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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第3章「擬態」

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第9話「空白」

 ギルドの中に戻った瞬間、数は減っていないはずの人の気配の中に、説明のつかない“欠けた感覚”が混ざっていることに気づき、物理的な不足ではなく認識のズレとしてその違和が広がっていると理解する。


 席は埋まっている。


 声もある。


 流れも変わらない。


 だが――


 「……一つ、足りないな」


 カウンターの前を通りながら視線を流す。


 いつもと同じ配置。


 同じ顔。


 同じ動き。


 「……だが」


 確実に“何か”が抜けている。


 「なあ」


 後ろから声。


 振り返る。


 さっきの男ではない。


 別の個体。


 「昨日、一緒にいたやつ見てないか?」


 問い。


 曖昧。


 だが、引っかかりがある。


 「……知らん」


 短く返す。


 自然に。


 「……そうか」


 納得はしていない。


 だが、深くも追わない。


 会話が流れる。


 別の話題へ。


 だが――


 「……残るな」


 完全には消えない。


 テーブルの一角。


 空席。


 誰も座っていない。


 だが、それが“空いている”のではなく、“本来あった場所が欠けている”ように見える。


 「……そこか」


 記憶が曖昧になっている。


 誰が座っていたのか。


 はっきりしない。


 だが、“いた”ことだけは残っている。


 「……面白いな」


 消したはずだ。


 情報も、存在も。


 だが、完全には消えていない。


 「……空白か」


 埋められていない。


 残っている。


 形だけ。


 男の視点。


 昨日までいたはずの人物の顔や名前は思い出せないが、確実に“誰かがいた”という感覚だけが残り、それが妙な不快感として胸の奥に引っかかっている。


 理由は分からない。


 だが、消えない。


 「……どこ行ったんだ?」


 別の声。


 同じ問い。


 繰り返される。


 「知らねえよ」


 軽く返される。


 流される。


 だが――


 完全には消えない。


 「……広がるな」


 内側で整理する。


 消した。


 だが、痕跡が残る。


 「……不完全か」


 処理が甘い。


 完全に“無かったこと”にはできていない。


 「……なら」


 次は修正が必要だ。


 カウンターへ向かう。


 依頼を出す。


 処理は同じ。


 問題はない。


 「最近、変なの多くねえか?」


 誰かが言う。


 軽い調子。


 だが、内容は違う。


 「何がだ?」


 「分からんけどよ」


 曖昧。


 だが、共通している。


 「……歪みだな」


 言葉にはならない。


 だが、感覚として共有されている。


 「……まだ浅い」


 確信にはならない。


 だが、広がる。


 外に出る。


 空気が変わる。


 人の流れ。


 歩く。


 止まらない。


 迷わない。


 「……消しても残るか」


 完全ではない。


 だが――


 「……使えるな」


 空白。


 違和感。


 説明できない感覚。


 「……揺れる」


 人間は、それに弱い。


 視線を上げる。


 町。


 人。


 構造。


 「――崩せる」

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