


 身体を広げる。


 背後へ回る。


 気づかれていない。


 そのまま――覆う。


 だが。


 違和感。


 硬い。


 粘りがある。


 牙獣鼠とは違う。


 溶けにくい。


 腐敗人形が反応する。


 腕が振り上げられる。


 遅い。


 だが、重い。


 直撃すれば、ダメージは大きい。


 避ける。


 横に流れる。


 そのまま、脚に絡みつく。


 倒す。


 バランスが崩れる。


 その隙に、上半身を覆う。


 今度は深く。


 完全に。


 酸分泌。


 時間をかけて溶かす。


 抵抗が弱まる。


 そのまま、押し潰す。


────────────────────────

【システム】


腐敗人形(F+)を捕食しました

経験値を獲得


────────────────────────


 ……少し強い。


 だが、問題はない。


 処理できる。


 その認識が、はっきりと定着する。


 内側が満たされる。


 同時に、変化が走る。


────────────────────────

【システム】


レベルアップ


Lv7 → Lv8


HP   :16 → 20 / 30

攻撃  :8 → 9


────────────────────────


 ……順調だ。


 だが、それだけでは終わらない。


────────────────────────

【システム】


逸脱吸収が発動


────────────────────────

────────────────────────

【システム】


スキルを取得しました


・腐敗耐性 Lv1


────────────────────────


 ……耐性。


 理解する。


 さっきの“溶けにくさ”の原因。


 それを取り込んだ。


 つまり。


 今後は、同じ系統に強くなる。


 ……便利だな。


 その感想が、自然に出る。


 そして。


 それを“当然”と感じている自分に、もう違和感はなかった。


 その時。


 ふと、背後に気配を感じる。


 ……いる。


 別の魔物。


 近い。


 振り向く。


 そこにいたのは、牙獣鼠。


 だが、動かない。


 こちらを見ている。


 警戒。


 だが、近づいてこない。


 ……逃げない。


 妙だ。


 普通なら、逃げるか、襲うかだ。


 だが、こいつは。


 距離を取っている。


 様子を見ている。


 ……理解する。


 俺を“強い個体”として認識している。


 だから、近づかない。


 その認識が、はっきりと浮かぶ。


 ……なるほど。


 そういうことか。


 この領域。


 すでに。


 俺が影響を与え始めている。


 その時、表示が浮かぶ。


────────────────────────

【エラー】


領域影響度の上昇を検出


────────────────────────

────────────────────────

【エラー】


個体影響範囲:拡大中


────────────────────────


 ……影響。


 範囲。


 意味は、完全には分からない。


 だが。


 方向性は理解できる。


 俺は。


 ただ狩っているだけじゃない。


 この場所に、影響を与えている。


 変えている。


 ……面白い。


 そう思った。


 その感覚に、もう違和感はない。


 ゆっくりと、身体を広げる。


 洞窟の中。


 この領域。


 ここは。


 俺の狩場だ。


 その認識が、静かに定着する。


 そして。


 さらに奥へと進む。


 まだ、足りない。


 もっと。


 強くなる。


 その思考が、完全に根を張っていた。

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