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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第1章「異常個体」

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第6話「適応」

 ……まだ、動ける。


 岩の裂け目の奥で、俺はゆっくりと身体を広げた。


 削られた分だけ、明らかに体積が減っている。さっきまで感じていた“余裕”は完全に消えていた。


 弱い。


 その現実が、静かに突きつけられる。


 だが同時に、理解もあった。


 ――死んでいない。


 それがすべてだ。


 ゆっくりと、周囲を探る。


 匂い。


 気配。


 音。


 さっきまでのように、無闇に奥へは進まない。


 選ぶ。


 確実に勝てる相手だけを。


 その判断が、はっきりとできるようになっていた。


 ……学習。


 そう言い換えてもいい。


 さっきの戦闘で、無駄な動きがどれだけ多かったかを思い出す。


 正面から受ける必要はなかった。


 無理に包む必要もなかった。


 もっと、効率よく。


 もっと、確実に。


 やれるはずだ。


 その思考自体が、さっきまでの自分とは違っていた。


 ゆっくりと、裂け目から外へ出る。


 動きは慎重に。


 気配を抑えながら。


 洞窟の別方向へ進む。


 さっきの異形がいる場所とは逆。


 匂いが薄い方へ。


 やがて、小さな気配を捉える。


 牙獣鼠。


 二体。


 距離は近い。


 ……いける。


 だが、すぐには動かない。


 観察する。


 動き。


 癖。


 反応。


 一体が、頻繁に首を振る。


 警戒が強い。


 もう一体は、餌に集中している。


 隙がある。


 狙うなら、そっちだ。


 身体をゆっくりと広げる。


 音を立てない。


 匂いを抑える。


 距離を詰める。


 さっきよりも、明らかに動きが洗練されている。


 無駄がない。


 そして。


 動く。


 瞬間的に広がり、対象だけを包む。


 無駄に広げない。


 必要な分だけ。


 覆う。


 沈める。


 酸分泌。


 短時間で処理。


 ほとんど抵抗させない。


 ――早い。


 さっきよりも、明らかに。


────────────────────────

【システム】


牙獣鼠(F)を捕食しました

経験値を獲得


────────────────────────


 もう一体が反応する。


 だが、逃げる。


 ……追わない。


 判断する。


 今は、無理に狩る必要はない。


 確実な一体でいい。


 その思考が、自然に出てくる。


 ……変わったな。


 自分でも分かる。


 さっきまでなら、追っていた。


 だが今は違う。


 無駄なリスクを取らない。


 それが“正しい”と理解している。


 内側が満たされる。


 だが、さっきのような過剰な高揚はない。


 冷静だ。


 その状態のまま、ステータスが更新される。


────────────────────────


個体名:未設定

種族:屍喰いスライム

ランク:F


レベル:6


【ステータス】

HP   :12 / 30

MP   :3 / 3


攻撃  :7

防御  :1

敏捷  :5

知性  :0


【スキル】

・捕食 Lv1

・酸分泌 Lv1

・逸脱吸収 Lv1

・危機感知 Lv1

・嗅覚強化 Lv1

・耐久強化 Lv1

・反応強化 Lv1


【称号】

・規格外個体

・存在汚染


【状態】

軽度異常


────────────────────────


 HPが、まだ低い。


 回復していない。


 ……当然か。


 食えば回復すると思っていたが、完全ではないらしい。


 再生には、時間か。


 それとも、別の条件があるのか。


 その思考が浮かんだ瞬間。


────────────────────────

【システム】


再生速度が低下しています


要因:損傷過多


────────────────────────


 ……なるほど。


 完全に理解できたわけではないが、方向性は見える。


 無茶をすれば、その分回復も遅れる。


 つまり。


 戦い方が重要になる。


 削られない戦い方。


 それが必要だ。


 その時。


 ふと、思いつく。


 ……分散。


 さっき、身体を分けた。


 あれを、もっと意図的に使えば。


 囮。


 撹乱。


 回避。


 使える。


 試す価値はある。


 その思考と同時に、身体をわずかに分ける。


 意識で操作できる。


 完全ではないが、簡単な動きなら可能だ。


 ……面白い。


 そう思った。


 その感覚に、もう違和感はない。


 強くなるための手段。


 それだけだ。


 その時、視界の奥でノイズが走る。


────────────────────────

【エラー】


適応速度上昇を検出


通常値を逸脱


────────────────────────


 ……またか。


────────────────────────

【エラー】


学習補正:異常


────────────────────────


 意味は分からない。


 だが。


 “速すぎる”ということだけは、なんとなく理解できる。


 普通ではない。


 だが。


 それがどうした。


 強くなれるなら、それでいい。


 その結論に、迷いはなかった。


 ゆっくりと、身体を広げる。


 次の獲物を探す。


 今度は。


 無理はしない。


 確実に。


 効率よく。


 そして。


 少しずつ。


 あの異形に近づく。


 そのために。


 強くなる。


 その思考が、静かに定着していた。

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