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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第3章「擬態」

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第12話「崩れ」

 朝の通りに出た瞬間、いつもと同じ時間、同じ人の流れであるはずなのに、動きと音がわずかに噛み合っておらず、歩幅や会話のリズムが互いに干渉し合って“正常な流れ”を維持できていないことに気づく。


 人はいる。


 数も変わらない。


 だが――


 「……遅れてるな」


 全体が、わずかに。


 パンを売る店。


 客が並ぶ。


 だが、順番が噛み合っていない。


 「次の人――」


 店主が言う。


 だが、誰も前に出ない。


 数秒。


 沈黙。


 「あ……」


 客が気づく。


 遅れて動く。


 「……ズレてる」


 判断が、遅れている。


 歩く。


 通りを抜ける。


 人とすれ違う。


 男がこちらを見る。


 目が合う。


 「……」


 言葉が出ない。


 何かを言おうとしている。


 だが、繋がらない。


 そのまま通り過ぎる。


 振り返らない。


 「……崩れてるな」


 完全ではない。


 だが、戻らない。


 ギルドに入る。


 扉を開ける。


 音が遅れる。


 会話が途切れる。


 「……昨日の――」


 誰かが話し始める。


 止まる。


 「……何だっけ」


 続かない。


 「……またか」


 別の声。


 苛立ちが混ざる。


 「……おかしいぞ」


 言葉になる。


 違和感が。


 「……病気か?」


 誰かが言う。


 原因を探す。


 「……違う」


 否定する声。


 だが、理由は出ない。


 「……分からねえ」


 結論は出ない。


 「……崩壊前だな」


 内側で判断する。


 構造が維持できていない。


 歩く。


 テーブルの横。


 男が椅子を引く。


 座る。


 だが、動きが遅れる。


 「……っ」


 一瞬止まる。


 何かを思い出そうとする。


 「……何でもねえ」


 誤魔化す。


 「……深いな」


 カウンターへ向かう。


 受付が顔を上げる。


 「今日は……」


 言葉が止まる。


 数秒。


 沈黙。


 「……何でもいい」


 自分で繋げる。


 流れを補正する。


 「……助かる」


 受付が言う。


 小さく。


 安堵が混ざる。


 「……依存してるな」


 気づく。


 自分に。


 「……支点か」


 振り返る。


 全体を見る。


 人。


 会話。


 流れ。


 崩れている。


 だが――


 「……回ってる」


 完全には止まらない。


 理由は一つ。


 「……俺か」


 外に出る。


 空気が変わる。


 通りも同じ。


 ズレている。


 だが、止まらない。


 子供が転ぶ。


 立ち上がる。


 少し遅れる。


 母親が気づく。


 抱き上げる。


 だが、動きがぎこちない。


 「……限界が近いな」


 空を見上げる。


 意味はない。


 「……壊れる」


 確実に。


 視線を戻す。


 町。


 人。


 構造。


 「――もう戻らない」

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