第17話「崩壊前夜」
夕刻の町を歩きながら、昼に噴き出した異変が一度沈静化したように見える一方で、内部ではまったく収束しておらず、むしろ“崩れる方向で安定している”ことに気づき、それが回復ではなく“固定された異常”であると理解する。
静かだ。
だが、戻っていない。
「……整ってるな」
通り。
人の流れ。
動いている。
問題なく。
だが――
視線が揃う。
動きが揃う。
反応が同時に起きる。
「……逆だな」
自然ではない。
だが、崩れてもいない。
「……固定されたか」
店の前。
客が並ぶ。
「次の人」
一人が出る。
問題ない。
だが、その後ろ。
全員が同じ動きを繰り返す。
同じタイミングで。
「……繰り返しだな」
ループしている。
微細に。
「……気づかないか」
誰も違和感を持たない。
ギルドへ入る。
空気が重い。
だが、静かだ。
「……沈んでる」
「おう」
声がかかる。
いつもの男。
「……ああ」
「今日どうする?」
「……これだな」
「分かった」
同じ流れ。
同じ会話。
「……繰り返しだ」
言葉。
反応。
判断。
すべてが“既視”になる。
「……止まらない」
男がこちらを見る。
「……なあ」
止まる。
「……何だっけ」
言葉が消える。
「……いい」
流す。
「……それでいい」
異常が“前提”になる。
「……完成だな」
男の視点。
日常が正常に戻ったように見えるが、どこかで同じ会話や同じ動作を繰り返している感覚があり、それを指摘しようとすると頭の中で言葉が消えてしまい、そのまま受け入れてしまう。
「……閉じてるな」
外に出る。
通り。
夕焼け。
光が歪む。
「……綺麗だな」
だが――
同じ風景が、わずかに繰り返される。
「……ループか」
時間すら揺れている。
「……深い」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者。
「……来てるな」
数が増える。
密度が上がる。
だが――
「……遅い」
すでに。
「……終わってる」
崩壊は始まっている。
止められない。
「……いい」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
町の中心へ。
すべてが揃う。
すべてが歪む。
「……明日だな」
確信する。
「――壊れる」




