第22話「異常存在」
通りの中を歩きながら、さっき越えた“境界”の感触を内側でなぞるように思考を巡らせていると、自分がどちらの側にも完全には属していない状態であることが、これまで以上に明確な形で理解され始める。
人間ではない。
魔物でもない。
「……分類外だな」
だが――
それは“未定義”ではない。
「……違うな」
足を止める。
人の流れ。
その中で。
「……定義され始めてる」
【システム】
――再評価開始
「……来たか」
空気がわずかに歪む。
だが、前とは違う。
乱れではない。
“固定”だ。
【システム】
――存在属性解析
――適合不可
ノイズ。
だが、止まらない。
【システム】
――新規分類生成
「……生成か」
笑う。
わずかに。
「……面白い」
【エラー】
――基準不足
――比較対象なし
「……だろうな」
人間が横を通る。
肩が触れる。
気づかない。
「……軽いな」
【システム】
――仮定義:侵食型存在
「……近いな」
【エラー】
――不完全
――再定義
ノイズが強くなる。
文字が崩れる。
「……足りないか」
歩き出す。
ギルドへ向かう。
扉を開ける。
中へ。
空気が変わる。
だが、今は違う。
崩れない。
安定している。
「来たか」
誰かが言う。
自然に。
「……ああ」
返す。
会話が繋がる。
判断が揃う。
流れが整う。
「……支点だな」
だが、その裏で。
【システム】
――仮定義更新
――“侵食知性体”
「……それか」
笑う。
わずかに。
「……いいな」
男が話しかけてくる。
いつもの流れ。
「どれ受ける?」
「……それでいい」
指す。
「分かった」
即座に動く。
「……従うな」
だが、それだけではない。
【システム】
――再定義
――“異常存在”
空間が揺れる。
一瞬。
「……来たな」
【システム】
――登録試行
「……無理だな」
【エラー】
――登録失敗
――枠外
「……そうだな」
自分は“枠”に入らない。
入れない。
「……外だ」
男の視点。
目の前の存在に対して、言葉にできない圧のようなものを感じ始め、それが強さとも違う、何か別の“存在そのものの違い”として認識されつつあるが、理解には至らない。
「……感じてるな」
無意識に。
だが、確実に。
「……いい」
歩く。
止まらない。
迷わない。
外に出る。
通り。
同じ。
だが、違う。
「……変わったな」
世界の見え方が。
ではない。
「……変えたな」
視線を上げる。
空間。
向こう側。
「――定義される側じゃない」




