第3話「違和感」
ギルドの中でいつも通りの席に座り、変わらない流れの中で会話を聞きながら状況を整理していると、表面的には完全に安定しているはずの関係の中に、わずかに“噛み合わない部分”が混ざり始めていることに気づく。
流れは同じ。
会話も同じ。
だが――
「……ズレてるな」
「なあ」
男が話しかけてくる。
いつもの調子。
だが、視線が少しだけ長い。
「昨日の話、覚えてるか?」
「……どれだ」
「ほら、あの時の――」
言葉が止まる。
「……何だっけ」
「……混線か」
記憶が繋がらない。
流れが途切れる。
「最近さ、変じゃねえか?」
別の男が言う。
「何がだ?」
「分かんねえけどよ」
曖昧。
だが、共通している。
「……残ってるな」
空白。
混線。
侵食。
完全には消えていない。
「……当然か」
「お前はどう思う?」
視線が向く。
「……何もない」
短く返す。
「……そうか?」
引っかかる。
だが、追及はしない。
「……弱いな」
違和感はある。
だが、確信にはならない。
「……まだ浅い」
依頼の話に戻る。
流れが戻る。
「今日はどれ行く?」
「……これだな」
「分かった」
いつも通り。
問題ない。
「……通る」
外へ出る。
森へ。
歩く。
並ぶ。
「なあ」
さっきの男。
また話しかけてくる。
「お前さ」
止まる。
言葉が続かない。
「……いや」
首を振る。
「何でもねえ」
「……惜しいな」
かなり近い。
だが、届かない。
戦闘。
始まる。
敵が出る。
数は少ない。
「……遅い」
だが、合わせる。
人間の範囲に。
動く。
斬る。
倒す。
「……問題ない」
戦闘が終わる。
「やっぱ安定してるな」
男が言う。
「……そうか?」
「さっきのも完璧だった」
「……慣れだ」
評価は変わらない。
むしろ上がっている。
だが――
「……残るな」
戻る。
町へ。
通り。
人の流れ。
同じ。
だが、違う。
「……薄くなってる」
違和感が。
弱く。
だが、広く。
子供がこちらを見る。
一瞬。
「……変」
呟く。
すぐに走り去る。
「……来てるな」
ギルドだけではない。
外にも出ている。
「……広がる」
止めていない。
抑えていない。
だから――
「……当然だ」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
観測者はまだいる。
「……見てるな」
そして――
「……待ってる」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
「――崩れる」




