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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第2章「侵食知性」

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第5話「適応」

 森を抜けるにつれて足場が安定し、土の踏みしめ方や歩幅の変化が自然に混ざり合う中で、自分の動きが“意識しなくても維持できる形”に近づいていることに気づく。


 合わせている感覚が薄れている。


 調整しているというより、再現した状態がそのまま“基準”になりつつある。


 横を歩く男たちの動きと、自分の動きが重なる瞬間が増え、わざと崩さなくても大きなズレが出ない状態に変化している。


 「……なあ」


 前を歩いていた男が振り返り、さっきよりも気軽な調子で声をかけてくる。


 警戒は残っている。


 だが、距離は確実に縮まっている。


 「町に行くって言ってたけど、何しに行くんだ?」


 質問の内容が変わっている。


 疑いではなく、興味。


 「……仕事だ」


 短く返すが、そこで止めない。


 止めると、また“引っかかり”になる。


 「運び屋みたいなもんだ、荷はもう無いけどな」


 情報を足す。


 だが、過剰にはしない。


 「へえ」


 男が頷く。


 視線が少し柔らかい。


 「一人でか?」


 「……いつもは違う」


 即答しながら、ほんの少しだけ間を入れる。


 考えている“風”を作る。


 「今回は運が悪かった」


 肩をすくめる。


 記憶の中の動きをなぞる。


 「なるほどな」


 納得の色が混ざる。


 完全ではないが、もう疑いは表に出ていない。


 会話が続く。


 断続的に。


 天気。


 道。


 どうでもいい話題。


 だが、その“どうでもよさ”が重要になる。


 「……こういうものか」


 目的のない会話。


 情報交換ですらない。


 だが、距離を縮める機能を持っている。


 「……非効率だな」


 そう感じる。


 だが、同時に理解する。


 この非効率が、“警戒を下げる仕組み”になっている。


 男の視点。


 最初に感じていた違和感は、まだ完全には消えていないが、目の前の男は普通に話すし、受け答えも自然で、少なくとも“危険な存在”には見えなくなっている。


 さっきの引っかかりも、頭を打ったって話で説明がつく。


 完全じゃない。


 だが、人間なんてそんなものだ。


 「……まあ、いいか」


 そう思い始めている自分に気づきながらも、深く考えることはしない。


 視線が戻る。


 観察。


 変化。


 「……緩んでるな」


 警戒が下がっている。


 理由も分かる。


 「……慣れたからか」


 時間。


 会話。


 距離。


 それらが積み重なった結果だ。


 「……単純だな」


 だが、それでいい。


 むしろ都合がいい。


 「もうすぐ見えるぞ」


 男が前を指さす。


 木々の隙間の先。


 開けた空間。


 建物の影。


 人の気配が一気に増える。


 「……町か」


 記憶の中のものと一致する。


 規模は大きくない。


 だが、十分だ。


 人間が集まっている。


 情報がある。


 「……入るか」


 足を進める。


 躊躇はない。


 今の状態なら、問題は起きない。


 少なくとも――


 「……表面上はな」


 完全ではない。


 違和感は残っている。


 だが、それは“理由があれば許される範囲”に収まっている。


 門が近づく。


 人の視線が集まる。


 だが、止められない。


 通される。


 自然に。


 何もなかったかのように。


 「……入ったな」


 内側。


 人間の領域。


 音。


 匂い。


 会話。


 すべてが混ざる。


 「……多いな」


 個体数。


 圧倒的に。


 「……効率がいい」


 思考が浮かぶ。


 自然に。


 抑える必要はない。


 ここは“中”だ。


 男たちが手を振る。


 「じゃあな」


 「気をつけろよ」


 軽い別れ。


 関係はここで終わる。


 「……ああ」


 それだけ返す。


 振り返らない。


 一人になる。


 人の流れの中で。


 混ざる。


 溶ける。


 「……なるほど」


 ここが基準か。


 この密度。


 この曖昧さ。


 この雑さ。


 「……面白い」


 視線を上げる。


 町の奥。


 さらに人が集まる場所。


 「――ここからだ」

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