第15話「歪み」
町の中心を歩きながら、人間個体に現れていた変質が互いに影響し合い、単なる個別の異常ではなく“構造全体のズレ”として現れ始めていることに気づき、それが局所ではなく広域に連動していると理解する。
点ではない。
線でもない。
「……面だな」
通りを見渡す。
人の流れ。
揃っている。
だが、わずかにズレる。
全体が同時に遅れる。
次の瞬間、同時に動く。
「……同期してるな」
一人ではない。
複数でもない。
全体。
「……繋がってる」
店の前。
客が並ぶ。
「次の人」
全員が同時に一歩出る。
「……」
沈黙。
誰も前に出ない。
判断が重なる。
「……ズレたな」
次の瞬間。
全員が同時に動く。
ぶつかる。
軽く。
「……壊れてる」
だが――
「……回る」
完全には止まらない。
別の場所。
会話。
「昨日の――」
「昨日って何だ?」
「……分からん」
話が繋がらない。
だが、会話は続く。
「……意味がないな」
それでも成立する。
形だけ。
「……十分か」
ギルドへ入る。
空気が重い。
だが、静かだ。
「……濃いな」
全員が揃っている。
だが、同時にズレる。
「どれ受ける?」
数人が同時に聞く。
「……これだ」
答える。
全員が同時に頷く。
「……気持ち悪いな」
個体差が薄れている。
「……均一化か」
男がこちらを見る。
「なあ」
止まる。
「……何だっけ」
言葉が消える。
「……いい」
流す。
「……それでいい」
考えない。
止まらない。
「……深いな」
男の視点。
自分の考えと周囲の考えの境界が曖昧になり、どこまでが自分の意思でどこからが流れなのか分からなくなっているが、それを疑問に思う感覚すら弱くなっている。
「……境界が消えてる」
外に出る。
通り。
全体を見る。
人。
動き。
音。
すべてが一つの流れのように繋がる。
「……一体化か」
個ではない。
集合でもない。
「……構造そのものだ」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者。
「……来ないな」
完全に引いている。
「……遅かったな」
すでに広がっている。
止められない。
「……戻らない」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
町の中心。
「……歪んでる」
すべてが。
「――完成する」




