第7話「狩り」
――見える。
いや、正確には“分かる”。
匂いと気配が、線のように繋がっていく。
どこに、どれだけの獲物がいるか。
どの個体が弱く、どの個体が強いか。
そして。
どう動けば、安全に仕留められるか。
すべてが、自然に組み上がる。
洞窟の奥。
牙獣鼠が三体。
距離は中程度。
周囲に、他の大型反応はない。
……問題ない。
狩れる。
その判断に、もう迷いはなかった。
身体を低く広げる。
影に溶ける。
ゆっくりと距離を詰める。
無駄な動きはない。
音も、匂いも、極力抑える。
一体がこちらを向く。
警戒。
だが遅い。
すでに距離は詰まっている。
動く。
最小限の範囲で広がり、対象だけを包む。
沈める。
溶かす。
短時間で処理。
ほぼ反応させない。
────────────────────────
【システム】
牙獣鼠(F)を捕食しました
経験値を獲得
────────────────────────
残りの二体が反応する。
だが、もう遅い。
片方に、分離した身体を回す。
囮。
意識をそちらへ引きつける。
その隙に、本体で背後へ回る。
覆う。
沈める。
処理。
────────────────────────
【システム】
牙獣鼠(F)を捕食しました
経験値を獲得
────────────────────────
最後の一体。
逃げようとする。
だが、予測している。
進路。
速度。
位置。
先回りする。
広がる。
捕まえる。
終わりだ。
────────────────────────
【システム】
牙獣鼠(F)を捕食しました
経験値を獲得
────────────────────────
静かになる。
完全に。
……問題なし。
そう判断する。
戦闘というより、処理に近い。
無駄がない。
危険もない。
確実に仕留める。
それができている。
内側が満たされる。
だが、さっきまでとは違う。
高揚は薄い。
冷静だ。
ただ、積み上げている。
その感覚。
────────────────────────
【システム】
レベルアップ
Lv6 → Lv7
HP :12 → 16 / 30
攻撃 :7 → 8
敏捷 :5 → 6
────────────────────────
……回復した。
完全ではないが、増えている。
やはり、捕食で回復もする。
だが遅い。
完全回復には、もっと必要だ。
その理解が、自然に積み重なる。
同時に。
────────────────────────
【システム】
逸脱吸収が発動
────────────────────────
────────────────────────
【システム】
スキルを取得しました
・気配遮断 Lv1
────────────────────────
……いい。
さらに狩りが楽になる。
匂い、動き、気配。
すべてが揃ってきている。
もはや、同ランク帯では負ける要素がない。
その認識が、はっきりと浮かぶ。
だが。
同時に、別の理解もある。
あの異形。
あれは、別格だ。
今の自分では、絶対に勝てない。
だから。
順番を守る。
弱いものから。
確実に。
積み上げる。
その判断が、完全に定着していた。
洞窟を移動する。
匂いを辿る。
気配を読む。
危険な領域は避ける。
安全な獲物だけを狙う。
その繰り返し。
時間が経つ。
どれくらいかは分からない。
だが、確実に。
強くなっている。
────────────────────────
個体名:未設定
種族:屍喰いスライム
ランク:F
レベル:7
【ステータス】
HP :16 / 30
MP :3 / 3
攻撃 :8
防御 :1
敏捷 :6
知性 :0
【スキル】
・捕食 Lv1
・酸分泌 Lv1
・逸脱吸収 Lv1
・危機感知 Lv1
・嗅覚強化 Lv1
・耐久強化 Lv1
・反応強化 Lv1
・気配遮断 Lv1
【称号】
・規格外個体
・存在汚染
【状態】
軽度異常
────────────────────────
……悪くない。
そう評価する。
さっきまでとは違う。
明確に、段階が変わっている。
その時。
ふと、違和感が走る。
周囲の気配。
……いない。
さっきまでいたはずの魔物が、減っている。
明らかに。
数が。
……俺が食った。
それもある。
だが、それだけじゃない。
別の何かがいる。
強い存在。
それが、この領域のバランスを崩している。
……あの異形か。
可能性は高い。
その認識と同時に。
────────────────────────
【エラー】
生態バランスの変化を検出
────────────────────────
……またか。
────────────────────────
【エラー】
干渉レベル上昇
────────────────────────
意味は、分からない。
だが。
確実に何かが進んでいる。
普通ではない方向へ。
……まあいい。
今は関係ない。
やることは変わらない。
強くなる。
それだけだ。
視線を、さらに奥へ向ける。
まだ、食える。
まだ、足りない。
その思考が、静かに定着していた。




