表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第2章「侵食知性」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/70

第4話「違和感」

 森を進む足音が三つに増えたことで、空気の密度がわずかに変わり、それぞれの呼吸や歩幅の違いが重なり合う中で、自分の動きだけが“少しだけ整いすぎている”ことに気づく。


 合わせる。


 崩す。


 完全に揃えるのではなく、あえて微妙なズレを残すことで、自然な不均一さを再現し、違和感を“感じさせない方向”へと調整する。


 「……で、その村ってどの辺なんだ?」


 横を歩く男が、何気ない調子で聞いてくるが、その視線が一瞬だけこちらの足元をなぞる。


 観察されている。


 「……ああ、山を一つ越えた先だ」


 曖昧に返す。


 具体性は避ける。


 だが、不自然にはしない。


 「山って……どの山だよ」


 食い下がる。


 さっきよりも、わずかに距離が近い。


 「……名前までは覚えてないな」


 即答する。


 間を作らない。


 だが、その“速さ”が逆に浮く。


 「……さっきもそんな感じだったよな」


 空気が、わずかに変わる。


 完全な警戒ではない。


 だが、“引っかかり”が生まれている。


 男の視点。


 目の前を歩くこいつは、見た目は普通だが、どこか噛み合っていない感覚がある。


 歩き方が整いすぎている。


 無駄がない。


 だが、人間はこんなに綺麗に動かない。


 「……なあ」


 声をかける。


 反応が早い。


 早すぎる。


 考える前に答えているような違和感。


 「お前、本当にその村のやつか?」


 視線が集まる。


 二人分。


 逃げる距離ではない。


 だが、詰められているわけでもない。


 まだ、“疑い”の段階だ。


 「……ああ」


 短く返す。


 ここで長く話すのは危険だ。


 情報のズレが出る。


 「……本当か?」


 もう一人が口を挟む。


 声が少し低い。


 警戒が混ざっている。


 「……疑う理由があるか?」


 問い返す。


 攻める。


 守るだけでは、押される。


 「いや……」


 言葉が止まる。


 だが、完全には引かない。


 「……なんか、変なんだよな」


 核心には触れない。


 だが、近い。


 変。


 その言葉が、妙に正確に感じられる。


 完全に見抜かれているわけではない。


 だが、“正常ではない”という感覚は掴まれている。


 「……なるほど」


 問題は、見た目ではない。


 動きでもない。


 “全体の噛み合い”だ。


 「……なら」


 少し、崩す。


 意図的に。


 歩幅を乱す。


 視線を泳がせる。


 呼吸のリズムを崩す。


 「……っ」


 軽く足を止める。


 額に手を当てる。


 「……どうした?」


 反応が来る。


 速い。


 さっきよりも自然だ。


 「……いや、ちょっとな」


 言葉を濁す。


 完全には説明しない。


 だが、理由は示す。


 「頭、まだ少し変なんだ」


 視線を下げる。


 思考が鈍っているように見せる。


 「……ああ」


 男の表情が緩む。


 完全ではない。


 だが、納得に近い。


 「さっき言ってたやつか」


 「……たぶんな」


 曖昧に返す。


 断定しない。


 “自分でも分かっていない”形を作る。


 空気が、戻る。


 完全ではないが、“危険”からは外れた。


 「……そういうことか」


 内側で整理する。


 整いすぎると不自然になる。


 正確すぎると疑われる。


 「……人間は、雑だな」


 だが、それが基準だ。


 「……なら、合わせるだけだ」


 歩き出す。


 今度は、少し崩したまま。


 完璧ではない動きで。


 音も、少しだけ不揃いにする。


 「……これでいい」


 違和感は、完全には消えない。


 だが、“理由が付けば許容される”。


 「……面白いな」


 人間は、論理だけで動いていない。


 矛盾を抱えたまま、進む。


 「……だから、入り込める」


 森の奥。


 その先にある人間の領域を思い浮かべながら、足を進める。


 疑いは残っている。


 だが、それは“排除の理由”にはなっていない。


 「――侵入、継続」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ