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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第2章「侵食知性」

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第3話「初会話」

 森を進むにつれて、足音の響き方が変わっていくのを感じ取りながら、意図的に歩幅と速度を揃え、過剰な静寂にならないよう“わざと雑さを残す”動きへと調整していく。


 葉を踏む音。


 枝が擦れる音。


 それらが不規則に混ざることで、周囲に溶け込む感覚がわずかに生まれ、完全ではないにせよ“違和感を薄める方向”には進んでいると分かる。


 前方。


 気配。


 複数。


 声が聞こえる。


 「……この辺りだったよな?」


 「いや、もっと奥だって言ってたはずだろ」


 足が、ほんのわずかに止まりかける。


 距離はまだある。


 だが、避けるか、接触するかの判断が必要になる位置だ。


 「……試すか」


 引く理由はない。


 むしろ、ここで避け続ければ実地の調整が遅れる。


 足を進める。


 音を消さない。


 だが、大きくもしない。


 自然に。


 そのまま、木の間から姿を見せる。


 ――人影。


 男が二人。


 年齢は中程度。


 装備から見て、戦闘慣れはしていない。


 「……誰だ?」


 視線が向く。


 警戒はある。


 だが、即座に攻撃に移るほどではない。


 「……ああ、助かった」


 口を開く。


 声は問題ない。


 抑揚も再現できている。


 「道に迷ってな、ここらに詳しい奴を探してた」


 言葉を繋ぐ。


 自然に。


 記憶をなぞるように。


 だが――


 「……どこから来た?」


 一人が、少し踏み込む。


 距離が縮まる。


 視線が、細かく動く。


 観察されている。


 「……西の方だ」


 即答する。


 間を作らない。


 迷いを見せない。


 だが、その瞬間。


 ほんのわずかに、相手の目が細くなる。


 「西って……どの辺だよ」


 詰めてくる。


 具体性を求めている。


 「……村だよ、名前は――」


 止まる。


 一瞬。


 頭の中で、該当する記憶を探る。


 だが、その“間”が――


 「……おい」


 空気が変わる。


 さっきまでの警戒とは違う。


 もっと具体的な違和感。


 「今、なんで詰まった?」


 視線が、刺さる。


 逃げ道はある。


 だが――


 「……いや」


 わずかに肩をすくめる。


 呼吸を整える。


 「名前、忘れた」


 言い切る。


 曖昧さを残さない。


 「は?」


 当然の反応。


 だが、続ける。


 止まらない。


 「襲われてな、途中で頭打った」


 額を軽く叩く仕草を入れる。


 記憶の中の動きを再現する。


 「細かいことが飛んでる」


 説明を足す。


 最低限。


 過剰にはしない。


 相手の反応を見る。


 男の視線が揺れる。


 完全に信じたわけではない。


 だが、否定もしきれていない。


 「……マジかよ」


 もう一人が口を開く。


 声色が変わる。


 警戒が、少しだけ緩む。


 「血とか出てねえぞ?」


 「軽いんだろ」


 被せる。


 即座に。


 「痛みもほとんどないしな」


 自然に笑う。


 記憶にある“人間の曖昧な笑い方”をなぞる。


 すると、空気がさらに緩む。


 「……運いいな」


 「普通なら死んでるぞ」


 納得ではない。


 だが、受け入れた。


 矛盾を“雑に処理した”。


 「……そうか」


 小さく頷く。


 内側で、別の思考が動く。


 今の“間”。


 あれは危なかった。


 情報はある。


 だが、“引き出しの速度”が足りていない。


 完全に一致していない。


 「……詰められると、崩れるな」


 近距離。


 具体質問。


 この組み合わせが危険になる。


 「……覚えた」


 次は詰まらない。


 詰まる前に、嘘を作る。


 “空白を見せない”。


 「それで、どこ行くんだ?」


 男が聞いてくる。


 視線はもう柔らかい。


 「……町だ」


 短く答える。


 「なら一緒に来るか?」


 提案。


 自然な流れ。


 断る理由はない。


 「……助かる」


 言葉を返す。


 そのまま、三人で歩き出す。


 距離が近い。


 音が混ざる。


 呼吸が聞こえる。


 人間の中にいる。


 「……なるほど」


 この距離。


 この空気。


 ここで“違和感を出さない”ことが重要になる。


 「……思ってたより、面倒だな」


 だが。


 同時に――


 「……使える」


 人間は、曖昧だ。


 矛盾を受け入れる。


 不完全を許容する。


 「……だから、入り込める」


 視線を前に向ける。


 森の奥。


 その先にある場所。


 「――侵入、継続」

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