第3話「同行」
ギルドの外で合流した瞬間、昨日までとは明確に違う距離感が生まれていることを理解し、単なる同席では誤魔化せていた細部が、この距離では露出する可能性が高まっていると認識する。
「おう、来たか」
声をかけてくる。
昨日と同じ男。
だが、関係は一段進んでいる。
「……ああ」
短く返す。
自然に。
「今日は軽めでいいよな?」
確認。
提案。
主導権を握ろうとしているわけではない。
ただの流れだ。
「……問題ない」
肯定する。
違和感は出ない。
歩き出す。
並ぶ。
距離が近い。
視界に入る。
呼吸が聞こえる。
「……近いな」
この距離では、動きのズレが隠しきれない。
「なあ」
横から声。
軽い。
だが、試すような響きが混ざる。
「昨日のやつ、どうやった?」
話題を振る。
戦闘。
最もズレが出やすい領域。
「……普通だ」
短く返す。
詳細は出さない。
「普通であれはねえだろ」
笑う。
だが、視線は外れない。
「……運が良かっただけだ」
理由を置く。
同じ返し。
繰り返す。
「またそれか」
軽く流される。
だが、納得はされていない。
森に入る。
空気が変わる。
音が減る。
人の流れが消える。
「……ここからだな」
誤魔化しが効きにくい。
気配。
前方。
複数。
「……いるな」
男たちも気づく。
速度は遅い。
だが、問題ない。
「俺が前行く」
男が言う。
自然な役割分担。
「……ああ」
任せる。
ここで出す必要はない。
戦闘が始まる。
男が踏み込む。
剣を振る。
当たる。
だが、浅い。
「……遅いな」
内側で判断する。
動きが甘い。
隙がある。
敵が反応する。
反撃。
男が避ける。
ギリギリ。
「……危ないな」
計算できる。
次の動き。
結果。
「――」
一歩。
踏み出す。
距離を詰める。
最短で。
だが――
「……崩すな」
止める。
速さを落とす。
人間の範囲に合わせる。
剣を振る。
当てる。
確実に。
だが、余裕は見せない。
「……っ」
わずかに遅らせる。
呼吸を乱す。
「……これでいい」
敵が倒れる。
時間はかかった。
だが、自然だ。
「お前、やっぱ上手いな」
男が言う。
評価。
疑いは混ざっていない。
今は。
「……そうか?」
軽く返す。
深くは触れない。
戦闘が続く。
今度は別の敵。
男が踏み込む。
だが、位置が悪い。
「……崩れるな」
見える。
結果が。
「下がれ」
声を出す。
短く。
自然に。
男が反応する。
少し遅い。
だが、間に合う。
敵が突っ込む。
その瞬間。
動く。
速さは抑える。
だが、正確に。
斬る。
終わる。
「……助かった」
男が息を吐く。
視線が変わる。
信頼。
混ざる。
「……たまたまだ」
返す。
崩す。
評価を上げすぎない。
戦闘が終わる。
静かになる。
「……問題ないな」
違和感は出ていない。
少なくとも、今は。
男の視点。
目の前の存在は、さっきの動きも含めて“上手い”で説明できる範囲に収まっているが、どこか一つだけ説明のつかない精度があり、それが引っかかりとして残るが、確信には至らない。
「戻るか」
男が言う。
提案。
自然な流れ。
「……ああ」
応じる。
森を抜ける。
町へ戻る。
人の流れ。
音。
匂い。
すべてが戻る。
「……戻ったな」
「また頼むわ」
男が言う。
軽く。
だが、関係は続く。
「……ああ」
返す。
問題ない。
一人になる。
人の流れの中で。
「……近いな」
距離。
関係。
リスク。
「……だが」
問題はない。
制御できる。
歩く。
止まらない。
迷わない。
「――まだ通る」




