第2話「役割」
ギルドの扉を開けて中に入った瞬間、昨日までと同じ光景であるはずなのに、自分に向けられる視線の種類が微妙に変化していることに気づき、それが単なる認識ではなく“期待”として定着し始めていると理解する。
警戒ではない。
違和感でもない。
「……寄ってるな」
「お、来たな」
声がかかる。
いつもの男。
だが、距離がさらに近い。
「……ああ」
「ちょうどいいとこだ」
手招きされる。
呼ばれる。
「……何だ」
テーブルへ向かう。
複数人。
話し合い。
「どれ受けるか迷っててな」
依頼書が広げられている。
「……多いな」
数がある。
選択肢がある。
「お前ならどれ選ぶ?」
「……これだな」
一枚を指す。
迷わない。
「理由は?」
「……時間だ」
短く答える。
深く説明しない。
「……なるほどな」
納得する。
すぐに。
「じゃあこれで」
決まる。
流れが早い。
「……固定されてるな」
自分の判断が基準になる。
それが自然に通る。
カウンターへ。
処理。
「最近あいつ頼りだな」
誰かが言う。
小さく。
「間違いねえ」
別の声。
「……依存してるな」
外へ出る。
依頼へ。
森。
いつもの流れ。
「今回も頼むわ」
男が言う。
「……どうだろうな」
軽く返す。
だが、期待は消えない。
戦闘が始まる。
敵が出る。
中型。
「……少し多いな」
男たちが動く。
だが、判断が遅い。
「右、崩れる」
声を出す。
短く。
即座に動く。
迷いがない。
「左も来る」
反応が速い。
完全に合わせている。
「……回るな」
戦闘が終わる。
時間が短い。
「やっぱお前いないと無理だわ」
男が笑う。
「……そうか?」
「判断が違うんだよな」
「……慣れだ」
嘘ではない。
だが、足りない。
戻る。
町へ。
ギルド。
報告。
「お疲れ」
受付が言う。
自然に。
報酬。
受け取る。
席に戻る。
「次も一緒にやろうぜ」
「もう固定でいいだろ」
会話が進む。
決定する。
「……固まったな」
個体ではない。
役割。
「……ポジションだ」
自分がいることで成立する。
いないと崩れる。
「……支点か」
男の視点。
気づけばこの存在を中心に動くことが当たり前になっており、それを疑う理由もなく、むしろ“いる前提”で物事を考えていることに違和感を持たなくなっている。
「……深いな」
外に出る。
通り。
同じ。
だが、違う。
「……決まったな」
昼は人間。
ギルドの一員。
役割を持つ存在。
夜は捕食者。
裏で喰う。
「……両方だ」
視線を上げる。
町。
構造。
「――回す側だ」




