第13話「余波」
通りを歩きながら、さっきまで空間全体を覆っていた圧が消えたあとに残っている“静かすぎる余白”のような感覚を追っていると、それが単なる収束ではなく“削り取られた後の欠損”であることに気づく。
戻っていない。
埋まっていない。
「……残ってるな」
人が動き出す。
ゆっくりと。
「……あれ?」
誰かが呟く。
足が止まる。
視線が泳ぐ。
「……何してたっけ」
「……空白か」
記憶が飛んでいる。
繋がらない。
「……広いな」
別の場所。
「さっきの……何だった?」
「分からん」
会話が成立しない。
内容が曖昧になる。
「……混線だな」
歩く。
通りを抜ける。
子供が立っている。
動かない。
「……どうした」
母親が声をかける。
「……分からない」
反応が遅い。
「……深いな」
ギルドへ向かう。
扉を開ける。
中へ。
空気が重い。
静かだ。
「……違うな」
誰も騒いでいない。
だが、正常でもない。
「……さっきの覚えてるか?」
誰かが言う。
「……覚えてない」
「俺もだ」
「……怖えな」
言葉になる。
違和感が。
「……進んだな」
席に座る。
「……来たか」
声がかかる。
だが、弱い。
「……ああ」
「今日……どうするんだっけ」
止まる。
言葉が続かない。
「……これだ」
依頼書を指す。
「あ、そうだ」
繋がる。
だが、不安定だ。
「……補うか」
意識を軽く入れる。
流れが整う。
会話が繋がる。
「……戻るな」
だが――
「……完全じゃない」
隙間がある。
空白が残る。
男の視点。
さっき何かがあったはずなのに思い出せず、その代わりに説明できない不安だけが残っていて、それを打ち消すように日常に戻ろうとしているが、どこかで“戻りきっていない”ことを感じている。
「……根に残るな」
立ち上がる。
外へ出る。
通り。
人の流れ。
戻っている。
だが、遅い。
「……歪みが残る」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者。
「……来ないな」
完全に引いた。
「……終わりか」
だが――
「……違うな」
残っている。
ここに。
人間に。
空間に。
「……刻まれた」
消えない。
完全には。
「……いい」
利用できる。
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
「――染みる」




