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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第3章「擬態」

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第11話「侵食」

 通りを歩きながら周囲の人間の反応を拾っていると、これまでの“観察して理解する”という段階を越えて、相手の判断そのものにわずかなズレが生じていることに気づき、それが偶然ではなく自分の存在と連動している可能性を認識する。


 視線が合う。


 相手が一瞬止まる。


 次の行動が遅れる。


 「……ズレるな」


 微細。


 だが、確実だ。


 男が歩いてくる。


 正面。


 距離が詰まる。


 通常なら避ける位置。


 だが――


 「……」


 止まる。


 判断が遅れる。


 ぶつかる直前でようやく動く。


 「……すまん」


 男が言う。


 少し遅れて。


 「……問題ない」


 返す。


 短く。


 「……今の」


 内側で確認する。


 避けられた。


 だが、遅れた。


 「……影響してるな」


 歩く。


 次の対象。


 別の個体。


 女が歩く。


 手に荷物。


 視線は前。


 集中している。


 すれ違う。


 一瞬だけ視線を合わせる。


 意図的に。


 女の目が揺れる。


 足が止まる。


 ほんの一瞬。


 「……あれ?」


 呟く。


 理由はない。


 だが、止まる。


 すぐに動き出す。


 何もなかったように。


 「……来てるな」


 確信する。


 これは“観察”ではない。


 「……侵食か」


 ギルドに入る。


 扉。


 空気。


 音。


 違う。


 明確に。


 会話が遅れる。


 言葉が詰まる。


 流れが途切れる。


 「……さっきの話だが」


 誰かが言う。


 だが、続かない。


 「……何の話だ?」


 別の声。


 「……あれだよ」


 曖昧。


 だが、誰も補完できない。


 「……繋がらないな」


 歩く。


 テーブルの横を通る。


 一人がこちらを見る。


 目が合う。


 一瞬。


 「……えっと」


 言葉が止まる。


 続かない。


 「……どうした」


 別の男が聞く。


 「……いや」


 首を振る。


 「何でもない」


 だが、違う。


 何でもなくない。


 「……侵入してるな」


 思考に。


 判断に。


 カウンターへ向かう。


 受付が顔を上げる。


 「今日は――」


 言葉が止まる。


 続かない。


 数秒。


 沈黙。


 「……何でもいい」


 強引に繋げる。


 流れを戻す。


 「……そう」


 受付が頷く。


 だが、視線が揺れている。


 「……深いな」


 振り返る。


 全体を見る。


 人。


 会話。


 動き。


 すべてに“微細な遅れ”がある。


 男の視点。


 頭の中で考えているはずの言葉が一瞬遅れて出てくるような感覚に違和感を覚え、周囲も同じように反応が遅れていることに気づくが、それが何によるものか分からず不安だけが残る。


 「……広がってる」


 個体ではない。


 空間。


 範囲。


 「……面白いな」


 これはもう、ただの擬態ではない。


 「……触れてる」


 内側に。


 直接。


 外に出る。


 空気が変わる。


 だが、同じだ。


 ズレは残る。


 通りの人間。


 動きがわずかに遅れる。


 判断が揺れる。


 「……止められないな」


 空を見上げる。


 意味はない。


 ただの動作。


 「……広がる」


 制御していない。


 だが、止まらない。


 視線を戻す。


 町。


 人。


 構造。


 「――侵してる」

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