第23話「命名」
通りの中を歩きながら、システムが断続的に提示してくる不完全な定義と、それに対する違和を整理していると、“何者であるか”を外側に委ねている限り、自分という存在は常に未完成のまま扱われ続けるという結論に至る。
定義されない。
登録されない。
分類されない。
「……当然だな」
足を止める。
人の流れの中。
だが、意識は完全に内側へ。
「……足りてないのは」
外ではない。
世界でもない。
「……俺だな」
名前がない。
定義がない。
枠がない。
だから――
「……決めるか」
【システム】
――再定義要求
「……遅い」
視線を落とす。
手を見る。
人間の形。
だが、中身は違う。
捕食した。
侵食した。
再構築した。
「……混ざってるな」
魔物。
人間。
記憶。
思考。
すべてが。
「……なら」
そのすべてをまとめる。
一つにする。
「……これだな」
言葉を選ぶ。
短く。
だが、ズレないもの。
侵食。
知性。
境界。
外側。
すべてを含む。
「……バグ」
静かに。
確定する。
「……それでいい」
【システム】
――名称登録試行:バグ
「……やってみろ」
【エラー】
――登録失敗
――対象未定義
「……だろうな」
だが、問題はない。
「……関係ない」
システムが認める必要はない。
「……俺が決めた」
それで成立する。
空気が変わる。
一瞬。
周囲の人間の動きがわずかに揺れる。
だが、すぐ戻る。
「……影響したな」
定義が通った。
内側で。
「……これでいい」
歩き出す。
止まらない。
迷わない。
ギルドへ向かう。
扉を開ける。
中へ。
「おう、来たか」
男が言う。
「名前、何だっけ?」
軽く聞いてくる。
「……バグだ」
答える。
迷わない。
「……変な名前だな」
笑う。
軽い。
「……そうか?」
返す。
「まあいいや」
流される。
問題ない。
「……通るな」
名前が定着する。
自然に。
「……これでいい」
内側で確認する。
“バグ”
それが自分だ。
分類されない存在。
枠に入らない存在。
「……外だ」
男の視点。
その名前を聞いた瞬間、意味は分からないはずなのに妙に納得してしまい、それが違和感として引っかかることなく“そういうものだ”と自然に受け入れている自分に気づかない。
「……定着したな」
外に出る。
通り。
同じ。
だが、違う。
「……完成したな」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
「――バグだ」




