表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第1章「異常個体」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/73

第4話「初戦」

 匂いが、濃くなる。


 さっきまでの牙獣鼠とは違う。


 血の匂いが強い。


 腐臭も混ざっている。


 だがそれだけじゃない。


 もっと重い。


 濃い。


 ――強い個体の匂い。


 直感で分かる。


 これは、今までの相手とは違う。


 それでも、身体は止まらなかった。


 むしろ、わずかに前へと進む。


 ……試す。


 そんな考えが自然に浮かんでいた。


 強くなっている。


 さっきまでとは違う。


 なら、どこまで通用するか。


 確かめたい。


 その思考が、完全に“狩る側”のものだと気づく。


 だが、もう止める気はなかった。


 洞窟の奥へと進む。


 やがて、空間が開ける。


 天井が高い。


 水滴が落ちる音。


 中央に、何かがいた。


 四足。


 灰色の毛皮。


 だが、ただの獣ではない。


 体表の一部が崩れ、黒い肉が露出している。呼吸に合わせて、それが不規則に脈打っていた。


 目は二つ。


 どちらも濁っている。


 だが、確実にこちらを捉えている。


 ――腐食狼。


 そんな言葉が、自然に浮かんだ。


 理由は分からない。


 だが、分かる。


 強い。


 牙獣鼠とは比べものにならない。


 ランクで言えば、おそらく――一つ上。


 ……逃げるか?


 一瞬、思考が揺れる。


 だが。


 すぐに消える。


 試す。


 その結論は、変わらなかった。


 腐食狼が、ゆっくりと立ち上がる。


 低く唸る。


 威嚇。


 縄張り意識。


 そして――


 獲物を見つけた時の反応。


 俺は、すでに“敵”として認識されている。


 いい。


 なら。


 来い。


 その瞬間、腐食狼が地面を蹴った。


 速い。


 牙獣鼠とは比較にならない。


 一直線に、こちらへ。


 避ける。


 ……いや、間に合わない。


 判断と同時に、身体を広げる。


 正面から受ける。


 ぶつかる。


 衝撃。


 重い。


 圧倒的に。


 身体が押し潰される。


 粘液が弾ける。


 内部に牙が食い込む。


 ――強い。


 その事実が、はっきりと理解できた。


 だが。


 それでも。


 離さない。


 包む。


 絡める。


 締める。


 だが、浅い。


 完全に覆いきれない。


 腐食狼が暴れる。


 爪が振るわれる。


 身体が裂ける。


 感覚が飛びかける。


 ――まずい。


 このままじゃ、押し切られる。


 思考が高速で回る。


 どうする。


 どうすればいい。


 その瞬間、何かが繋がる。


 ……速さ。


 俺の強みは。


 “広がれる”こと。


 なら。


 全体で包む必要はない。


 分ける。


 裂く。


 身体を、意図的に分離する。


 思考と同時に、身体が反応した。


 粘液が二方向に裂ける。


 一部を犠牲にする。


 腐食狼の牙に、あえて噛ませる。


 その間に、背後へ回り込む。


 ……いける。


 残った身体で、後ろ脚に絡みつく。


 引く。


 バランスが崩れる。


 倒れる。


 その瞬間、全体を覆う。


 今度は、深く。


 完全に。


 逃がさない。


 締める。


 押し潰す。


 酸分泌。


 内側から溶かす。


 腐食狼が暴れる。


 だが、さっきとは違う。


 確実に、削れている。


 骨が軋む。


 肉が崩れる。


 抵抗が弱くなる。


 ――勝てる。


 その確信と同時に、さらに圧をかける。


 やがて。


 動きが止まった。


 完全に。


────────────────────────

【システム】


腐食狼(E)を捕食しました

経験値を獲得


────────────────────────


 ……勝った。


 理解する。


 今のは、ただの捕食じゃない。


 戦闘だった。


 考えて。


 判断して。


 勝った。


 その事実が、強く残る。


 内側が満たされる。


 だが、さっきまでとは違う。


 もっと重い。


 濃い。


 力が流れ込んでくる感覚。


────────────────────────

【システム】


レベルアップ


Lv4 → Lv6


HP   :22 → 30

攻撃  :5 → 7

敏捷  :4 → 5


────────────────────────


 ……一気に上がった。


 理解する。


 格上を食った。


 その分、成長も大きい。


 そして――


────────────────────────

【システム】


逸脱吸収が発動


────────────────────────


 来る。


 まただ。


────────────────────────

【システム】


スキルを取得しました


・耐久強化 Lv1


────────────────────────


 ……やはり。


 普通ではない。


 だが、それだけじゃなかった。


 視界が、わずかに歪む。


 ノイズ。


 そして。


────────────────────────

【エラー】


過剰成長を検出


処理負荷増大


────────────────────────


 ……過剰?


────────────────────────

【エラー】


制御不能領域に接近


────────────────────────


 意味は分からない。


 だが。


 良くないものだと、直感する。


 それでも。


 止まらない。


 身体は、確実に強くなっている。


 さっきまでの自分とは違う。


 牙獣鼠では相手にならない。


 腐食狼ですら、勝てた。


 ……なら。


 次は。


 もっと上だ。


 その考えが、自然に浮かぶ。


 そして。


 それを危険だと思う感覚が、ほとんど消えていることに気づく。


 ……まあいい。


 どうでもいい。


 強くなれるなら。


 それでいい。


 洞窟の奥へと視線を向ける。


 さらに濃い匂い。


 さらに強い気配。


 ――まだいる。


 そして、思う。


 もっと食えば。


 どこまで行ける?


 その問いに、答えはない。


 だが。


 確かめる価値はある。


 どす黒い身体が、ゆっくりと前へ進む。


 もう、戻る理由はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ