第6話「確信未満」
ギルドの外に出たあとも、さっきの会話で生まれた“何者か分からない違和”が完全には切り離されずに残り続けているのを感じ取り、それが一時的な疑念ではなく“解消されない問い”として固定されつつあることを理解する。
消えない。
だが、確定もしない。
「……中途半端だな」
通りを歩く。
人の流れに混ざる。
「……見てるな」
後ろ。
気配。
振り返らない。
必要がない。
「……二人か」
距離を保ってついてくる。
自然に。
だが、意図はある。
「……試す気か」
角を曲がる。
路地へ。
人が減る。
音が落ちる。
止まる。
「……出てこい」
数秒。
沈黙。
「……やっぱ気づいてたか」
男が出てくる。
例の男。
もう一人もいる。
「……何だ」
「少し話したくてな」
「……ここでか」
「人目がない方がいい」
「……そうか」
理由は分かる。
証拠がない。
だから、詰めるしかない。
「お前さ」
男が言う。
「普通じゃないよな」
「……普通の定義は?」
「そこじゃねえ」
苛立ち。
だが、抑えている。
「説明できない」
正直に言う。
「でも違う」
同じだ。
さっきと。
「……それだけか」
「それだけだ」
沈黙。
「……証拠は?」
自分から聞く。
男が止まる。
言葉が出ない。
「……ない」
「……だろうな」
「でもな」
続ける。
「放っておける感じじゃねえ」
「……そうか」
「何なんだ、お前」
視線が刺さる。
強い。
「……バグだ」
短く答える。
「……名前じゃねえ」
「……それでいい」
会話が噛み合わない。
「……逃げてるな」
「……そうかもな」
否定しない。
それが逆に、引っかかる。
「……くそ」
男が舌打ちする。
「……分からねえ」
その一言に集約される。
理解できない。
だが、違うと分かる。
「……それが限界だ」
距離を詰める。
一歩。
「……何だ」
男が構える。
「……見せるか?」
わざと。
揺らす。
空気が変わる。
一瞬だけ。
視線が揺れる。
思考が止まる。
「……っ」
男が息を詰める。
「……今の」
だが――
「……何だ?」
掴めない。
認識できない。
「……そうだ」
それでいい。
「……分からないままにしとけ」
引く。
一歩。
「……」
男は動かない。
理解できない。
だが、否定もできない。
「……行くぞ」
もう一人が言う。
「……ああ」
引く。
だが――
「……終わってないな」
残る。
確実に。
外へ出る。
通りへ戻る。
人の流れ。
音。
「……戻るな」
日常は壊れていない。
だが――
「……歪んでる」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者はまだいる。
「……面白いな」
人間は確信できない。
上位は干渉できない。
「……中途半端だ」
だが、それが一番長く続く。
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
「――壊すか」




