第14話「変質」
通りを歩きながら、余波として残った空白と混線が単なる一時的な異常ではなく、個体ごとに異なる形で“定着”し始めていることに気づき、それが時間とともに修復されるのではなく“別の状態として固定される”兆候であると理解する。
戻らない。
埋まらない。
「……変わるな」
人の流れに入る。
観察する。
一人の男。
立ち止まっている。
「……何してたっけ」
視線が揺れる。
思考が止まる。
数秒。
「……まあいいか」
切り捨てる。
思考を。
「……浅い」
別の女。
歩いている。
同じ道を二度通る。
気づかない。
「……ループか」
記憶が繋がっていない。
「……軽いな」
子供。
笑っている。
同じ言葉を繰り返す。
意味なく。
「……壊れてるな」
だが――
「……機能してる」
完全には崩れていない。
生活は続く。
「……それが厄介だ」
ギルドへ入る。
空気。
同じ。
だが、違う。
「……濃いな」
「おう」
声がかかる。
「……ああ」
「さっきの話、覚えてるか?」
「……何の話だ」
「……いや」
止まる。
「……何でもない」
諦める。
「……慣れてるな」
異常に。
適応している。
「……進んでる」
席に座る。
依頼書を見る。
文字が一瞬ズレる。
だが、すぐ戻る。
「……認識もか」
視覚。
思考。
記憶。
すべてに影響している。
「……広いな」
男が話しかける。
「最近さ」
止まる。
「……何だっけ」
「……いい」
流す。
「……それでいい」
異常を異常と認識しない。
「……完成だな」
男の視点。
何かがおかしいと感じる瞬間はあるが、それを深く考えようとすると意識が逸れてしまい、そのまま“まあいいか”と処理してしまう自分の思考に違和感を持つことなく日常を続けている。
「……止まらない」
外に出る。
通り。
同じ。
だが、違う。
人間が“変わっている”。
ゆっくりと。
確実に。
「……侵食だな」
自分が直接触れていなくても。
広がる。
「……いい」
問題ない。
むしろ効率がいい。
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者。
「……来ないな」
完全に引いた。
「……間に合わなかったか」
変質は始まった。
止まらない。
「……もう戻らない」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
「――染まる」




